Partnership:三日目夜

そして    狭間が       崩れゆく。             ──最後の夜へ。
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クォーツ @ps_quartz

茜から暮れ、碧を帯びて深まる空間に、繋いだ扉。 「上るよ、ゼクス」  開いた先に有ったのは、手狭な空間。伸びる段差。幾ばくか上がり行く度に、左へと直角に折れ曲がる踊り場。高い位置で、等間隔に光を取り込む小窓。  夜と等しい暗さに包まれた、石造りの階段。

2014-12-13 22:17:30
ゼクス @ZXS_toraniga_PS

淡々と歩み、階段を登るゼクス達。 「……高いところなのか」 別に苦手ではないがな、と零しつつ 「お前に縁(ゆかり)の場なのか?」

2014-12-14 12:50:36
クォーツ @ps_quartz

「ああ。時計塔のてっぺんに登るための階段だ」  高い場所が平気と聞けば、そりゃあ良かった、と、言葉を添えた。  壁の彼処に灯る明かりが、足元へと影を落とす。鈍くもないが早くはない、二人分の影の進み。 「実物じゃあないけどな。あたしがで作っただけのモンだから」  音の、反響。

2014-12-14 19:43:40
ゼクス @ZXS_toraniga_PS

「いくつも登った。まだ、続く。階段は、高いところに続いている」 曲がれるたびに、上へと伸びていく足場。 「時計塔は、新しい家か」 壁の光が、ゼクスを薄く、夜の明るさに照らしている。

2014-12-14 22:24:39
クォーツ @ps_quartz

「まだまだ上るねぇ。もう少し歩いたら小部屋があるから、そこで一旦休むよ」  上へ、上へ。中の景色は、ほとんど変わらない。小窓の外もまた、夜闇が覗くばかり。 「新たな我が家、って思ってくれてイイ。あたしと違ってあんたは外にも出られるだろうけどな」  肩越しに振り返り、に、と。

2014-12-14 22:47:37
ゼクス @ZXS_toraniga_PS

「クォーツとの時間は、いつでもあるが、貴重だ  人生に限りがあるように、終わりは必ず在る」 笑みは返せなかった。クォーツは外に出れないのに、己だけが出れる。 それに、笑みを返すのが嫌だった。子供じみた理由だとしても、できなかった。 「じゃあ、ただいま」 家に、帰ってきたのだから。

2014-12-14 23:33:02
クォーツ @ps_quartz

「有限、って奴かな。始まりが有りゃ終わりも当たり前に有る。夜が来たら、あとは朝が来る。人は空を飛べない。それと一緒さ」  目を細め、また進行方向を向き進み出す。  折れ曲がる一つに、段差の数が少ない壁面。程なくして扉が有った。

2014-12-15 08:00:36
クォーツ @ps_quartz

角から色が落ちて、ささくれた扉。表面を覆う金の鍍金が剥げ、代わりに緑青の風合いが模様を浮き立たせるドアノブ。 「おかえり、ゼクス」  開き、先に踏み入れば、慣れた手つきでランプを灯す。油の焼けて仄か立ち上る煤の黒。  所狭しと並んだ箱に工具の中、椅子を一つ、差し出した。

2014-12-15 08:00:40
クォーツ @ps_quartz

「んー、他の奴らみたいに、別の呼び方つけた方がイイのかなァ。ゼクス、そこんとこどうよ?」  散らばった、金属のあれやそれやを、適当に束ねては脇に寄せながら。

2014-12-15 08:05:31
ゼクス @ZXS_toraniga_PS

「ああ」 おかえりという言葉に、頷く。懐かしい響きだった。 「椅子、借りる……いや、使うぞ。よっこらしょ」 年寄り臭い声と共に腰掛けて

2014-12-15 19:16:55
ゼクス @ZXS_toraniga_PS

「ゼクスは数字だから、名前があれば、少し情緒があるやもしれん」 井戸水の入った椀を作り出してごくりと乾す。 「職人が使う、特殊な工具だな  ゆっくり時間をかけて使い方を教えてくれ。10年もあれば全部覚えるさ」

2014-12-15 19:17:20
クォーツ @ps_quartz

「ん。散らかってっからね、落とさないよーにだけ気ィつけてな。  ……情緒かァ。そういうモンには疎いって、よく言われたンだよなぁ」  工具を並べ直しつに。自分から尋ねておきながら、考えて居ない有様だった。 「10年なァ──…大雑把な教え方はしないつもりだが、なるべく早く頼むよ」

