#完全ノープラン艦これ与太話 【ロアリング・デッド・スピリット】 #3~#4

ニンジャスレイヤーをリスペクト重点した艦これファンジンSSです。 マイヅルの愉快な仲間達と、あとツ級。 before: http://togetter.com/li/751119 続きを読む
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春魔解丼 @vespiking

衣笠が二足歩行ドラム缶によって護衛された先は、手練のマイコでも足を踏み入れぬ禁足地である。人口排水河川キョート川を隔て、奥ゆかしいマイヅル・シティの景観から完全隔離された工業区画、その最奥部。数多の危険地帯を抜けた先に聳える、鋼の不夜城がホンマル。マイヅル鎮守府。 #KZNPLN

2014-12-12 07:58:46
春魔解丼 @vespiking

道中、オイラン専門ハンターや水雷戦隊マニアックといった危険極まりないサイコ犯罪艦娘の襲撃を、外音から判別できる限りでも最低5度は受けたが、春雨と名乗る巨大ドラム缶娘はそれらの襲撃を悉く弾き返し、ドラム缶プレスや砲雷撃戦によって凄惨なネギトロ死体に変えていった。 #KZNPLN

2014-12-12 08:02:11
春魔解丼 @vespiking

そうして辿り着いた巨大港湾基地の周辺は、暗黒街の陰鬱な重犯罪アトモスフィアが嘘のように、そうした闇の気配が感じられなかった。衣笠はそれなりに場数をこなしたマイコ・デリバリーである。危険な場所は嗅覚でわかる。この周囲が安全なのではない。眼前の基地が、危険過ぎるのだ。 #KZNPLN

2014-12-12 08:09:12
春魔解丼 @vespiking

「さあ、着きましたよ。もう安全です」「アッハイ」武装ドラム缶、春雨はそっと衣笠を地面に下ろし、トコトコと走り出した。傍らには、先程の駆逐艦。桃色の髪を短くまとめ、腰に吊ったカタナの刃と同じ、ハガネ色の瞳が薄く、細く、鋭い視界を形作る。衣笠はしめやかに失禁した。 #KZNPLN

2014-12-12 08:15:23
春魔解丼 @vespiking

「ドーモ。駆逐艦不知火、帰投致しました」『よし、入れ』ギリギリと音を立て、不夜城の大門が開く。ロビーを抜け、暗い道を歩く。廊下脇の休憩所に、厳しいホバー艤装椅子でくつろぐ、白髪長身の深海棲艦あり。「よう、首尾はどうだ不知火=サン」「作戦失敗ね。見失った」「ウェー」 #KZNPLN

2014-12-12 08:21:01
春魔解丼 @vespiking

深海棲艦はガシャリと音を立て、ホバー艤装から飛び下りた。華奢な上半身と、段々状に甲冑じみて折り重なった重サイバネ脚部が対照的に映る。空母水鬼。ヒト型深海棲艦の中でも、特に艦娘の死骸の含有率が高い希少艦種だ。艦娘のそれと殆ど相違ない顔は、だが気だるく無表情だ。 #KZNPLN

2014-12-12 08:27:11
春魔解丼 @vespiking

「ランダマイザ=サン、総指令は」「早霜=サンの索敵室にいるんじゃない?暫くはレディオもやらないみたいだし」「そう。羽黒=サンは?」「さっき戻ってきてたね。あの子カワイイだよね。盗撮した写真あるけど、いる?」「場所は」「トイレと入渠ドック」「良い値が付きそうですね」 #KZNPLN

2014-12-12 08:34:12
春魔解丼 @vespiking

不知火は空母水鬼ランダマイザとのっぴきならぬ違法売買契約についてしばし雑談したのち、再び歩き出した。羽黒。知らぬ名ではない。先の帝都大破壊における武勲艦の1隻、小規模鎮守府に属する帝国軍将校だ。その盗撮写真について談笑する、軍人と深海棲艦。恐ろしい場所に来た物だ。 #KZNPLN

2014-12-12 08:37:27
春魔解丼 @vespiking

衣笠が通されたのは、不気味な小部屋だった。怪しげな表題の洋書ハードカバーが本棚に並び、床にはブードゥーじみた魔方陣。壁に立掛けられた、ノロイ・ボードやオフダの類。窓はいずれも板が打ち付けられ、意図的に光を遮蔽した形跡が見られる。廊下の表札には『索敵室』。 #KZNPLN

