2014年12月8日

カナダの歩兵用対戦車火器 BooperとHellerの話

タイトルのとおりです
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えすだぶ @FHSWman

昼間にRPG-7がお話に出ましたが、あれが「弾を装薬で一旦飛ばして、ロケットで加速する」って方式は中学生でもよく知っています。しかして、これとは逆に「ロケットで一旦飛ばして、装薬で加速する」なんて方式を採った歩兵用対戦車火器なんてものも、どうやら存在したようです

2014-11-20 20:08:09
えすだぶ @FHSWman

この妙な武器を作ったのは例によって大戦期のカナダ軍。彼らは英国譲りのPIATを運用していたのですが、これの能力には満足していません。特に射程と精度に対しては大いに不満があったようです。そうして1945年頭頃、彼らは独自の歩兵用対戦車火器の開発に踏み切ります

2014-11-20 20:14:12
えすだぶ @FHSWman

しかしPIATのような歩兵用対戦車火器といえば、当時各国がそれなりに力を入れていた分野です。ここで新参のカナダが容易に満足行くものを独自開発できるとは期待できませんでした。そこで彼らは、英国と米国の対戦車火器の良いとこ取りをもくろみます。PIATとバズーカの複合版というわけです

2014-11-20 20:18:06
えすだぶ @FHSWman

カナダによるPIATとバズーカの複合とは? この武器は、砲尾から装填されるロケットと砲口から装填するスピゴット擲弾の2つに分割された弾薬を用います。発砲時には、まずロケットが点火して弾頭を加速、しかしロケットは発射筒内ですぐ燃焼を終え、直後に擲弾の装薬に点火して加速するというわけ

2014-11-20 20:25:45
えすだぶ @FHSWman

こうしたロケットと装薬の複合により弾頭は165~180m/sにまで加速されると想定。当時の肩撃ち対戦車火器としては相当な高初速で、これによる有効射程は360mと見込まれました。なおロケットは弾頭とは固定されないため、発射後は弾頭から遅れて飛出し、前方30mあたりに落下します

2014-11-20 20:39:50
えすだぶ @FHSWman

しかしこのカナダの歩兵用対戦車火器、なんだか妙に大型でもありました。投射機は口径7cmで長さ135cm、重量は13~15kg。弾頭とロケットはそれぞれ4.5kgと6.8kgで、二つを合せた弾薬全長は167cmというお化け。やたらに重くデカい弾頭は200mmを貫く見込み

2014-11-20 20:50:20
えすだぶ @FHSWman

歩兵の肩から撃つにはちょっと重すぎるんじゃないのって気がしないでもないですが、そもそも元のPIATが15kgくらいあるんですから、そうでもありません。当時英国が開発してた3.45インチ無反動砲は34kgありましたから、それに比べたらカナダの弾薬込み25~27kgはまだ軽い

2014-11-20 20:57:34
えすだぶ @FHSWman

それと弾薬全長がやたらに長い気がしますが、これはスピゴット弾頭をロケットで加速する都合かと思います。スピゴット弾頭の尻のロッドがあまり短いと、ロケットが燃え切る前にすっぽ抜けちゃうでしょうし。ロケット燃焼後に装薬に点火するまでの間は、ロッドがある程度投射機内に残ってないと困る

2014-11-20 21:01:19
えすだぶ @FHSWman

さて、このカナダによるPIATとバズーカの複合のような武器ですが、口径よりも弾頭が大きい外見がパンツァーフアウストに似てたのか、開発者の名前を取って当初は「ミルンのパンツァーフアウスト」と呼ばれます。ただ後に「Booper」と呼び変えられたようで

2014-11-20 22:07:47
えすだぶ @FHSWman

弾頭は開発トロント大学の協力もあり、比較的うまく行ったようで。ドイツとイギリスの成形炸薬を比較検討してコーン形状等が決められ、45年半ばに実施された静爆試験では貫徹力300mmを記録しています。当時の成形炸薬としてはかなりいい数字なんじゃないでしょうか

