「フィスト・フィルド・ウィズ・リグレット・アンド・オハギ」 #1

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「フィスト・フィルド・ウィズ・リグレット・アンド・オハギ」その1
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
重金属を含有する酸性雨が降りしきる夜の安宿街、明滅する巨大な「タケノコ」というネオン文字に、黄緑に照らされながら歩く男の姿があった。
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くたびれきった防塵トレンチコートはところどころ擦り切れ、目深にかぶった毛糸帽も虫食いだらけだ。男は片足を引きずりながら、おぼつかない足取りで、水溜りをハネ散らかして歩いていく。
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こんな時間帯に浮浪者が一人で出歩くなど、絶対に避けねばならないことである。見よ、男の後方3メートルを。鉄パイプを持った2人の武装ヒョットコが、少しずつ距離を狭めながら、男の後をつけてゆく。
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ヒョットコは、センタ試験と呼ばれる過酷な選抜試験からドロップアウトし、家を追われた十代の浪人生で構成された、巨大なストリート・ギャング・クランである。このトミモト・ストリートも、奇怪なマスクを被る彼等の掌握下にあった。
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彼等にはルールも良心も無い。特に浮浪者狩りは彼らの間で最もホットな競技である。日没から日の出まで、浮浪者達は遠く離れたセンベイ・ステーション周辺で時間をつぶすか、あるいはなけなしのトークンをはたいて、アニメ喫茶に避難するしか無い。この男は誰もが知るそのルールを忘れてしまったのか?
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左のヒョットコが右のヒョットコの肩をつつき、自分の鉄パイプを指差して笑った。ナムサン、先端には電動ドリルがくくりつけられている。右のヒョットコはそれに応え、ポケットから左手を出して見せる。握っているのは拳銃だ。「ヒッヒヒ!」2人はおかしくてたまらぬのか、声を漏らして笑いあった。
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ゆがんだ電信柱の陰まで男が歩みを進めたとき、ヒョットコはいきなり男に拳銃を発砲した。乾いた銃声が空気を震わせ、男は驚いて身をすくめ、しゃがみこんだ。狙いは外れたようだが、そんなのはおかまいなしだ。2人のヒョットコは爆笑しながら、男を取り囲む。
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「ヒャハァー!」電動ドリルのほうが男の背中を蹴りつけた。「アイエー!」男は情けない悲鳴をあげ、ぬかるみに突っ伏した。
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「ドリルやれよ!ドリルをよ!」拳銃のヒョットコが叫んだ。「ガッテン!」片割れが電動ドリルのスイッチを入れる。危険なモーター音が鳴り響き、回転する刃先が男の目玉に突きつけられた。「アイエーエエエエ!」男は激しく抵抗したが、拳銃のヒョットコが後ろから彼を羽交い締めにしてしまった。
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「すっごいぜ!すっごい!」笑ながら、ヒョットコはドリルをオトコの眼球にちかづけていく。ナムアミダブツ!だがこの地獄絵図は、ネオサイタマのストリートにおいてはありふれすぎた「チャメシ・インシデント」なのだ!
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「それぐらいにしておけ、小僧ども」道の反対側の電柱の陰から、別の男がゆらりと姿を現した。「アイエーエエエエ!」浮浪者はより一層の大声をあげた。ヒョットコたちは新手の人影を睨みつけた。
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その男もまた、くたびれきった身なりではあった。だが、ボロボロの防塵トレンチコートの下の肉体は違う。がっしりと盛り上がった肩と太い首が作る四角いシルエットは、男がいま水溜りで震えている浮浪者とは別種の存在であることを告げて余りある。
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「ヒャハァー!一匹増えたあ!」「ダブルスコアだ!」ヒョットコは爆笑しながら鉄パイプを振り上げた。「アイエーエエエエ!」水溜りで浮浪者が叫んだ。二本の鉄パイプが、新参の男に振り下ろされる!
