認識論的な量子力学についてのコメント

認識論的な現代的コペンハーゲン解釈での量子力学について、意識の問題の観点からTWしたものをまとめました。少しでも量子力学の世間での誤解、悪用が減ることを期待します。
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Masahiro Hotta @hottaqu

量子力学では人間の意識や意志が凄い働きをするという一般人の方のコメントをよく散見する。これは、とても大きな誤解だ。

2014-12-16 10:28:16
Masahiro Hotta @hottaqu

エネルギー保存則や第2法則と同様に、この世界では人間は際限なく何でもできるわけではないことが、量子力学を考えるうえでの大事な出発点。また重要なののは認識論的な現代的コペンハーゲン解釈。これは、意識の問題と科学の問題をきれいに切り分ける、とても切れ味のいいナイフ。

2014-12-16 10:29:39
Masahiro Hotta @hottaqu

まず自分がいて、自分の五感やその先にある様々な機械装置も使って、自分にとっての外部世界の情報を収集し、それを解析するのが「科学」。

2014-12-16 10:30:38
Masahiro Hotta @hottaqu

この科学の定義から、「自分以外の人間にも、自分と同様の意識があり、起き得る様々な事象の中から、波動関数で定まるある確率で、ただ1つの経験を時々刻々していく」という"事実"には、実は反証可能性がないことがポイント。

2014-12-16 10:32:13
Masahiro Hotta @hottaqu

もし反証可能ならば、相手が人間かアンドロイドかという問いの答えを、与えた質問(刺激)に対する答え(反応)から合理的に決定できる方法があるべきだ。だが考えるとそれはあり得ない。どんな刺激に対しても人間の反応パターンをよく考慮したプログラムを組むことは原理的には可能であろうから。

2014-12-16 10:34:31
Masahiro Hotta @hottaqu

物理学や科学では、「相手に自分と同様の意識があって、自分と同様にただ1つの事象を時々刻々経験しているはず」ということは、実は証明しようがない。つまり人間の意識の問題自体は、量子力学や科学の「対象外」ということ。メタ科学の話に属する。

2014-12-16 10:36:08
Masahiro Hotta @hottaqu

量子力学は、観察される対象系と、それを観測する自分(と使う測定器)の分離が、合理的に達成できた場合のみに有効。「もしその設定が確保できたならば、こういうことが確率的に言えます」と量子力学は教えてくれるだけ。安定した意識、記憶を持つ自分がいるという前提でのみ量子力学には意味がある。

2014-12-16 10:37:30
Masahiro Hotta @hottaqu

「しかし自分は特別な人間ではないだろうから、他の人間も自分と同様であろう。」という平等性、一様性の「公理」を量子力学の他の公理に加えても整合し、矛盾を決して起こさない構造をしていることが本質。これが量子力学の非自明な部分。

2014-12-16 10:39:18
Masahiro Hotta @hottaqu

「 量子力学が自分の未来の体験に関して語ること」と、「同じ量子力学が他の人間に起きるだろう未来の体験に関して語ること」は、世界の中で矛盾を決して起こさない。そういう構造を量子力学は備えていることが、ポイント。

2014-12-16 10:41:46
Masahiro Hotta @hottaqu

ただ更に、「将来アンドロイドが意識を獲得して、人間と同様に、多数の可能な事象の中からただ1つの事象が確率的に選ばれて、それを時々刻々体験し続ける。」という新たな公理を加えても、量子力学の体系は破綻しない。量子力学が予言するアンドロイドの体験と人間の体験は矛盾を起こさない。

2014-12-16 10:45:27
Masahiro Hotta @hottaqu

だから、量子力学は決して人間だけのものではないということ。

2014-12-16 10:45:41
Masahiro Hotta @hottaqu

アンドロイドでなくても、サルだって、イヌだって、ネコだって、彼らが量子力学を理解して、波動関数から事象の確率を計算して実験できれば、同じ。量子力学を使いたいユーザーの環境が整えば、量子力学は自分のユーザーを選ばない。それが、認識論的な現代的コペンハーゲン解釈に基づいた量子力学。

2014-12-16 10:51:03
Masahiro Hotta @hottaqu

量子力学は、意識の問題に関して何かを答える力はないし、また主体的な自分に安定した意識があるという前提をクリアにしたときにだけ意味をもってくるツールに過ぎない。自分の意識が世界を微細なところまで最大限理解したいときに使える、人間に許された「極限ツール」とでも言えるだろう。

2014-12-16 10:58:19
Masahiro Hotta @hottaqu

哲学と違って、科学としての量子力学では、近似的にでも「また主体的な自分に安定した意識があるという前提をクリアにしたとき」が実現していれば、その環境で人間は何を体験できるかということを教えるというだけ。その前提は厳密に成り立つのかという哲学者の問いは、実は科学者にはナンセンス。

2014-12-16 11:01:56
Masahiro Hotta @hottaqu

実際多くの人々が言うように、「自分の意識が瞬間瞬間1つの体験を認識し続けている」という経験談は世の中には溢れており、その自分の意識が混濁しない状況が続く限り、その多くの人達はこの「認識論的な量子力学」を合理的に使えるわけだ。このプラグマティズム的視点だけで、科学者には十分。

2014-12-16 11:06:22
Masahiro Hotta @hottaqu

量子力学自体は、世間の人が思うほど、研究者にとって凄いものではない。世界を読み解く道具に過ぎない。それが記述する世界描像が、人間の普段の生活に比べてあまりにかけ離れており、なじみが薄いというだけ。そのうち感覚的にも量子力学を理解している世代が、未来には現れるだろうと思っている。

2014-12-16 11:34:02
Masahiro Hotta @hottaqu

認識論的な現代的コペンハーゲン解釈については、日本物理学会誌2014年9月号(Vol.69,P.613-622)の「量子エネルギーテレポーテーション」の紹介記事の第2章にも書きました。また教科書の「量子情報と時空の物理」(SGC103 サイエンス社)でも説明しています。

2014-12-17 06:17:59
Masahiro Hotta @hottaqu

また下記ブログでも、認識論的な現代的コペンハーゲン解釈における「波動関数の収縮」の話を書きました。 「波動関数の収縮はパラドクスではない。 」-Quantum Universe ブログ- mhotta.hatenablog.com/entry/2014/04/…

2014-12-17 06:18:24