「ゼロ・トレラント・サンスイ」

「イヤーッ!」....来る!ミニットマンは迎撃のスリケンを構えようとした。.....それで終わりだった。ミニットマンの目の前、息がかかるほどの近さに、ニンジャスレイヤーがいた。ミニットマンの胸の中心やや左寄りに、温かい感触があった。そんな。そんなばかな。
2010-07-24 22:58:03
ーー戦いは一瞬で決着した。ニンジャスレイヤーがミニットマンの胸から右手を引き抜く。手の中でまだ蠢く心臓を無感動に一瞥したのち、彼はそれを握りつぶした。電車がカーブにさしかかる。ミニットマンが叫んだ。「バンザイ!」電車から振り落とされながら、彼の体は爆発四散した。
2010-07-24 23:03:17
やがて、電車はブレーキを軋ませながら徐々に速度を落とす。ヤヌタ駅。物思いにふけっていたニンジャスレイヤーはその数百メートル手前で車輌から飛び降りた。壁面に取り付けられたハシゴを迷いなく見つけだし、それを伝ってマンホールから地上に出ると、そこは自然公園の只中だ。
2010-07-25 00:07:30
ニンジャスレイヤーの頭上には赤い満月が浮かぶ。鎮守の森の奥、彼の歩みの先には、小さな堀で囲まれた庭園がある。ネオサイタマにはおよそ不釣り合いな、神秘と静寂が支配する空間だ。ニンジャスレイヤーはゆっくりと、おごそかに歩を進める......。
2010-07-25 00:13:53
ああ、しかし、見よ!彼の背中を!そこに小さく張り付いた金属のカケラを....!爆発四散したミニットマンのカケラである。ホタルのように弱々しい明滅を繰り返すそれは、いったい何をニンジャスレイヤーにもたらそうと言うのか......?
2010-07-25 00:16:47
それは、偶然であったろうか。それとも、ミニットマンの怨念か、執念か。金属片は微弱な信号を何者かに発信し続ける。そして我々は、信号を受信するその男を、知っている。上空70メートル、VTOLの上に直立し、左耳に手を当てるそのニンジャを......!
2010-07-25 00:20:51
「目標を捕捉した」感情のこもらぬ呟き。それに答えるくぐもった通信。沈黙。再びニンジャは呟く。「いや、必要無い。900秒後に交戦を開始する」無線を切ると、ニンジャはVTOLの機上から、ゆらりと身を躍らせた。
2010-07-25 00:28:06
自然公園めがけて垂直に落下するニンジャ......フジオ・カタクラ、またの名をダークニンジャは、死闘の予感に何を思うか、メンポの奥で、静かに目を細めるのだった。 (「メナス・オブ・ダークニンジャ」へつづく)
2010-07-25 00:35:16