世間体を気にする勇者と魔王の物語

羽印ぐぅ @hanegu

「なーなー勇者ぁ」 「なんだよ魔王、御託とか聞かねーぞ。さっさと俺の世間体の為にくたばれ」 「そんな理由でやられたくないぞ私も。なあ、世間体って大事？」 「大事だな」 「私もさ、世間体あるんだわ」 「魔王にも世間体とかあんのかよ」 「そそ。三代目だしね。だからさ、取引しない？」

羽印ぐぅ @hanegu

「はあ？」 「魔王ってさ、魔力を生み出す存在ってだけで、大したもんじゃないのよ。でも先代も先先代も頑張ってたからお前もみたいな流れなわけよ。ぶっちゃけ戦うのメンドーなわけよ」 「魔王がそんなんでいいのかよ」 「ね？勇者の君がそう思うくらいだから、こっちでも魔王って結構肩身狭いの」

羽印ぐぅ @hanegu

「だから勇者にお願い。ちょっとこっちが落ち着くまでさー、暫く戦い合ってるフリしない？うまくいけば同盟とか組めるかも」 「はあー？なんだそれ？勧誘か？そーやって陥れる気かよ魔王」 「あくまで提案だよ。君が拒んでも、次の勇者が来れば私はまた同じ提案をするだろうさ」 「……」

羽印ぐぅ @hanegu

「どうかな勇者？」 「話が難しい解らん」 「えー君ってバカなの？」 「うるせえ伊達にバカな勇者やってねえよ。もっと解りやすく具体的に話してくれんなら考えんでもない」 「えっ、乗ってくれんの？」 「俺も勇者言ってても利己的な人間なんでな。得があれば流れるさ」

羽印ぐぅ @hanegu

「わー勇者がそれでいいの？」 「テメエが言うんじゃねーよフヌケ魔王」 「酷いなあ。でも、お互い、らしくない者同士ってことで」 「まだヨロシクなんて言わねーぞ」 「案外堅いね、君。でもよろしく、勇者くん」 「てめーがゆる過ぎんだよ、魔王殿」

羽印ぐぅ @hanegu

@waiwai1132 唐突に始めちゃう、「世間体を気にする勇者と魔王の物語〜続編」① 「うーい、邪魔すんぞ魔王」 「あ、勇者君いらっしゃーい。討伐しに来たの？」 「ああ、例の定期訪問ってヤツだ。一応、向こうの王様にも魔王やっつけんのに手間掛かるって言ってるから暫く保つだろ」

羽印ぐぅ @hanegu

@waiwai1132 ②「勇者君がこうして時々来ることで私も魔族の勢力軍を城に引かせる理由にもなるし、いい感じだね」「でも長くは続けらんねーぞ。何度も殴り込みに行ってんのに目的果たしてねーんじゃ意味がねえ」 「解ってるよ。だからこっちも頑張るからさ、勇者君も頑張ってよ」

羽印ぐぅ @hanegu

@waiwai1132 ③「人遣いの荒い魔王だぜ」「あははっ。ゴメンね、ここまで来るのも大変だよねえ。君ってここまでひょいーって登ってくるけど、鍛えてれば人間の女の子でも体力って付くの？」 「……は？」「や、だから鍛えてれば…」「待て。なんで、俺の性別を知ってる…」

羽印ぐぅ @hanegu

@waiwai1132 ④「え？ニオイで解るよ？魔族ってそーゆーのに敏感なんだよー」「ほー…。魔王、取引はナシだ。今ここで死ね」「あれー!?あれー!?どうしたの勇者君!?」「うるせえ！女と知られたからには生かしておけるかー！」「うわー！白刃取りとか初めてしたー！ちょと待って！」

羽印ぐぅ @hanegu

@waiwai1132 ⑤「なんだ!?辞世の句くらいなら聞くぞ！」「私死ぬ前提!?待ってよ勇者君！ゴメンて！よく解んないけどゴメンて！だから理由くらい聞かせてー！もう女の子とか言わないからー！」「……」「勇者君？」「すまん…。ここ数年、女って気付かれたことがなかったから動揺した」

羽印ぐぅ @hanegu

@waiwai1132 ⑥「そ、そーなの？」「あー…くそ、油断したー…ニオイとか…そういう得意技があるとか…魔王テメエ変態か」「なんでだよ！だって私魔王だもん！他の魔族より色々強いんだもん！」「魔王がもんとか言うなキメエ!!…あーくそ…」「……ひょっとして、さ、勇者君」「あ？」

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@waiwai1132 ⑦「世間体が関係してたり、する？」「……勘がいいのも魔王の特徴か？まあ、そうだろうさ。勇者から産まれる子供で勇者を継ぐのは男の子が当たり前だろ？でも母さんは俺を産んだ後、身体が弱ってな。結果、俺は一人っ子。女の、俺だけ」「……」

