『「消費税増税は金持ち優遇策」のウソ』のウソ ~資産家と労働者の間の本質的な格差~
- scidreamer
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(2)例によって、池田信夫さんも 「人々が合理的に消費すると仮定すると、死ぬまでに所得をすべて使い切るので、生涯所得に対する消費税の比率は同じです」 (→消費税は逆進的ではない - 池田信夫 agora-web.jp/archives/10357… ) と主張している。
2014-11-24 21:28:59訂正(3)小黒一正さんも 「生涯賃金ベースでみる場合、所得の低い人ほど税の負担率が高くなるという消費税の逆進性は解消されるといえます」 (→【新連載 第1回】消費税アップで暮らしはどう変わる?(1) dilemmaplus.nhk-book.co.jp/talk/6101 ) と言っている。
2014-11-25 09:27:27(4)これらの主張は一見すると正しそうだ。私自身も反論しあぐねていた。消費税増税論者が考えているように、『所得税無し(あるいは定率課税)、資産税無し、消費税と相続税だけ』というのが理想的な税制なのだろうか。
2014-11-24 21:31:06(5)しかし、これらの主張には罠が仕掛けられているのである。しかも、その罠は、資本主義が抱える本質的な問題を覆い隠す、という巧妙なウソによるものだ。
2014-11-24 21:31:34(6)では反論に移る。まず、小黒さんが挙げた例を見てみよう。 「ここに生涯賃金が10億円のAさんと生涯賃金が2億円のBさんがいて、ふたりとも遺産を残さずに寿命を終えるとします。このとき、AさんとBさんの生涯ベースの消費は各々、10億円と2億円となるはずです。(続く
2014-11-24 21:32:17(7)続き)その際、両者が生涯で直面する消費税率が仮に10%とすると、AさんとBさんが負担する生涯ベースの消費税負担は1億円(=10億円×10%)と0.2億円(=2億円×10%)と計算できます。(続く
2014-11-24 21:33:06(8)続き)額面は違いますが、消費税負担額が生涯賃金に占める割合は、どちらも10%で同じですよね。 すなわち、一時点の年収でなく、生涯賃金ベースでみる場合、所得の低い人ほど税の負担率が高くなるという消費税の逆進性は解消されるといえます。」 引用終わり。
2014-11-24 21:34:35(9)なるほど、「たしかに理屈でいえばそうなのかも」と思ってしまう。ちなみにここで「受け取った賃金を死ぬまでに使い切るとは限らない」と反論しても無意味である。その場合は遺産に相続税が課されるからだ。相続税の税率が消費税の税率より高い限り、これは有効な反論にはならない。
2014-11-24 21:35:12(10)では、どこを反論すべきか。それは『現在、自由になるお金を持っていることの優位性』についてである。すなわち、彼らの仮定で捨象されてしまった『時間』の持つ意味を考えることである。
2014-11-24 21:35:47(11)現実の経済では、ある額の資産を持った場合、その資産が以後死ぬまでその額のままであるはずがない。つまり、銀行に預金しておくにせよ、投資するにせよ、その資産は『時間』と共に利子なり運用益なりによって増えていく。
2014-11-24 21:36:20(13)ちなみにこういう例もある。ローンを組んで買うのと一括で買うのとでは利払いの差が生じる。しかし、資産を持たない人にはローンを組んで買うという方法しかないので、一括で買える資産のある人より損をする。
2014-11-24 21:37:17(14)では、具体例を考えよう。以下の小黒さんの記事の例に則ることにする。 「いま、生涯賃金がBさんと同じ2億円のCさんがいるとします。Bさんはサラリーマンで21歳から60歳まで毎年500万円を稼ぎますが、(続く
2014-11-24 21:38:28(15)続き)Cさんはスポーツ選手で21歳から30歳まで毎年1700万円稼ぎ、残り31歳から60歳までは100万円を稼ぐとします。また、議論を簡略化するため、BさんとCさんの年収は61歳以降はゼロし、ともに遺産を残さず70歳で寿命を終えるとすると、(続く
2014-11-24 21:39:16(16)続き)毎年400万円(=2億円÷50年)を消費するのが自然ですね。このとき、消費税率が10%のケースでは、BさんとCさんの毎年の消費税負担は40万円ですが、一時点の年収に占める消費税負担は異なります。(続く
2014-11-24 21:40:02(17)続き)Bさんは21歳から60歳で8%(=40万円÷500万円)ですが、Cさんは21歳から30歳で2.3%(=40万円÷1700万円)、31歳から60歳で40%(=40万円÷100万円)です。(続く
2014-11-24 21:40:50(18)続き)つまり、年収ベースでみると、BさんとCさんの間には、消費税負担について逆進性が存在します。ですが、生涯賃金は同じ2億円で、生涯賃金ベースでみると、消費税の逆進性は消えてしまいます。(続く
2014-11-24 21:41:39(19)続き)というのは、生涯の消費税負担はBさんもCさんも40万円×50年=2000万円で、それが生涯賃金に占める割合は10%(=2000万円÷2億円)で同じためです。これを不公平ということができるでしょうか。つまり、消費税の逆進性は見かけ上のものなのです。」引用終わり。
2014-11-24 21:42:52(20)BさんとCさんの生涯賃金は2億円で同じである。両者の違いは、Bさんは定年を迎えるまで一定した賃金を得るのに対し、Cさんは若い時期に多くを稼ぐことである。つまり、Cさんの方が早く資産を得るという『時間』の優位性がある。
2014-11-24 21:43:21(21)このCさんの『時間』の優位性はどの程度になるだろうか。小黒さんの例を、消費税増税論者の考える理想国家、すなわち『所得税ゼロ、資産税ゼロ、消費税と相続税だけ』に当てはめて計算してみる。
2014-11-24 21:43:51(22)ここでは所得税率はゼロ、資産税率はゼロ、消費税は10%、相続税は50%、資産運用益は年率1%として計算した。(より正確には消費税率10%で消費額は400万円なら、そのうち消費税分は約36万円となるはずだが、ここは小黒さんの例に倣おう。)
2014-11-24 21:44:19(23)小黒さんの例では消費額が同じなので、最終的な遺産を比較することにする。すると、Bさんの遺産は約614万円、Cさんの遺産は約2292万円となる。実に3倍以上の差である。複利の力は恐るべきである。
2014-11-24 21:44:50(24)ここでは計算が簡単な「毎年400万円(=2億円÷50年)を消費する」という小黒さんの仮定を両者に適用したが、両者の遺産の額の方を合わせることもできるだろう。その場合は当然、Cさんの方が消費額が多くなる、つまり贅沢ができる。
2014-11-24 21:45:22