三連ツイノベ自選第3集

三連ツイノベのまとめ第三弾です。
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神になりたい

おーさん @osayas811

神になりたいと思った。別に世界を征服したいわけじゃない。ただ、自分の心がこの体の中にあるのが嫌だった。今日も放課後、あいつらが僕を痛めつける。すると心にも傷がつく。僕の心が空の上にあればいいのに。そうすれば、体がどんなに痛んでも、僕の心が傷つくことはないのだから。 #三連ツイノベ

2013-11-02 22:35:59
おーさん @osayas811

神になると、全ての悩みから解放される。僕はただ、先生やクラスメイトを空から眺めていればいい。どうすれば神になれるのか。気がつくと僕は屋上にいた。なるべく空に近い場所に足が向いたんだろう。校庭にいる生徒がゴミのようだ。ここから一歩踏み出せば、神になれるかもしれない。 #三連ツイノベ

2013-11-02 22:36:32
おーさん @osayas811

「神にはなれないよ」声に振り返ると、クラスの女子がいた。「何でわかるの?」「私もなりたかったから。でも今は違う。このままでいたいよ」そしてその子は去った。教室に戻ると、先生から、入院中の女子生徒が死んだと聞かされた。「神にはなれない」僕は彼女の言葉を思い出した。 #三連ツイノベf

2013-11-02 22:37:16

貝殻の思い出

おーさん @osayas811

「思い残すことはないですか?」案内係に聞かれて僕は考えた。妻や娘は看取ってくれた。孫たちにも会えた。「大丈夫。何もない」「でも、これはあなたの忘れ物ではないですか?」案内係は手を差し出した。その手の中のものを見て、僕は大事なことを思い出した。「少しだけ待ってくれ」 #三連ツイノベ

2013-11-04 22:17:47
おーさん @osayas811

「来てくれたの」少女はベッドの上で笑顔になった。「卒業式は出たかったな」「きっと出られるよ」僕は精一杯笑ってみせた。でも彼女は、「隆史くん、嘘つくのヘタクソ」そして僕の手に貝殻を乗せると、「私の宝物あげる」僕は叫んだ。「死なないで由美ちゃん。ずっと好きだったんだ」 #三連ツイノベ

2013-11-04 22:18:25
おーさん @osayas811

「思いは遂げられましたか?」案内係が僕に手を差し出していた。その手には小さな貝殻が乗っていた。僕はそれを受け取ると答えた。「ああ、ちゃんと伝えられたよ」「それはよかったですね」案内係が片手を振ると、僕はまた少年になった。「では行きましょう。彼女が待っていますよ」 #三連ツイノベf

2013-11-04 22:19:03

狐注意報

おーさん @osayas811

「牡羊座の人は狐に注意しましょう」女子アナが言った。今日は狐に騙される日なのか?そのとき電話が。「もしもし、俺だよ」「誰だ?」「何だ、息子の声を忘れたのか?」「バカ野郎、俺に子どもはいない」受話器を叩きつけた。早速狐の悪さが始まったらしい。すると玄関から女の声が。 #三連ツイノベ

2013-11-05 21:00:45
おーさん @osayas811

「子どもはいないですって?」5年前に別れた佳奈だ。女の子を連れている。「まさか俺の子?」「もちろんよ。養育費はくれるわよね」冗談じゃない。そんなの聞いてないぞ。待てよ、これも狐の仕業じゃ?そのとき、「タクヤいる?」まずい。恋人のまなみだ。「お客さんなの?誰この女」 #三連ツイノベ

2013-11-05 21:01:20
おーさん @osayas811

「狐だよ」俺が答えると、「ひどい。裁判よ!」佳奈と子どもは出ていった。まなみが呆れた顔で俺を見る。「私、来月結婚するの」「何だって?」驚いた拍子に、俺の尻から尻尾が飛び出した。目の前に女狐が。「人間になった気分はどう?」「ごめんよ、かあちゃん。もう浮気しません」 #三連ツイノベf

