ラバウル少佐日誌:『艦隊コレクション』α編其ノ中

艦これ二次創作小説です。 一部艦娘のキャラ崩壊・独自設定・過去捏造注意です。
0
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

何処とも知れない黄昏の海原、その水面の上に長門は立っていた。 否。そこにいるのは長門だけではない。 沢山の女、そして少女が立っている。 だがその姿を捉えようとしても、ぼんやりと焦点が合わない。 よく見えないのだ。 (2) #ラバウル少佐日誌

2014-11-28 21:10:18
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

ふと、長門は後ろを振り向いた。 自分と全く同じ背丈に身体に顔付きの女が、人形の様な無表情で彼女と同じ様に仁王立ちしていた。 「あなたは……まさか『本当の長門』なのか?」 一糸纏わぬ姿を晒すもう一人の長門の前で、『長門』の艤装と制服を着た長門は狼狽える。 (3)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 21:15:55
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「もしそうだというのなら教えてくれ。私達は何をしたというのだ?何故に奴等は現れ、私達人間を襲」 「私は知っているだけだ」 ぽつり、と呟いて、喚く長門を『長門』は黙らせた。 「私は人ではない。そして私が水底へ共に抱き沈ませた意思も一つではない」 (4)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 21:23:38
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

長門は首を傾げ、彼女の目の内を伺う。 「どういう意味だ?もっと分かりやすく教えてくれ」 「少なくともこの長門に残った意思をあなた達人間の現状に都合良く解釈・大別すれば二種類存在する。一つは単純化した勝利のみへの渇望で、もう一つは平和への祈りだ」 (5) #ラバウル少佐日誌

2014-11-28 21:30:04
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「勝利への欲望が深海棲艦となり、平和への祈りが妖精となり艤装を作った、という事……でいいのか?」 「艤装を作らせたのは人間だ。彼女達へ、平和という目的のための手段を申し出たのは、人間だ」 「すまない。私も艦娘に志願した一自衛隊員なだけで、そんな話は……」 (6)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 21:36:32
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

ぬっ、と『長門』は顔を近付けた。 「そうでなければ、あなたはここへは来られなかった。かつてここへ無理に来ようとして、心を素粒子分解させた娘達は、皆あなた程愚直な愛国心は抱いていなかったのだ。だから分かっていた」 「私は選ばれたという事か」 「英霊達にな」 (7)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 21:40:31
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「それで、私をここへ呼んで、何をするというのだ?」 『長門』は答えない。 唯再び、長門の後ろへ視線を向けた。 「……?そもそも、ここは一体ど」 (8)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 21:43:27
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

------、---、「許さないッ!絶対に許さない!このドクズ!」 気付けば、長門は何処か古めかしい様相の一室に立っていた。 目の前には何人かの駆逐艦娘が膝立ちに啜り泣いている。 それとは別に、部屋の奥の机に座る太った男へ怒鳴り散らしている少女もいる。 (12)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 21:54:58
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「失礼、そこの駆逐艦娘。これは一体……」 振り向いた少女の目を見た長門は、歳不相応な悲鳴を小さく上げた。 それは真っ黒な、深い絶望と虚無の瞳だ。 少女は暫し長門を睨みつける。 ……が、思い出したかの様に振り向き、また奥に座る男へ罵詈雑言を浴びせ始めた。 (13)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 22:01:20
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

長門は少女達へ近付き、彼女達が塞ぐ先を覗き込んだ。 そこには、五体不満足な状態でベッドに安置された、2人の少女の遺体があった。 (14)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 22:03:25
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「長門姉?」 「へあっ!?」 長門は混乱した。 二人の戦死した駆逐艦娘の亡骸を覗き込んでいた筈の彼女は、今まさに彼女の知らない何処かの食堂の末席に座っていた。 そして隣で自身を長門と呼ぶのは自衛隊に残ると言っていた筈の後輩、高瀬宮妓(たかせみやこ)だ。 (15)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 22:18:23
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「なッ、その格好は長門型の艤装……?宮妓……!?」 「……だ、大丈夫?長門姉、どしたのいきなり」 先程から、長門は全く状況が理解出来ない。 混乱で発狂しそうになりながらも、彼女は宮妓の目へ視点を合わせ直した。 「いや……」 考えられる可能性は一つだ。 (16)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 22:22:27
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

艤装の起動実験中に艦娘の長門の艤装から己の精神が本当の『長門』の許へと何故か転移し、そのまま『長門』が自身へ未来の光景を見せている。 そう考えれば納得がいく。 長門に何故その様な力があるのかは分からないが……。 「大丈夫だ。ところで何の話をしていたかな」(17)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 22:28:14
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「あらあら、長門姉最近物忘れ激しくない?」 宮妓は怪訝な表情を見せつつも、長門から視線を外し、窓の外の無情な群青色へと視線を投げ捨てた。 「陸軍の支援に行った、潜水艦娘の部隊が全滅したって話」 (18)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 22:33:36
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

やはり長門の知らない施設の中庭で、目の前をゆっくりと運ばれてゆく4つの棺桶を見送り終わった時、彼女は確信した。 「……瑞鶴、これで、良かったのよね?だってあなたは、加賀さんと赤城さんの事、ずっと邪魔で仕方なかったって……」 (19)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 22:38:19
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

銀髪の女が、黒髪をツインテールに縛った少女に瑞鶴と声を掛けた直後、その少女は突如小走りに一つの棺桶へと走り寄り、 無言でそれを思いきり殴りつけた。 そして何事がぶつぶつと唱えながら、再び銀髪の女の隣へと戻った。 (20)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 22:41:07
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「次は何を見せるのだ」 艤装を着け、何処かの基地を背に、無数の艦娘達と共に海上に立つ長門。 「だが、できるだけ急いでくれ。何時までも向こうで人を待たせる訳には……」 (21)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 22:48:20
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

長門は目を疑った。 軽巡洋艦らしき艤装を着けた隻眼の艦娘が、ちら、と奥に見えたのだ。 そしてその顔には見覚えがあった。 (あの子は……そうだ、確か静岡で最初に深海棲艦の上陸があった時に助けた子じゃないか!何でこんな所に!?) (22)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 22:57:19
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

前にいる数人の艦娘を押し退けて、長門は自身がかつて助け、今は軽巡洋艦娘となっているらしい少女の元へ近付こうとした。 が、様子がおかしい。 (……?) 少女は機械人形の様な不気味な何かと対峙し、何事か泣きながら話をしている。 (23)#ラバウル少佐日誌

2014-11-28 23:01:26
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「父さん、もう、やめよう、こんな事」 少女は顔を上げ、機械人形へ涙ながらに乞う。 「ソレハ許サレナイ。父サンハ海ノ底デシカ、モウ、生キラレナイカラ……ダカラ、かつみ。来ルンダ。ソレ以外ニ、父サン達ガ一緒ニ暮ラセル方法ハ、無インダ」 (24) #ラバウル少佐日誌

2014-11-28 23:02:55
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

機械人形が、左手を少女へ差し伸べる。 「……父さん?」 開いた手の中に何かがある。だが長門のいる場所からは、遠過ぎて具体的には分からない。 と、その時。 「ウ……アガアアアアア!」 突如少女は蹲り、苦悶の叫びを上げる。 その姿が、徐々に変質してゆく。 (25) #ラバウル少佐日誌

2014-11-28 23:07:59