2014-12-12 08:43:38
春魔解丼 @vespiking

「ゲート……ゲート……パラゲート……」部屋の中央では、長い髪を作為的な長さで切り揃え、スダレめいて顔面に垂らした陰鬱な駆逐艦が、古のハッカーチャントをぶつぶつと唱え続けている。部屋の隅には、黒髪ショートヘアに黒紫装束の重巡洋艦と、髪を二色に染め分けた駆逐艦。 #KZNPLN

2014-12-12 08:48:45
春魔解丼 @vespiking

「ドーモ、羽黒=サン。あと総指令。不知火、帰投致しました」「アー、ご苦労」二色髪の駆逐艦はポケットに手を突っ込んだまま、シリアスな表情を崩さず片手間に応答した。「早霜=サン、見つかるか」「アア……解析が困難……気配が、ない」「……そう簡単には、いかねェか」 #KZNPLN

2014-12-12 08:52:59
春魔解丼 @vespiking

「……そいつは?」二色髪の駆逐艦はくいと衣笠へ顔を向け、問うた。「被害者です。インタビューします」「拷問室は今使えねェぞ?前のネギトロがまだ残ってる。死体が臭くってよ」「拷問は行わないので、応接室で大丈夫です」「そうか、珍しいな」「アイエエエ……」衣笠は失禁した。 #KZNPLN

2014-12-12 08:58:43
春魔解丼 @vespiking

「アー、自己紹介が遅れたな。アタシの名は長波。マイヅル鎮守府総指令だ。クソみてェな所だが、まあゆっくりしていけ。こっちは増援の羽黒=サンだ」「ド、ドーモ……」二色髪に紹介され、重巡がおずおずとアイサツした。「ドーモ、衣笠です」衣笠は下腹部を拭きながらオジギした。 #KZNPLN

2014-12-12 09:02:33
春魔解丼 @vespiking

索敵室を後にした衣笠は、比較的小奇麗な応接室に通された。「……さて、件の軽巡について、インタビューします。何でもいいので、最近ヤバイ事があったら教えてください。貴女には黙秘権も拒否権もないですし、偽証があれば拷問室の清掃を行います。いいですね?」「アッハイ」 #KZNPLN

2014-12-12 09:05:12
春魔解丼 @vespiking

「あ、あの軽巡は本当に、何も知りません……」「では最近、何かヤバイ事は。何か関与があるかもしれません」「最近、ヤバイ事……」衣笠は思考を巡らした。そして、どう思考を辿っても行き着く光景を口にした。「て、天狗が……」 #KZNPLN

2014-12-12 09:07:14
春魔解丼 @vespiking

「天狗」不知火は反芻した。「ハイ、天狗です」「天狗」天狗とは、日本に古くから伝わるフェアリーの一種である。長い鼻をもつ者や鴉に変身する者がおり、ニンジャやカッパと同じく伝説上の存在である。「テング・オメーンをかぶり、頭にマンダリンめいて高射装置を載せた、天狗です」 #KZNPLN

2014-12-13 08:06:17
春魔解丼 @vespiking

「なるほど……」不知火はその外見に心当たりがあった。テング・オメーンをかぶり、頭に高射装置を載せた艦娘は日本全体で見てもあまり多くないと予想される。「エッ、知っているんですか」「ええ、まあ、噂くらいは」衣笠はどこかで、自分が狂っている事を期待していたが、現実だ。 #KZNPLN

2014-12-13 08:08:42
春魔解丼 @vespiking

衣笠はその後、あの日の出来事を話した。ヘドロスライムじみた謎の生命体、レーベレヒト・マース。それを殺しに来たという、防空駆逐艦でも天狗でもない存在。防空天狗。話しながら、衣笠は気が狂っていくのではないかと不安になった。不知火の顔が極めてシリアスなので、尚更だ。 #KZNPLN

2014-12-13 08:12:45
春魔解丼 @vespiking

不知火は剣呑な顔で、ぬうと立ち上がる。「ヒッ」衣笠は再失禁した。だが不知火は動じず、無線機を起動する。「ドーモ、ランダマイザ=サン。突然ですが、防衛省の事案リストにアクセスは可能ですか」『アー、ドーモ。できるよ。いつの?』「最近です。重爆『富嶽』に関するデータを」 #KZNPLN

2014-12-13 08:19:05
春魔解丼 @vespiking

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2014-12-13 08:20:39
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