2013-11-05 21:02:16

記憶の旅

おーさん @osayas811

「過去に旅してみませんか」女房に先立たれ、生きがいをなくしていた私は、その男の話に興味を覚えた。男は道端で私を呼び止めたのだ。「本当にそんなことができるのかね。だったら女房が生きていた頃に戻してくれ」私が言うと、「いいでしょう。では明日、私の研究室に来てください」 #三連ツイノベ

2013-11-07 00:34:59
おーさん @osayas811

私は白い建物の前にいた。本当に過去に戻ったのか。そういえばこの建物、前に来たことがある気がする。そのとき、ふいにドアが開いて女房が出てきた。驚くほど若い。しかもこの姿は?「花婿が遅刻しちゃダメじゃない。さあ、早く」花嫁姿の彼女は、私の腕をつかむと建物の中に入った。 #三連ツイノベ

2013-11-07 00:35:54
おーさん @osayas811

「夢ではないんですか?博士」「いや、記憶だ。彼の脳を操作して、昨日の記憶の後に50年前の記憶を挿入したんだ。人間の記憶とは不思議なものだ。時系列の不自然さは自動的に補正される。思い出は誰でも都合よく修正して憶えているものだよ。これが心理的タイムトラベルの原理だ」 #三連ツイノベf

2013-11-07 00:36:49

ゲシュタルト崩壊は突然に

おーさん @osayas811

「主文、被告人を……」あれ、変だな。漢字が読めない。さっきまで普通に読めたのに。てか、これ漢字か?どう見てもカタカナに見えるんだが。これってもしかして、ゲシュタルト崩壊?マズいよ、こんなときに。俺、裁判長だよ?そうだ。紙に書いて見せよう。極めて異例だがしかたない。 #三連ツイノベ

2013-11-08 13:50:22
おーさん @osayas811

「被告人をこれに処す」裁判長は大きな紙を広げて見せた。そこに書かれていた文字は……。これは、何て読むんだっけ?ヤバいな、新聞記者の俺が、こんな簡単な字が読めないなんて。とりあえずメモするか。あ、もう紙がしまわれている。何だったっけな。確かこんな字だったと思うけど。 #三連ツイノベ

2013-11-08 13:50:57
おーさん @osayas811

「新人、しっかり傍聴してきたか?」「はい、デスク」「判決はどうだった?」「このメモを見てください」「何?これが刑なのか?」「ええ」「外国なのか?」「さあ」「流されるのか?」「たぶん」「てっきり死刑だと思ったのに、まさか『タヒチ川』って。これは……よし、号外だ!」 #三連ツイノベf

2013-11-08 13:51:35

芋虫の涙

おーさん @osayas811

「通知が届いたんですけど」「ああ、受付はここだよ」「断われないんですよね?」「市民の義務だからね。1ヶ月は続けてもらわないと」「あの、いもモンって?」「芋夢市のゆるキャラの芋虫だよ。この着ぐるみを着て地面に転がってるだけでいいから」「これ、どう見ても寝袋ですけど」 #三連ツイノベ

2013-11-11 21:49:33
おーさん @osayas811

「市長、市民が回り持ちでやるのは無理があるのでは?」「お一人でやっていると、ほっぺを紛失したり、下ネタを連発したりするから、このほうがいいんだ。ただし自分が担当していることは秘密にしてもらう。ところで今月の担当者は?」「高校生です」「その年頃には酷かもしれないな」 #三連ツイノベ

2013-11-11 21:51:22
おーさん @osayas811

「ヒロシ、最近どうしたのかな」「あいつ家の事情で1ヶ月休学だって。それよりまなみ、俺と付き合わないか?」「でもヒロシが」「いないやつのことはほっといてさ」「そうだね。あれ?」「どうした?」「あそこで地面に転がってる変なの」「ああ、芋虫だろ」「今、泣いてたみたい」 #三連ツイノベf

2013-11-11 21:52:29

新釈「頭山」

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