映画を使った語学の教え方

ここでは『戦場のメリークリスマス』と『アマデウス』を使ってみます。
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It happens sometimes @ElementaryGard

soon と immediately はどう違うでしょう。こういう微妙なニュアンスをなぜ日本の学校では教えないんだろう。教科書ではだめ。映画を使うんですよ。最高の教材になるから。

2014-12-07 11:18:41
It happens sometimes @ElementaryGard

『戦場のメリークリスマス』から。インドネシアのジャワ島にある捕虜収容所。英語ができることもあって嫌々所長を務めている坂本龍一大尉がとうとうキレて叫ぶ。"All prisoners will assemble immediately!" pic.twitter.com/ximMVngas3

2014-12-07 11:32:51
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It happens sometimes @ElementaryGard

今集合している捕虜たちは自分の足で歩ける者たちです。所長大尉は怒ります。全員集合と言ったはずだ、と。衰弱して立つことも叶わない者たちも来させろと改めて命令するのです。「お前ら嘘ついてる。お前ら病気ではない。根性腐っとる。腐りきっておる」

2014-12-07 11:35:55
It happens sometimes @ElementaryGard

さあここでなぜ大尉はsoonではなくimmediatelyと叫んだのでしょう。学校英語では「すぐに」と直訳で教えられますよね私たち。違うんですよ実は。

2014-12-07 11:37:03
It happens sometimes @ElementaryGard

龍一大尉は要するに「がたがた言わずに連れてこい!」と言いたいわけです。immediatelyとは「弁明とか釈明とか、そういう余計な作業はとばして最優先で」の意です。「他はすべて中止し、これに最優先でとりかかれ」と。ここでいう「これ」は、寝たきりの連中も連れてくることです。

2014-12-07 11:41:12
It happens sometimes @ElementaryGard

ふらふらの足取りで集合させられる捕虜たち。龍一大尉の"immediately"の具体的イメージです。 pic.twitter.com/FV1ix9wiD7

2014-12-07 11:43:43
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It happens sometimes @ElementaryGard

ではsoonはどうでしょう。今度は『アマデウス』から。親不孝者モーツァルトの前に、謎の男が現れ死者のためのミサ曲を作れと依頼される。 pic.twitter.com/sZZxNaMdQl

2014-12-07 11:49:50
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"You will see me again soon." (近いうちにまた来る) pic.twitter.com/K8w24imWqX

2014-12-07 11:52:17
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この後この謎の男は何度かモーの家を訪れて作曲を急かします。週に一回か月に一回かはわかりません。数日に一回ぐらいかもしれない。モーはやがてこの男を死神の使いと思いだし、ドアがノックされるたびに震えだす。

2014-12-07 11:57:07
It happens sometimes @ElementaryGard

死神の使いがまたやって来る、今度はいつなのかわからないけれど、いずれまたやってくる、追い返しても数日か数週間したらまた現れる…

2014-12-07 11:59:08

あ、soonは「間をおいて繰り返し」ではなく「いつとは特定されないけれどとにかく今からそう先でない時に」のニュアンスです。

It happens sometimes @ElementaryGard

"soon"のニュアンス、これでわかっていただけたでしょうか。これを「すぐに」と学校で習ってしまうと、モーの恐怖がわからないのです。

2014-12-07 11:59:41
It happens sometimes @ElementaryGard

この謎の男、再び現れ、こう告げます。 "The sooner you finish, the greater your reward. Work!"

2014-12-07 12:00:53
It happens sometimes @ElementaryGard

soonの比較級です。「早く仕上げれば報酬もはずむ。急ぐのだ」more immediately ではなく soonerです。前者だと「他のあらゆる作業を中止してただちにミサ曲を仕上げろ」になってしまい不自然です。そもそもmore immediatelyという言い回し自体が不自然。

2014-12-07 12:03:46
It happens sometimes @ElementaryGard

なぜ不自然かというと「他の一切の作業を後に回してこれやれ」というのはもう絶対的な命令ですよね。それをさらに比較級で強調するのはおかしいわけです。

2014-12-07 12:04:51
It happens sometimes @ElementaryGard

それでこの謎の男はsoonerと述べているのです。

2014-12-07 12:05:20
It happens sometimes @ElementaryGard

モーはやつれていく。明日の晩までに仕上げれば追加報酬すると言われ、首をふる。"That's too soon! Tomorrow night.... It's impossible!"(短すぎる。明日の晩なんで無理だ) pic.twitter.com/H81HFWToC1

2014-12-07 12:10:08
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It happens sometimes @ElementaryGard

too soonと述べる。immediatelyが作業の絶対優先度を明示する副詞だとするならば、soonは時間の副詞であることがわかります。「明日の晩までに仕上げろ?いくらなんでも時間が足りないよ」と。

2014-12-07 12:12:26
It happens sometimes @ElementaryGard

映画の前半から。独身時代のモーはザルツブルグの大司教のもとで半ば飼い殺し状態でした。「どうか免職を」「そのつもりはない。私はこれよりザルツブルグに引き上げるからそなたもいっしょに戻るのだ」

2014-12-07 12:18:34
It happens sometimes @ElementaryGard

immediatelyを使っていますね。今この二人はウィーンにいます。音楽の都。モーはここに残りたがっています。自分の音楽を称え、拍手喝采してくれる人々のいる街に。しかし大司教はimmediatelyにザルツブルグに戻るのだと宣告。

2014-12-07 12:20:45
It happens sometimes @ElementaryGard

先ほどの龍一大尉のように荒々しい口調でこそありませんが、威厳たっぷりに命ずる大司教。immediatelyに。 pic.twitter.com/pL3W5Amf50

2014-12-07 12:22:05
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It happens sometimes @ElementaryGard

…とこんな風に映画を使ってことばのニュアンスを授業で教えてあげるのが一番効果的なんです。なぜくどくどこの話をするかというと、自分がそういう授業を受けたかったから。

2014-12-07 12:23:24

坂本龍一つながりで『ラストエンペラー』のお話いきます。助動詞wouldの奥の深さについて。

It happens sometimes @ElementaryGard

映画『ラストエンペラー』から。画像は省略。日本が降伏し満州国も幻に。ロシア軍が迫っているとの情報に、日本陸軍の将校が皇帝に叫ぶ。 "We must hurry. Your Majesty is leaving now!" (急ぎましょう。陛下、早く!)

2014-12-07 16:52:38