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@waiwai1132 ⑧「父は気にするなって言ったが、周りはそう見てくれなかった。女である自分が憎かった。だから…いつからか、俺は男らしく振る舞うようになった。剣術も、喧嘩も、普通の男よりも強くなった。だから、俺が女だったことなんて、両親以外、殆ど忘れさせた」

羽印ぐぅ @hanegu

@waiwai1132 「勇者君…」「あーそんな目で見んなうぜえ。そういう生き方を選んだのは紛れもなく俺だ。ここでお前にこの話をしてんのも俺がしたいと思ったからだ」「男らしいねえ、勇者君」「ああ？ケンカ売ってんのか？」「違うよ！そーだなあ、じゃあ私もとっておきの話をしようかな」

羽印ぐぅ @hanegu

@waiwai1132 ⑧「とっておき？」「勇者君の話のお返し。ね、私には大きなツノがあるでしょ？」「ああ、でけえのが左右に2本な。ドアくぐる時に刺さんねーのかっていつも思う」「そんな低い扉なんてここにはないよ。で、この左側なんだけど…よっ、と」「…!?ツノが取れた!?」

羽印ぐぅ @hanegu

@waiwai1132 ⑨「私、実は片ツノなんだよねー」「なんで…」「君が男装するのと同じ理由だよ。魔族にとって、揃いのツノと大きさって、強さの象徴だったりするんだよね。強い者ほど、それはそれは立派な。……でも、私は、片ツノで産まれたんだ。魔王なのに、ね」「……」

羽印ぐぅ @hanegu

@waiwai1132 10)「あとは解るだろう？魔王なのに、貧弱なツノだ。魔王なのに片ツノだ、みっともない、ってね。力は魔王として備わってるのにねえ」「それでツノの偽装か」「まあ、ね。偽らないと、保てなかった」「そうか…」「えへへえ〜」「なんだいきなり気持ち悪りぃ」

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@waiwai1132 11)「だってさ、こんな話をするの、初めてなんだよね。しかも勇者に話すなんて、さ」「…俺も、初めてだっかもな。こんな話すんの。しかも魔王とか」「勇者君、友達少なそうだもんねえ」「テメエはまた切られたいんか！！」

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@waiwai1132 12)「わあやめてよー！初めての友達に刃を向けるのはー！」「うっせえバーカ！バーカ！」「あっ！解った！照れ隠しなんだね！もう！勇者君の照れ屋さん！」「だあー！！てめえはもう黙れー！！絶交すんぞー！」「あはははー！勇者君かわいー」「ぎぃー!!」 《完》

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勇者と魔王物語余談。 「ねーねー勇者君、毎回正門から来るの、メンドくない？」「面倒くせえよ。毎回あのトラップ解除すんのくそめんどくせえ。一回解いたらスルー出来るもんだろが！」「やあ、ラスダンでそれはないっしょ。だからさ、勇者君、裏口使う？早いよ」「……は？」

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勇者と魔王物語余談2 「裏口。あの迷路通らなくていいのがあるんだー」「…てめえー!!そーいうのは最初に言えやー!!何べん無駄足を踏んだと思ってんだゴルァーー！」「あー！ゴメンー！勇者君パズル苦手だったもんねえー！うわっ！ゴメンてー！白刃取りも私上手くなったなあー！」

羽印ぐぅ @hanegu

勇者と魔王物語余談3 「あ、ちなみにその裏口、私の私室に繋がってるから」「……ぅえ？」「ん？だって、その方がいいでしょ？秘密の取引なんだしさ」「いや…まあ、そうなんだが…勇者の俺が軽々しく入るのは…」

羽印ぐぅ @hanegu

勇者と魔王物語余談 (終 「勇者君、やっぱ案外堅いよねえ。あ、大丈夫だよ。勇者君が女の子だからって襲わな」「そんな心配なんざしてねえーよ!!!!そこまで言うなら行ってやらあー！！」「わあーい。また来るの待ってるぅー(勇者君、チョロすぎる可愛い)」

羽印ぐぅ @hanegu

突然始まる「世間体を気にする勇者と魔王の物語」26か27には完結予定。 「ねー勇者君、君、凄く髪短いけど伸ばさないの？」「伸ばすわけねーだろ。邪魔だし。そーいうテメエは凄え長えな」「まあねー。魔族の、特に魔王とかになると髪一本でも結構な魔力とかあるからさ。早々切ったりできないの」

羽印ぐぅ @hanegu

勇魔世間体物語② 「ふーん。魔王のその髪、色が薄いよな。白髪なのか？」「せめてシルバーと言って!!でも銀に近い金色だよ。魔法使うとぶわーって光るんだー」「へえ…。でもまあ、俺はそのままの色でもいいと思うが。綺麗だよな」「……！」「んだよ、ビックリしたみたいな顔して」