「ジ・アフターマス」 #1

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
見渡す限り、白茶けてヒビ割れた平坦な荒野であった。雷を含んだ重苦しい雲が上空をどこまでも覆い、煤混じりのネバついた雨が降り続けていた。重金属混じりの酸性雨ともまた違う、コールタールのような雨だ。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
上空をときおり通過するのは、なんらかの調査目的と思われる政府の飛行艇である。地上へサーチライトを投げかけながら、高速で飛び去ってゆく。不運なものは雷の直撃を受け、煙を噴き出しながら、地平線に音もなくゆっくりと沈んで行く。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
かけらほどの命すら見えぬ不毛。これすなわち、小規模核爆弾「バンザイ・ニューク」によって引き起こされたマッポー的な光景である。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
かつてヒカリ=サン・シンガク学園都市を形作っていた高層ビルの廃墟や灰色の竹林といったものはバンザイ・ニューの衝撃波によってあらかた舐め尽くされ、無情なサップーケイと成り果てた。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
そのサップーケイ荒野を、機械的な歩調で歩き続ける生命体があった。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
その生命体は……人間である。そして、ニンジャだ。赤黒のニンジャ装束を着たニンジャが歩いているのだ。肩に担いでいるのは、大きな袋……違う。ドラゴンの刺繍をほどこされたニンジャ装束である。生死が不明な老ニンジャを担いでいる。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
いかにも。読者の皆さんのお考えの通りである。彼こそはニンジャスレイヤー、フジキド・ケンジ。生死不明の老人はドラゴンドージョーのマスターセンセイ、ドラゴン・ゲンドーソーである。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ソウカイ・シックスゲイツのニンジャ、ヘルカイトの指示で引き起こされたあの恐るべき爆発を、いかにして生き延びたのか。確かにあの時、二人は高層ビルから足を滑らせ、爆発の中に飲み込まれて行ったはずだ。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
生存の謎への答えはもちろん、ニンジャスレイヤーと瀕死のドラゴン・ゲンドーソーによって咄嗟に行われた驚くべきジツであった。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ドラゴン・ゲンドーソーをかばいながら垂直落下したニンジャスレイヤーは爆発に取り込まれた。しかし彼の非凡なニンジャ耐久力は、数秒間の爆炎を耐えしのいでみせた。落下の勢いでニンジャスレイヤーは垂直に深い竪穴を掘り、その奥底でじっと息を潜めた。ドトン=ジツである。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
その縦穴の中、二人は数十時間にわたり、ぴくりとも動かずに耐えしのいだのである。そのとっさの判断、いまだ未熟なフジキドの自然な発想ではありえない。落下中に行われた数秒のドラゴン・インストラクションの賜物であった。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ニンジャスレイヤーがまっすぐ歩く方角の先には、カゲロウのように、色とりどりの光の粒が揺れている。ネオサイタマ、霞ヶ関の高層ビル群が発する明かりが、かろうじてこの地にまで届いてくるのだ。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「……脱したかフジキド」担がれたドラゴン・ゲンドーソーが口を開いた。「センセイ!」僥倖!ニンジャスレイヤーは色を失った。「ご無事で……!」
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「ムネン、わしの体内には、あの得体のしれぬ毒がいまだ巣食っておる。手足を揺らすもままならぬわい。まこと、ウカツであった」「センセイ……」
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
二者はそれきり言葉を交わさず、数時間歩き続けた。やがて再びドラゴン・ゲンドーソーが口を開いた。「よいかフジキド。ドラゴン・フォレストだ」「ドラゴン・フォレスト?」
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「さよう。ネオサイタマのメガロ工業地区の懐に、いまだ汚されぬ鎮守の森がある。ネコの額ほどの狭い土地だ。そこには我がドラゴン・ニンジャ・クランと兄弟の契りをかわしておったアワビ・ニンジャ・クランの守護神を祀るシュラインが……ゴホッ!ゴホッ!」「おカラダに障ります!」
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「アワビ・ニンジャ・クランの血筋ははるか昔に絶えて久しいが、だからこそ…彼奴らも注意を払う事など……ゴホッ!そこまで……そこまで辿り着けば、残るインストラクションを……オヌシを完全なニンジャに…ゴホッ!ゴホッ!」ドラゴン・ゲンドーソーは再び気を失った。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ニンジャスレイヤーは担いだ老人に気遣わしげな一瞥を送ると、遠い街のネオン陽炎を見やり、目を細めた。「ドラゴン・フォレスト……」
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「妙ダゾ。歩イテクル。アレハ?」「グラウンドゼロの方角からか?」「ソウダ。……イヤ待テ……マサカソンナ…アレハ……」「おれ、俺にも見せてくれガントレット=サン。俺のスコープじゃサッパリだ」「アレハ…?アレハ、アレハ、ニンジャスレイヤー!?」「なあ、俺にもスコープを…何だって!?」
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ヒカリ=サン・シンガク学園都市の跡地を臨む絶壁上。イラクサの茂みからガバリと身を起こしたのは、ブキミ極まりないシルエットだった。ゴミと枯れ草をこねあわせたような、毛むくじゃらのビッグフットのような怪物的な姿が、二名。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
その一人が背中のあたりをいじると、怪物の毛皮めいたものが内側から開き、中から枯れ草色のニンジャ装束を着た男が現れた。「ニンジャスレイヤーと言ったか?スコープを見せろ、早く!」「コラ、オレノ、ギリーニンジャ装束ヲ、カッテニ脱グノジャナイ!」「うるさい!こんなもの、着ていられるか!」
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
枯れ草色のニンジャはいまだ"ギリーニンジャ装束"を着たままのもう一人からスコープをひったくった。それを覗き込み、絶句した。「ブッダ!ありゃ本当にニンジャスレイヤーだ!」
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「トリアエズ、ヘルカイト=サンニIRCデ報告ヲ……」「おお、そうだ…いや待て」枯れ草色のニンジャは、携帯IRCを操作しようとしたギリーニンジャ装束のニンジャを制した。「やめろガントレット=サン。ダメだ」
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