2014-11-20 22:11:44
えすだぶ @FHSWman

その一方で、ただ装薬とロケットの開発はどうにもうまくなかった。初速は当初165~180m/sが予定されたものの、46年頭の実験では80~90m/s程度に留まった。一応無反動砲の一種と呼べなくもないせいか、発砲時の衝撃も相当で、発射地点から20m以上離れた窓ガラスを割る事故も起きる

2014-11-20 22:22:01
えすだぶ @FHSWman

また、Booperが採った「ロケットで押し出して装薬で加速する」方式は、ロケットの燃焼時間や装薬への点火タイミングがシビアに過ぎるところがあった。もし装薬に点火された時点でロケットがまだ燃焼を続けていた場合、結果は運用する兵士にとって非常に望ましくないことになりかねなかった

2014-11-20 22:24:26
えすだぶ @FHSWman

そして何より、ロケットと装薬をを併用するBooperの弾薬は大掛かりに過ぎた。ロケットと弾頭を足した重量は最終的に14.5kgにもなったが、これは投射機本体と同等。結局、Booperは他の同様な武器に比べて非効率であるとして、カナダ兵器研究開発局は49年にこの計画を放棄してしまう

2014-11-20 22:32:58
えすだぶ @FHSWman

無論カナダは何の代替もなしにBooperの計画を放棄した訳じゃありません。彼らは並行してより効率的な、そして割と普通な対戦車ロケットも開発していたのです。こちらはうまく行って、1956年にはHellerという名前で配備に漕ぎ着けます pic.twitter.com/DjKvNg9Aps

2014-11-20 22:45:51
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えすだぶ @FHSWman

Hellerは「Launcher Rocket, A tk 3.2inch, CDN.」というのが制式な名前なのかな。外観から特徴的なのは測距儀型の照準器で、この恩恵からか有効射程は450ヤード(411m)と、当時としては少し長め pic.twitter.com/ylmHEYPzrQ

2014-11-20 22:51:14
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えすだぶ @FHSWman

Hellerは発射機重量は12.9kgで、Booperよりずっと軽くなってます。3.2インチというから弾頭径は81mmでしょうか。貫徹力11インチ(280mm)の弾頭は重量6kg程で、初速は220m/sなので、米軍の90mmスーパーバズーカと威力同等ながら弾道はより良さそうです

2014-11-20 22:58:23
えすだぶ @FHSWman

スペック羅列で終わっちゃつまらので、Hellerの高初速の秘密でも見てみましょ。先ほど「割と普通」と言いましたが、つまりHellerのロケットは少しだけ普通じゃありません。というのも、ロケットの噴射孔が弾の「側方」に並んでるのです pic.twitter.com/9VTVWY4sRE

2014-11-20 23:02:10
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えすだぶ @FHSWman

Hellerのロケットモーターはこんな。底は塞がってて、後ろに円筒型の安定翼があり、また弾頭部はロケットより太い。ロケットの噴射方向が側方なので点火しても反作用ですぐに弾が動くことはなく、腔圧がある程度上がってから押し出されるのです pic.twitter.com/l9ulfresgl

2014-11-20 23:09:08
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えすだぶ @FHSWman

ロケットの燃焼は砲口を出る前に終わるし、そもそもこの構造では砲口を出た後にロケットが残っていても加速しない。腔圧をある程度高めて押し出すというわけで、Hellerは一応ロケットと呼ばれるものの無反動砲っぽくなくもありません。腔圧に耐える為に発射機が重めなのも、ちょっと無反動砲風味

2014-11-20 23:15:21
えすだぶ @FHSWman

制式化された武器だけあって、Hellerのロケットは結構現存してるらしく。「工廠で残骸を拾って、何だかよくわかんないけど焼夷弾と思って買って、あとで調べたらHellerのロケットだった」とかいう人も。確かに底部には噴射孔がないです pic.twitter.com/ox2j5zoNEd

2014-11-20 23:27:05
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えすだぶ @FHSWman

そんなHellerですが、カナダでは1956年から1967年にかけて配備されていたようで。さらに英軍にももうちょっとで採用される所まで行ったとも

2014-11-20 23:30:18
えすだぶ @FHSWman

そんなわけで、やっぱりカナダの兵器開発は、物の良い悪いは別として、とにかく面白いという訳でした

2014-11-20 23:32:32

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