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闇の中で鳴る鈍い音。「タケノコ」のネオンサインがバチバチと光った。屈強な男は肩で鉄パイプを受け、微動だにしない。先端の電動ドリルが虚しく宙を掻いた。「あれえ?おかしいぜ?」「テストに出ないぞ!」ヒョットコたちが顔を見合わせる。
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男の肩を粉砕するはずの鉄パイプは、まるで飴細工のように、男の肩の輪郭に沿って、ぐにゃぐにゃに歪んでいた。闇夜に男の鋭い眼光が光った。
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ぶるる、と男の肩が震えたようだった。「イヤーッ!」ドウン、と、銅鑼を鳴らすような破裂音が轟いた。電動ドリルのヒョットコが、消えた。男は拳をまっすぐに突き出し、直立していた。「え?」もう一人のヒョットコが、路地をキョロキョロと見回した。
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「アイエーエエエエ!」浮浪者が斜め頭上を指差した。「タケノコ」の「ケ」の灯りが消えていた。ヒョットコはそちらへ目を凝らした。「ケ」があった空間には、かわりに、「大」という字が書かれていた。
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字が変わった?いや、そんなはずはない。あれは字ではない!四肢を広げた人間の形に、看板にうがたれた穴である!
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「活力バリキ」ドリンクのオーバードーズで極度の興奮状態にあるヒョットコにも、おぼろげながら事情がのみこめてきた。相棒はこの男の素手のパンチを食らって、斜めに吹っ飛び、あそこにある看板に埋め込まれてオブジェになった。わかりやすい。「ヒ...ヒヒー!」ヒョットコは失禁した。
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「アイエエエエエ!」浮浪者が叫んだ。男はヒョットコの手から拳銃を取り上げ、ルービックキューブをいじるかのようなリラックスした手つきであっという間に分解してしまった。「まだやるか、ヒョットコ=サン」男が凄みをきかせた。ヒ「ヒヒー!」ヒョットコは失禁しながら脱兎の如く逃走した。
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男は浮浪者に肩を貸し、立ち上がらせた。「もう大丈夫だ、お客さん」「あんた、何者だ?」礼すら忘れ、浮浪者は問うた。「ヨージンボーだ、お客さん」男は低く言った。「こんな時間にウロウロして、他所から来たのかね、お客さん?」浮浪者は頷いた。「炊き出しが毎日あるって聞いたから...」
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男はガラガラ声で笑った。「が、はは、はは!そんなうまい話、ネオサイタマのどこにもないよ、お客さん!」「アイエエ....」浮浪者はしょんぼりとうなだれた。
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「さっきのガキども、あれはヒョットコ・クランと言って、殺人嗜好者の集まりだ。炊き出しの噂を流したのも奴らだろう。地元の人間達が奴らの人間狩りを警戒するようになったからな。他所からお人よしの獲物を調達というわけだ」男は歩き出した。「ついて来な、お客さん。寝場所くらいはあるよ」
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2010年12月5日
「フィスト・フィルド・ウィズ・リグレット・アンド・オハギ」 #2http://togetter.com/li/75662
スイドー(旧) @pseudanthium 2011年2月17日
二つで十分ですよ! RT @NJSLYR: 「開けてくれ!はやく!中身を出してくれ畜生!」男は憤怒の形相で浮浪者を睨みつけた。浮浪者は慌ててタッパーの蓋を開いた。中には紫色のまるい塊が六つ、詰まっていた。「一つくれ!一つで十分だ!早く!」「すぐ出すよ!わかってくださいよ!」浮浪者は塊を一つつかむと、男の口に押し込んだ。
まなが @sacrifice_why 2012年3月9日
RT @NJSLYR: ヒョットコは、センタ試験と呼ばれる過酷な選抜試験からドロップアウトし、家を追われた十代の浪人生で構成された、巨大なストリート・ギャング・クランである。このトミモト・ストリートも、奇怪なマスクを被る彼等の掌握下にあった。
satakein:limbotemple @satakein 2012年9月23日
オハギはうまいよね(*´∀`*)
箸呂院マジチキ @kairidei 2013年8月27日
オハギはゆっくり食わないと。
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