【幸せになるための資格・番外編】プレゼント

ひな＠復旧中 @newgibbousmoon

【幸せになるための資格番外編】プレゼント 荒北の妊娠が判明した時、そこには他に三人の男達がいた。 夫である東堂とごはんをたかりに来ていた真波と、福富である。 「本当か？本当に子供？」 「……うん。こっちの妊娠検査薬じゃあアテにならないかもと思って今日、病院行ってきたんだ」

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@newgibbousmoon 三ヶ月だって、と荒北は柔らかく笑う。 結婚して約一年、つい先頃のオフで、東堂念願の結婚式をあげたばかりだった。 東堂が独身時代に住んでいたアパートではなく、新しい広めのアパートに越したばかりでもあった。 「……ちょっと待て、おまえ、泣いてんの？」

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@newgibbousmoon 「これが泣かないでいられるのか？荒北、子供だぞ、俺達の！」 「あ、うん」 人は、自分以上に興奮している人間を見ると冷静になるものなのだと、その時、荒北は実感した。 「……荒北、日本に帰るか？実家で産んだほうがいいんじゃないか？」

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@newgibbousmoon 興奮のあまり、呼び方が昔に戻っている。 「靖子」 「あ、そうだな。すまん、つい興奮した」 「見ればわかる。……ありがとな」 「え？」 礼を言われる理由がわからなくて、東堂は首を傾げた。 「そんなに喜んでくれると、あたしも嬉しい」

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@newgibbousmoon 「当然だろう。……ああ、どうしよう、実家のお義父さん達にも連絡しないといけないな」 「向こうはまだ夜中だろ」 「そうだけど、嬉しいニュースは一刻も早く伝えたいじゃないか」 「普通に迷惑だろ、この時間じゃあ」 「……こういう時、時差がもどかしいな」

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@newgibbousmoon 「……あっちが夜が明けてからで充分だよ。それに、ちゃんと生まれるまでは気が抜けないし」 「ああ、そうだな。……大丈夫だ。俺も協力するし……それに、きっと守ってくれてる」 東堂はそっと荒北を抱き寄せ、そのおでこにそっとキスをする。

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@newgibbousmoon そういうキザなことをフランス男にも負けないくらいスマートにやってのけるのが東堂だ。 最初はいちいち真っ赤になって反応していた荒北だが、慣れとはおそろしいもので、最近はそれが当たり前のように受け入れられるようになってしまった。

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@newgibbousmoon 今では公共の面前で抱き寄せられておでこや頬や瞼にキスをされても恥ずかしいと思わないし、普通にキスを返すことすらできる。 そして日本に帰国するたびにはっと我に返って思うのだ。 （慣れって怖い……） こちらではごく普通の光景だが、日本では目に毒だ。

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@newgibbousmoon なんだこのバカップル、と思われること必至だろう。 「ありがとう、荒北。最高のプレゼントだ」 何度も何度も荒北の顔面にキスの雨を降らせながら、東堂が笑う。 たぶん、自分たちはよく似た笑いかたをしているのだと荒北は思う。 （こいつが私に笑顔をくれる）

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@newgibbousmoon 「バァカ。プレゼントもらったのはあたしだろ」 「いや、俺の方だよ」 他愛のないそんなやりとりにさえ頬がほころぶ。 （きっと、こういうのが幸せだ） 心の底から、荒北はそれを実感している。 （今度は、守るから） そっと目立たない腹部に触れた。

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@newgibbousmoon 「ねえ、福富さん、いつになったらあの人たち、オレたちの存在を思い出してくれるんだと思います？」 「……わからん」 「……オレ、すっごくおなかすきました」 「オレもだ」 「……でもまあ、おめでたい日ですから、今日くらいは我慢します」 「そうだな」

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@newgibbousmoon （最初はどうかと思ったが、すっかりいい夫婦になったな） すきっ腹を抱えながら、福富は目の前の幸福そのものの情景に頬を緩ませた。