2014-12-15 21:41:01
クォーツ @ps_quartz

「ああ、戻ったら水の出る場所も言ってやらにゃいけないね。 あたしゃ今のままじゃ、1年そこらも持つかわからんが。あんたが欠かさず手入れしてくれるンなら、もっと長くなるだろうさ」  最初に呼び出したものと同じ金具を手に。紙を一枚、傍から持ち上げる。 「何だと思う?」  図面だ。

2014-12-15 21:45:08
ゼクス @ZXS_toraniga_PS

「ゼクスは六だ、六ォーツとかでいいぞ?  おお、頑張って覚えるわ。時間、間に合わせないとな」 「……築城の基礎を学ぶときに見たことがあるな」 といっても、築城は習得できなかったのだが。 ただ、城の防衛で城の設計図は頭に叩きこんであった。 「この時計塔の重要な部位の、設計図か?」

2014-12-16 06:21:59
クォーツ @ps_quartz

「ろくぉーつ……Rockquartz?」  慣れた発音に置き換えた。アクセントは母音の二つ目。 「ナイス。この時計塔の『心臓』がある部屋の詳細だ。今夜のうちに、ここを見とく」  厚い壁、図へ線を引き細かく書き込まれた文字。中心部に確りと位置する、最も『護られて居る』部分。

2014-12-16 08:36:35
ゼクス @ZXS_toraniga_PS

「Rockquartz、か」 案外発音できるんだなと自分に感心してみた。 「……いいんじゃないか。なんだ、西域の言葉のような響きだ」 好い好いと頷き、ついでに 「じゃあ、命名してくれ」 と、正式な命名を頼んだ

2014-12-16 12:21:06
ゼクス @ZXS_toraniga_PS

「ほ、それが心臓部かい  そこを補うのが、俺だからな。そこ見なきゃ、この風景に記憶を映す意味がなくなる」 時計塔に来たのは、そのためという意味合いは大きいと云う。 「しかし無駄のない設計だな」 なんとなく、そう思った。

2014-12-16 12:21:22
クォーツ @ps_quartz

「長ったらしくなンのも何だよねェ。あんたンとこで6が、ロクだから、ロクのままの方がー……いや、やっぱ言いづらいわ。『岩《Rock》』にしようか」  舌に乗せられた音を聞き、うまいうまいと軽い拍手の音を立てる。 「どうだい、ロック・クォーツ。今からそれが、アンタの名前」

2014-12-16 15:51:18
クォーツ @ps_quartz

「だろ? 安全な場所で見て触れる方が覚えいいんじゃないかね。実物だったら、中見せる時にあたしが動けなくなるかもしんないし」  図を差し出し、持っていろ、とばかり。 「無駄が有れば、そんだけ無駄な力を使うからだろうねぇ。……作り方は、あたしにも判んないんだよね。凄いよなァ」

2014-12-16 15:54:35
クォーツ @ps_quartz

「飯は足りてるかい? 足りないなら食っときなよ。まだ、ここなら小魚とか食えるンだし」  足りたならば、そのまま。図面の部屋に直行すると、言い添えた。

2014-12-16 15:56:18
ゼクス @ZXS_toraniga_PS

「パンケーキが良い。甘味以外、ここだと生野菜ぐらいしか美味しく感じないのだ」 野菜はもとより、メダカはあんまり好みじゃなかった。と付け加えて、 「俺はロッククォーツ、岩の男よ」 どうだと言わんばかりに胸を張り、手を腰に宛てた。

2014-12-16 19:53:26
ゼクス @ZXS_toraniga_PS

図面を頭に叩き込み、頷く。 「……パンケーキを食べたら、この場にいるうちに、心臓部へ行こう」 そう、決めた。

2014-12-16 19:53:37
クォーツ @ps_quartz

「おんや、そなの? 何が違うンだろうねェ」  美味に感じないと聞いては、不可思議そうに首を傾いだ。そも、味の概念など分かりもしない身なのだが。 「昼間に出した奴な。気に入ってくれたンなら爺さんも喜ぶだろうさ」  工具を退かして空けた空間にコト、と置いた。ご所望の甘い香の皿。

2014-12-16 22:46:05
クォーツ @ps_quartz

「頑丈に育つンだろうなァ。よろしくな、ロック」  破顔し、悪戯好きな子供の様な笑み。 「さ、食べとくれ。リンゴのコンポート、おまけにつけてあるからさ」

2014-12-16 22:46:25
ゼクス @ZXS_toraniga_PS

「わっかんねぇよ」 両手を広げてお手上げ、とする 「……生きてるものの方が、今は美味しい  だが、なぜか甘味はその無味悪味を差し引いても、美味しいと感じる。理屈は知らん!」

2014-12-16 23:10:40
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