限定公開でまとめを作れば、相互フォローやフォロワー限定でまとめを共有できます!

『其(そ)は夜鳴き鶯』(旧題:『森の国の夜鳴き鶯』)

竹の子書房 黒実操の自主トレです。もりかさんの『捧げる花もなし姫』にインスパイアされてできたお話です。もりかさん、公表をご快諾いただきありがとうございます。
文学 電子書籍 書籍 幻想 竹の子書房 創作 小説
2145view 9コメント
1
クロミミ @kuromimigen
@ts_p 其(そ)は夜鳴き鶯。歌うは夜鳴き鶯。闇に響くは、二重唱。
クロミミ @kuromimigen
@ts_p 「夜鳴き鶯」口絵にお願いします。 http://goo.gl/3mlGa
クロミミ @kuromimigen
ts_p 時の彼方の、お話です。遠い遠い森の国に、夜の虹のように美しいお姫様がいました。お姫様は、そのお姿だけではなく、仕草もお声もお心根(こころね)もたいそう美しく、たくさんの国の王子達から求婚されておりました。しかしお姫様には、好き合った恋人がいたのです。
クロミミ @kuromimigen
ts_p その秘密を知っているのは、恋人と窓辺にやってくる夜鳴き鶯(うぐいす)だけ。恋人は王宮の馬上騎士(ばじょうきし)。王様が知ったなら、どんなにお怒りになるでしょう。「姫はまだ子供でございます」と求婚から逃れておりますが、王様は早くお姫様を嫁がせて国を大きくしたいのです。
クロミミ @kuromimigen
@ts_p それはこの国の民のためでもあります。王の娘に生まれた者の、果たさねばならない努めであります。お姫様は、友達の夜鳴き鶯に語りかけます。「あの人が好き。あの人も私を好いてくれている。この心を持ったまま、誰かのお嫁になるなんて、とても罪深いことだわ」。
クロミミ @kuromimigen
@ts_p 夜鳴き鶯は、しばらく小首を傾げておりましたが、やがていつものように嘴を震わせます。夜空の星々が流れ出ているかのような歌声に、お姫様もしばし憂いを忘れ、ともに歌うのでした。【その時】は突然に訪れました。夜鳴き鶯と共に歌うお姫様のもとに、女官が傅(かしず)いて言いました。
クロミミ @kuromimigen
@ts_p 「王様がお呼びでございます」。お姫様の結婚が決まったのです。「湖の国の王子のもとに嫁ぐがよい。今宵は早く休むのだ。明日、かの国より使者が参るのでな」。お姫様の知らぬところで、全ては決められておりました。
クロミミ @kuromimigen
@ts_p やっとの思いで部屋に戻ったお姫様は泣くこともできず、ただただ呆然と窓辺に立ち尽くすのみ。恋人がこのことを知るか否かも確かめられず、我が身を抱き寄せて深い溜息をつきました。夜鳴き鶯が飛んできましたが、お姫様は気付きません。身を震わせ嘆くのみ。どれほど時が過ぎたでしょう。
クロミミ @kuromimigen
@ts_p お姫様は森の木々の隙間から零れる、夜の闇に向けて祈りました。「私を助けて下さい。どうぞ、この罪深い私を救ってください」。夜鳴き鶯が大きく羽ばたきましたが、お姫様は気付きません。幾度も幾度も、同じ祈りを繰り返しました。どれだけ祈ったことでしょう。
クロミミ @kuromimigen
@ts_p 木々の隙間から零れる、夜の闇が大きく膨らんだかと思うと、昏(くら)い目をした、肌も髪も服も黒い、闇のように美しい女がお姫様の前に現れました。「お前を助けてやってもよいぞ」。含み笑いを堪えたような、傲慢な声音です。
クロミミ @kuromimigen
@ts_p 夜鳴き鶯が、かつてない調子外れの声で叫びましたが、お姫様は気付きません。黒い女は愉快そうにそれを見やりますが、すぐに真顔に戻りお姫様に顎をしゃくります。「お前の望みを口に出すがよい」。夜鳴き鶯は、さらに甲高く叫びましたがお姫様は気付きません。
クロミミ @kuromimigen
@ts_p 「あなたは仙女さまですか。それとも」。一心に縋る瞳で、黒い女を見つめます。「お前を助けようというのだぞ。この私が何であろうと、お前は助けを求めるしかないのだ。そうだろう」。問いかけるとともに、黒い女は姫君に笑いかけました。
クロミミ @kuromimigen
@ts_p 森の木々が身を捩(よじ)ったように見えたのは、気のせいでしょうか。「例え、私が、なんであれ」。「私を助けてください。どうぞ助けてください」。お姫様は、黒い女の前に身を投げ出しました。夜鳴き鶯は声を枯らし、枝から落ちましたが、お姫様は気付きません。
クロミミ @kuromimigen
@ts_p 「ならば問う。お前の望みはなんだ」。「はい。私の望みは、恋人を慕う心を胸に隠して、湖の国へ嫁ぐなどということは、とても罪深いと」。「待て待て、ごまかすな。それが本音か。お前の本当の心か。恋人への想いはどうする。恋人と添い遂げたくはないのか」。
クロミミ @kuromimigen
@ts_p 「私は王の娘として生まれました。縁談を断ることは、民のためにもできません」。「ならば恋人の心はどうなる。お前を恋い慕う心は、報われぬまま終われと言うのか」。可笑しさを隠そうともしない黒い女の言い様に、お姫様は唇を噛んで、長い間、堪えました。
クロミミ @kuromimigen
@ts_p そして、血を吐くような声で言いました。「あの人は私が嫁ぐことをご存知なのでしょうか」。黒い女は、我が意を得たりと言わんばかりに大きく頷き、「良い良い。やっと本音が出てきたな」。組んでいた腕をほどいて腰に当てると、三日月のように笑うのでした。
クロミミ @kuromimigen
@ts_p お姫様は内心、不快でした。黒い女にはそれが判っているのでしょう。いたぶるように言いました。「お前の恋人は、今この時、湖の国の使者を迎えて、城壁の外で最敬礼しておるわ。もちろんすべて承知の上。臣下の身で縁談に異を唱えるなど、到底出来ぬと歯を食いしばっておるぞ」
クロミミ @kuromimigen
@ts_p 「ああっ」頭を垂れたお姫様の、その華奢な指先が掌に握り込まれました。しばしの沈黙。それを破ったのは、黒い女のほうでした。「お前を助けてやろう。しかし残念なことに只とはいかない。高貴な身なれば知らぬかもしれぬが、パン一つ贖(あがな)うにも代償が要るのが世の常」
クロミミ @kuromimigen
@ts_p お姫様はその身を固くしました。「待て待て。なにも痛いことも怖いこともないぞ。ましてや金も宝石も要らぬ」夜鳴き鶯が、床の上でその羽を伸べましたが、お姫様は気付きません。
クロミミ @kuromimigen
@ts_pお前の、その身の美しさを貰い受けよう。どうせ湖の国の王子とやらは、音に聞こえたお前の美しさを頼りに求婚しておるのだ。それを無くしてしまえば、この縁談は無に還る。そうだろう?」黒い女の昏い瞳から、チッと火花が飛んだのは、何かの見間違いでしょうか。
クロミミ @kuromimigen
@ts_pもちろん貰い受けるのは、見目の美しさのみだ。お前のその姿形(すがたかたち)は、何ら変わることはない。王や恋人がお前を見誤ったりすることは、断じてないぞ。その声や立ち居振る舞いの美しさは、当然そのまま残る」
クロミミ @kuromimigen
@ts_p お姫様は、黒い女を真摯な目で見上げています。友達のことなど、眼中にありません。「それで、私は助かるのでしょうか」「請け合おう。湖の国の使者は、美しさを無くしたお前になど用はない」お姫様の瞳が揺れています。その耳は、黒い女の声の他に、何も聴こうとはしていません。
クロミミ @kuromimigen
@ts_p 「お前の縁談は立ち消える。美しさを無くしたお前に求婚する王子など、誰も現れぬ」ついに、お姫様は黒い女に平伏(ひれふ)しました。「私の美しさを差し上げます。どうぞ、どうぞ私を助けて下さい」
クロミミ @kuromimigen
@ts_p 夜鳴き鶯はお姫様の裳裾にまで這い寄っていましたが、あまりにも無力。お姫様の口から恐ろしい願いが迸ることを、とうとう止めることはできませんでした。お姫様の言葉が終わるのと同時に、黒い女が高らかに笑います。森の木々が仰け反り、ひとつ大きな雷鳴が轟きました。
残りを読む(76)

