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この箇所について。ちなみに第一章。 >like the just-departed administration of yours that was responsible for the whole mess."
2014-12-14 17:23:011984年刊行の邦訳に当たってみましょう。訳者は伊藤典夫。 >先だって消えた、きみのお国の政権みたいに。あれはひどいものだった。
2014-12-14 17:25:22これではいけません。「the whole mess(この件にまつわる災いごとすべて)のresponsible(元凶)は、このあいだ任期を終えた旧政権にある」とジミトリ博士は述べているのだから。
2014-12-14 17:28:36月のモノリスについて機密にしたこと、その延長で実行された木星探査計画が乗員4名の死亡、1名の行方不明で終わってしまったこと。旧政権の強引なやり方を博士は批判しているのです。
2014-12-14 17:30:56同章にもう一つ、あれれな訳があります。原文はここ。 > things are going to get very, very hot."
2014-12-14 17:32:02これ×です。ここにあるthingsは「情報」ではなく「事態」です。「これで議会もホワイトハウスも大騒ぎになるぞ」とジミトリ博士はフロイド博士に明かしていることが読み取れていない。
2014-12-14 17:36:56十代のときに邦訳(文庫ではなくハードカバー版)を読んで、どうしても解せなかった箇所があります。第32章の末尾。 >霊園の柩に横たわる蝋細工は、ロバート・ボーマンとは何のかかわりもない見知らぬ存在となり果てていた。
2014-12-14 17:40:28前作『2001年宇宙の旅』の後半の主人公デイヴ・ボーマンの少年時代の話です。兄とふたりで地元の湖の底の探索を企み、水中ホースで酸素をポンプで供給されながら100M下の湖底までいくと兄が言い出し、デイヴはポンプの操作係となる。そのとき誤って一酸化炭素濃度のバルブを全開にした。
2014-12-14 17:43:32湖底に消えていく兄。このことがその後のデイヴの人生に影を落とすことになった、と小説では描かれるのです。
2014-12-14 17:45:00原文にあたってみます。 >The wax statue in the funeral parlor was a total stranger, who had nothing to do with Robert Bowman.
2014-12-14 17:50:20改めて伊藤訳を引用。 >霊園の柩に横たわる蝋細工は、ロバート・ボーマンとは何のかかわりもない見知らぬ存在となり果てていた。
2014-12-14 17:50:59これだとだめなんです。ここの原文から「兄ロバートは再び上がってくることはなく、遺体もついに見つからなかった。葬儀にあたってロバートに似せて作られた蝋人形を用意し柩に収め、埋葬した」と読み取れていない訳だから。
2014-12-14 17:53:53funeral parlorは「霊園」ではなく「葬儀場」ですちなみに。
葬儀の席で、友人や近親者たちが柩に横たわる故人と最後の別れをして、蓋がされ、柩が穴に降ろされ、土が被せられる。兄を殺してしまった幼いデイヴは、柩に横たわる兄のそっくり人形をどんな気持ちで眺めていたのか。「これはボブ兄さんではない。ボブは今も湖の底なんだ」
2014-12-14 17:57:56葬儀の描写は小説中には一切ありません。しかしこの一文のなかにすべて描かれているのです。
2014-12-14 17:58:39くみ訳 「まもなく最愛の兄とは再会を果たした。もっとも葬儀の柩に収められた精巧な蝋人形を兄ロバートと呼べるのであれば、だったが。」
2014-12-14 18:40:10