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#NHK 報道『危機後の大量放出で汚染深刻化』のポイントはどこなのか

NHK のニュース記事 「危機後の大量放出で汚染深刻化」(2014年12月21日)について: http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20141221/1836_osen.html 記事中に色々と混乱があり、どこが新しいポイントなのか分かりにくいので、とくに福島第一原発からのヨウ素・セシウム放出量に関わる点について、分かる範囲でまとめました。 末尾に関連論文などの資料集つき。
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まとめ

 
‡ 記事には 「事故発生当初の4日間ではなく、その後に全体の75%が放出され…分かりました」 とあり、一見、放出量の推定値が急に4倍にも増えたように読めてしまうが、実際にはそんな怖ろしいことは起こっていない。
 日本原子力研究開発機構(JAEA)の放出量評価では、当初から3月16日以後の放出も考慮されている。以下の3つは放出量評価の資料例。いずれの資料からも3月16日以後の放出が考慮されていることが分かる:

 ・2011年5月12日公開  ごく初期に公開されたもの。推定はまだ荒い。
   http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/anzen/shidai/genan2011/genan031/siryo4-2.pdf#page=7
 ・2011年9月2日公開  3月21日の茨城県南部の汚染などについて。
   http://nsec.jaea.go.jp/fukushima/data/20110906_a.pdf#page=19
 ・2012年3月6日公開  この時点でのまとめ的な資料。
   http://nsec.jaea.go.jp/ers/environment/envs/FukushimaWS/jaea1.pdf#page=9


‡ ただし、放出量の推定値が修正されたことは事実。同日に NHK で放送された 『メルトダウン File. 5 知られざる大量放出』 でも触れられていたように、最近の再評価により、15日夕から16日0時前後の放出率 (※) が上方修正された(同時に15日午後の放出率が“下方”修正されている)。

  JAEA グループの最新報より、Cs-137 と I-131 の放出率。横軸は日時
   http://photozou.jp/photo/show/885961/216216578
   点線が以前の推定、実線が新しい推定。

  論文は、Katata,Chino ら,Atmos. Chem. Phys. Discuss. (2014年)
   http://www.atmos-chem-phys-discuss.net/14/14725/2014/acpd-14-14725-2014.html

 (※) 福島第一から外部に向け、一時間あたりに放出される放射性物質の量。単位は Bq/h。例えば「100 Bq/h」は、一時間当たり「100 Bq」の量の放射性物質が福島第一から外に放出されることを意味する。


‡ 記事中、放出量の値は「47万テラベクレル」(ヨウ素換算後の値)とされているが、JAEA による評価値は以前から48万テラベクレル程度であり、したがって、放出総量の評価には大きな変更はない。
 JAEA による以前の評価値は、例えば東電による以下の取りまとめ資料に示されている。2012年3月6日時点の評価で 48万テラベクレル(480 PBq)である:

  東電による2012年5月時点での取りまとめ資料
   http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/images/120524j0105.pdf#page=9
   「INES 評価」の欄に示されているのがヨウ素換算後の値。


‡ 結局のところ、ポイントは

   (1) 放出率が一部修正されたこと

そして、『メルトダウン File. 5 知られざる大量放出』でも繰り返し述べられていたように、

   (2) 放出のメカニズム(記事中では「放出の原因」)にまだ分からないことが多い

ということのようです。
 

以下は当日のツイートと資料集

Masato IDA, PhD @miakiza20100906

危機後の大量放出で汚染深刻化◆NHK www3.nhk.or.jp/news/html/2014…  ← この記事のポイントがよく分からない。放出量の推定では当初から3月16日以後も考慮されているので。

2014-12-21 19:58:43
Masato IDA, PhD @miakiza20100906

総放出量が(たぶんヨウ素換算で)「47万テラベクレル」というのは、これまでの評価とあまり違わない。 この記事のポイントはおそらく、放出のメカニズム、「放出の原因」がまだよく分からない、ということじゃないかな?

2014-12-21 20:12:33
Masato IDA, PhD @miakiza20100906

念のため。過去の放出量評価のまとめ tepco.co.jp/cc/press/betu1… (PDF) 東電によるまとめ資料。やや古いけれど。「INES 評価」がヨウ素換算後の数字。この表では単位がペタベクレル(PBq。ペタはテラの千倍)になっているので注意。

2014-12-21 20:22:14
Masato IDA, PhD @miakiza20100906

#NHK  さっきのはこの図のことだろうか。15日夕から16日0時前後の放出率が上方修正されている。 この図は茅野グループの最新報 twitter.com/miakiza2010090… (2014年、Katata ら)から。 pic.twitter.com/I4Sg44B3Nt

2014-12-21 21:48:14
拡大
Masato IDA, PhD @miakiza20100906

論文(無料): 大気=海洋連成シミュレーションによる福島第一からの大気放出量の詳細推定 atmos-chem-phys-discuss.net/14/14725/2014/…  2014年、Katata(JAEA)ら。 重要。JAEA茅野グループからの最新報。I-131 と Cs-137 の大気放出量の再推定。

2014-06-10 18:07:40

《JAEA による放出量評価に関する資料集》

‡ 福島第1原子力発電所事故に伴う 131I と 137Cs の大気放出量に関する試算
 (2011年5月12日)
 http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/anzen/shidai/genan2011/genan031/siryo4-2.pdf

‡ 福島第一原子力発電所事故に伴う 131I と 137Cs の大気放出量に関する試算(II) - 3月12日から15日までの放出率の再推定
 (2011年8月22日)
 http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/anzen/shidai/genan2011/genan063/siryo5.pdf

‡ 福島第一原子力発電所事故に伴う放射性物質の大気拡散解析茨城県南部の線量上昇についてのWSPEEDIシミュレーションによる考察
 (2011年9月2日)
 http://nsec.jaea.go.jp/fukushima/data/20110906_a.pdf

‡ 福島第一原子力発電所事故に伴う Cs137 の大気降下状況の試算 - 世界版 SPEEDI(WSPEEDI)を用いたシミュレーション
 (2011年9月6日)
 http://nsec.jaea.go.jp/fukushima/data/20110906.pdf

‡ 大気放出量推定
 (2012年3月6日)
 http://nsec.jaea.go.jp/ers/environment/envs/FukushimaWS/jaea1.pdf

‡ 大気拡散プロセスの解析
 (2012年3月6日)
 http://nsec.jaea.go.jp/ers/environment/envs/FukushimaWS/jaea2.pdf

‡ 海洋放出量推定と海洋拡散プロセスの解析
 (2012年3月6日)
 http://nsec.jaea.go.jp/ers/environment/envs/FukushimaWS/jaea3.pdf

‡ 東京電力福島第一原子力発電所から放出された放射性セシウム沈着量を大気シミュレーションにより再現することに成功
 (2013年3月4日)
 http://www.nies.go.jp/whatsnew/2013/20130304/20130304.html
  ※ 国立環境研究所による検証。JAEA の推定が最も良く実測値を再現するという結果に

‡ 東京電力福島第一原子力発電所事故によって環境中に放出された放射性物質の輸送沈着過程に関するモデル計算結果の比較
 (2014年9月2日)
 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-h140902-j1.pdf
  ※ 日本学術会議による取りまとめ資料


《JAEA による放出量評価に関する論文集》

‡ Preliminary Estimation of Release Amounts of 131I and 137Cs Accidentally Discharged from the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant into the Atmosphere
 (2011年4月投稿)
 http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/18811248.2011.9711799

‡ Numerical reconstruction of high dose rate zones due to the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant accident
 (2011年7月投稿)
 http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0265931X11002335

‡ Atmospheric discharge and dispersion of radionuclides during the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant accident. Part I: Source term estimation and local-scale atmospheric dispersion in early phase of the accident
 (2011年11月投稿)
 http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0265931X12000525

‡ Atmospheric discharge and dispersion of radionuclides during the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant accident. Part II: verification of the source term and analysis of regional-scale atmospheric dispersion
 (2012年1月投稿)
 http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0265931X12001373

‡ Source term estimation of atmospheric release due to the Fukushima Dai-ichi Nuclear Power Plant accident by atmospheric and oceanic dispersion simulations
 (2012年11月投稿)
 http://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/00223131.2013.772449

‡ Detailed source term estimation of the atmospheric release for the Fukushima Daiichi Nuclear Power Station accident by coupling simulations of atmospheric dispersion model with improved deposition scheme and oceanic dispersion model
 (2014年4月投稿)
 http://www.atmos-chem-phys-discuss.net/14/14725/2014/acpd-14-14725-2014.html
 

コメント

Masato IDA, PhD @miakiza20100906 2014年12月22日
一つだけ、古いツイートを追加しました。
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Masato IDA, PhD @miakiza20100906 2014年12月25日
冒頭の3資料に簡単なコメントを付けました。
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Masato IDA, PhD @miakiza20100906 2014年12月25日
《JAEA による放出量評価に関する論文集》に国立環境研の資料を一つ加えました。
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