コメント

クロミミ @kuromimigen 2010-12-19 23:02:33
『森の国の夜鳴き鶯』第二回、トゥギャって資料概略にあげました!
クロミミ @kuromimigen 2010-12-22 00:17:45
『森の国の夜鳴き鶯』第三回、追加しました。
クロミミ @kuromimigen 2010-12-30 23:40:10
『森の国の夜鳴き鶯』第四回、追加しました。
クロミミ @kuromimigen 2010-12-31 01:54:52
『森の国の夜鳴き鶯』第五回、追加しました。
クロミミ @kuromimigen 2010-12-31 17:18:00
『森の国の夜鳴き鶯』第六回、追加しました。
クロミミ @kuromimigen 2010-12-31 23:31:38
『森の国の夜鳴き鶯』最終話まで、まとめました。
クロミミ @kuromimigen 2011-01-05 00:38:05
修正分と入れ替えました。
クロミミ @kuromimigen 2011-01-12 23:53:57
「森の国の夜鳴き鶯」(仮題)、完全版です。表紙と挿絵を募集いたします。どうぞよろしくお願いします。
クロミミ @kuromimigen 2011-02-21 23:15:55
@ts_p 「其(そ)は夜鳴き鶯」、口絵と挿絵を希望ページに入れ込みました。
ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする