駄提督のクリスマス休暇

竹村京 @kyou_takemura

では、だらだら書き続けているとお蔵入りになりそうなんで #落ちぬい二次 を完成しているキリがいいところまで。お決まりですが、#不知火に落ち度はない のオフィシャルではありませんのでご了承ください

竹村京 @kyou_takemura

師走である。 俺は師匠でも先生でもないが、年末だしそれなりに忙しくはあるのだ。 今日も今日とて秘書艦殿に監視されながら書類を読むふりをしてハンコを捺しつつ片手で鶴を折るお仕事に精を出さざるを得ないのである。#落ちぬい二次

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そんな忙しい時に秘書艦がふと思い出したかのようにわざとらしく口を開いた。 「司令。明後日は休暇でしたね」 「え？ そうだっけ？」 そんな予定を入れた覚えはない。#落ちぬい二次

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「そうです。不知火が司令の休暇申請を出して、司令がご自分で承認されたので間違いありません」 「お前また勝手に」 「司令。民間ならともかく軍ではちゃんと有給休暇は消化しなければ怒られますよ」 「そりゃそうだが、まあ休暇つったってやることねーんだけど」#落ちぬい二次

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確かに有給や代休は消化しなければならない。なので軍人一般は年度末にどかっとまとめて取得するのだが、やることがなければ帳簿上は休んでいても普通に出勤するのはよくある。 「また執務室で飲酒ですか」 「電話番と言ってくれ」#落ちぬい二次

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「侘びしいですね」 「ほっとけ」 「そんな司令に朗報です」 「あん？」 「可愛い秘書艦が一緒に外出してさしあげます」 無表情のまま胸を張る。可愛くない。図々しい。 「辞退しとくわ」 「駄目です。休暇申請の備考欄に恋人との逢い引きと書いてありましたから」#落ちぬい二次

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「お前が書いたんだろ」 「決裁したのは司令ですが。ちなみに行き先も書いてありました」 「どこだよ、行かんけど」 「舞浜です」 「は？」 「舞浜です。千葉県浦安市舞浜」 「あそこか？」 「はい。舞浜といえばあそこしかありませんので」 「行かねえ」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

あそこってこの時期はファミリーじゃなくてカップルでみっちりなんだろ？ んなとこ行ったら絶望して命を絶ちかねん。 「ご自分で決裁しておいて駄々をこねるのですか」 「陽炎たちと行け。今から申請すれば二秒でハンコやる」 「そうですか」#落ちぬい二次

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言うなりスマホを操作しはじめ、5秒で仕舞った。 「休暇は貰うけど別の予定を入れた、だそうです」 不知火はさらさらと陽炎と黒潮の休暇申請を代筆して俺の前に突き出す。理由の欄は「ひ・み・つ」だそうだ。 上官をなめてんのか。#落ちぬい二次

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「二秒でハンコをくださるとおっしゃいましたね」 「わーったよ」 承認印を捺してやる。まあ予報でも深海棲艦の出現可能性は高くないから大丈夫だろ。陽炎が駄目となると司令代行を長門に頼まないといけないのが気が重い。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「では決まりですね。これをどうぞ」 名刺大の紙っぺらを差し出してくる。カラフルでファンシーな絵が描いてあって、はじっこにはバーコードがある。 「チケットです。忘れないようにしてください」 さすが勝手に俺の休暇を申請するだけあって準備がいい。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

こんこん、とノックの音。続くのは浜風の声だ。 「失礼します」 「おう。どうした」 浜風は入ってくるなりちらりと不知火を見た。あ、これ火花散ってる。怖い。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「司令。次の休暇ですが」 やべ。嫌な予感する。 「私もその日に休暇を取りましたので、一緒に遊びに行きましょう」 おい。不知火いるんだぞ。 「はい、これ」 差し出したのはさっき不知火から貰ったのと同じチケット。#落ちぬい二次

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「いや、それがだな」 「嫌だとは言わせませんから。いつも手料理を食べに来ているんですから、たまにはお返ししてください」 不知火いるんだぞ。 不知火の顔を見て見ると、あ、これハンドラーが制圧許可を出すのを待つ軍用犬の顔ですわ。 やめてくださいころされてしまいます。#落ちぬい二次

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どうしたものかと思案に苦しんでいると、再びノックの音が響く。 「司令、失礼します」 ドアの向こうから聞こえるのは神通の声だ。救いの女神か！ 「開いてるぞ」 さすがに神通の前では反射的に良い子になる駆逐艦二名。助かった。#落ちぬい二次

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「次の休暇、ですが……」 と、神通は机の上に並べられた二枚のチケットに目を落として言葉に詰まる。 やっべ。 神通の胸元で抱えた手をよく見てみると、三枚目のチケットが握られていやがる。 救いの女神がとどめを刺しに来た。#落ちぬい二次

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「その、ご予定がなければ気分転換でもと思って……」 ご予定はこの10分間でできました。俺の命日かもしれません。 「もう埋まっているみたいですね……」 肩を落として退出しようとする神通。 いや待てよ。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「神通、ちょい待ち。行くぞ」 「えっ！？」 「見ての通り不知火と浜風に外出をせがまれててな。さすがに二人のお守りはきついんで、引率になっちまうけど、それでよければ行こう」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

ファインプレーだぞ俺。地獄のトリプルブッキングを安全な遠足にすり替えてやった！ 神通は微笑んで軽く頷く。やっぱり刀を持っていない神通は救いの女神だった！ 「はい、もちろんです。よろしくお願いします」#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

猟犬二頭が左右から睨みつけてくるけどもう全然怖くない。調教師を味方に付けた俺の勝ちだ。 「そうなるとチケットが余ってしまいますね」 「部下にたかるのも悪いからな、俺の分は払うよ」 3枚でおよそ2万。グッバイ俺の2万。2万あればいい酒買えたのに。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

「料理は遠慮なくたかるくせに」 浜風ちょい黙ろうね？ 不知火が殺意に満ちた顔をしてるだけじゃなく、神通まで驚いた顔してるからね。おじさん殺されちゃうからね。 「では、次のお休みはよろしくお願いします」 神通が折り目正しく一礼して退出する。浜風もそれに続いた。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

その日の課業終了後、スマホの電話帳アプリを起動して長門の名前をタップ……しようとして、やめた。 まずは落ち着こう。不知火がいないことを再確認してから煙草を銜えて火を点ける。深く吸い込んだ煙をゆっくりと吐き出し、吸い殻をデスクの抽斗に隠したコーンスープの缶に捨てる。#落ちぬい二次

竹村京 @kyou_takemura

意を決して長門の名前をタップすると、すぐに力強い声が応答する。 『どうした提督。珍しいじゃないか』 「ちょっと頼みがあってな」 『話だけは聞こう』 「次の休みに私用で外出することになったから、ちょっと司令代行を頼みたいんだわ」 『ふぅん』#落ちぬい二次