マザーウィル泊地 #18 戦場の聖ニコラウス編

赤い奴。 白いものを背負っている。 きっと奴だ。
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Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

SoM泊地例年のクリスマス。 提督:一切の沈黙。 叢雲:宴の主催 その他艦娘:戦うか宴会。 #マザーウィル泊地

2014-12-24 07:08:38
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

XXXX年12月24日日本時間2200時頃。 セントニコラウスを補足した空母インヴィンシブル(一時貸与)による対空砲火。 #マザーウィル泊地 pic.twitter.com/qhVYH8sw2m

2014-12-24 11:38:12
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「サンタは実在するぞ」 サンタを信じる信じないを論ずる駆逐艦に、通りがかった准将が告げる。 駆逐艦は疑わしげに、戦艦は微笑ましくそれを見つめる。 「俺がまだ若い頃だ。ネクスト4機、VAC65機に囲まれた糞のような戦場で、空から赤い機体が救援に来てくれた」 #マザーウィル泊地

2014-12-25 03:27:35
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戦艦共の微笑みに翳りが生まれる。 「そいつは、白いブースタユニットからミサイルを素敵なプレゼントをバラ撒いてリンクスもミグラントも蹴散らして、俺達に生きて帰る権利をくれた」 「それって、ナイン……」 島風の口を大和がふさぐ。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 03:34:46
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駆逐艦の殆どはそれを信じたようで目を輝かせ、そもそも准将がそれを信じている。あの目は間違いない。 下手に水を差すよりはいいと、島風に目で告げる。硬い胸に挟まれた島風はその意を汲み、もがくのをやめた。 「良い子にしていたらクリスマスに援軍が来るぞ!」 #マザーウィル泊地

2014-12-25 03:38:59
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

どうしてそうなる。 クリスマスに赤い機体が助けに来てくれる、などという迷信が広まることを、大和は危惧していた。来なかった場合の士気低下、援軍を期待しての無謀な作戦、それらはこの純真な子らを死なせてしまいかねない。 夢は見せてやりたい、しかし現実は非情だ。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 03:45:10
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提督は役に立たない。ならばと、叢雲に通信を試みる。食堂の叢雲とは親しいが、司令代行とは険悪とは言わないまでも苦手としていた。しかしそうも言っていられない。 『大丈夫よ。司令はアンタが思ってるほど無能じゃないわ』 不安が膨れ上がる回答だった。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 03:49:16
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駆逐艦が「良い子試し」と艦隊を組み出撃してゆく。止める暇もない。型も装備もバラバラで、数は力とばかりに戦艦を引きずってゆくのだ。 残った大和は島風と神通、現実主義者の初風と文月と望月を連れて追いかけることとした。神通が余裕そうにしているのが気になったが。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 03:55:20
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案の定、そこかしこで大破した艦隊がいた。大和の艦隊が撤退支援を行う。 奇妙なのは神通だった。普段であれば、その穏やかな顔を凶悪に歪ませ、最前線へと突撃する狂艦なのだが、まるで何かを待っているように艦隊行動を続けていた。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 04:00:48
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いつでも沈められる、反撃さえままならない雑魚はどうでもいいと、敵は撤退支援を行う艦に目標を切り替えたようだ。 中でも目立つ大和は集中して攻撃を受ける。初風、島風、文月、望月は機関を損傷した霧島を曳航しているため、目標から外れている。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 06:15:27
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

「神通さん、離れてください!」 「嫌です」 舌打ちをしそうになった。一体何を考えているのか判らない。 敵艦隊はほぼ無傷のまま、こちらを包囲しようとしている。大和は囮となり、味方艦隊を逃がすつもりだった。大和型は頑堅極まりない。そうそう沈みはしない、と。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 06:35:14
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

「旗艦としての命令です!」 「駄目です」 何故。命令に反してまで。 提督ほどの絶対性はないとはいえ、旗艦命令に反する艦娘は少ない。余程自信のある名案でもなければ。 「私達は目印なんですよ」 敵戦艦の砲弾を手の甲の単装砲で弾くという狂気の所業を見せつけられる。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 08:11:05
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

「目印?一体何のです!?」 「サンタさんの、素敵なプレゼントの、ですよ」 この泊地の艦娘は誰も彼も狂っている。そう思っていた。この神通も遂に来るところまで来てしまったか。そう、大和が思った時だった。 敵砲弾が見えた。偶然だ。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 08:18:22
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

それは神通の後頭部に向かう放物線を描いていた。 大和は己が何かを叫んでいるのは理解したが、何を言っているのかはわからなかった。イカれていても僚艦、もう、喪うのは嫌だ。 神通は動かない。ふと、敵さえも忘れたように空を見上げた。 「来ました」 #マザーウィル泊地

2014-12-25 08:22:31
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

紫、桜色、白。どう言えばいいのかわからない。奇妙な色の光が、まっすぐと神通に当たるべきだった砲弾をなぎ払い、それは爆散した。 「セント・ニコラウスの増援ですよ。こんな特等席で見れることなんて滅多にありませんから」 やっと大和にも見えた。垂直に落ちてくる赤が。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 08:29:55
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

提督の執務室で見た青焼きに、あれとよく似たものが描かれていたのを思い出す。 続いて、耳慣れたターボファンの音がだんだんと高くなってくる。敵駆逐艦が弾けた。遅れて届く獣の如き咆哮、たかだか30mmだというのに敵艦を屠るあの息吹。 「提督…………?」 #マザーウィル泊地

2014-12-25 08:52:19
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

深海棲艦相手にジェット機は対費用効果に見合わない。そう言って頑なに出さなかったA-10が、自由気ままに飛び回っていた。真っ赤に染められ、エンジンナセルだけ純白の機体がどこか可笑しくて笑ってしまった。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 09:10:27
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

零戦とそう変わらない速度で、対空砲に撃たれながら急降下爆撃を敢行する。勿体無いからと誘導爆弾を積まない提督の悪い癖だ。そういう期待じゃないし想定されてないわよ、と叢雲が言っていたのが思い出された。 最後に来たのは、StukaのD型だった。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 10:02:53
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

空を覆い尽くさんとせんばかりの数。茶色と、真っ赤なスピナ。ご自慢の鉄十字と鉤十字は見当たらなかった。 「皆で一斉に急降下爆撃をしたから、でしたか?私、提督から聞いて常々思っていたんです。きっと素晴らしい光景だと」 #マザーウィル泊地

2014-12-25 10:10:18
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

先ほどまで、私達は敗走していた。それを感じさせないほど穏やかな口調で神通が告げた。 耳をふさぎたくなるほどのやかましいサイレンが、1000kg爆弾の風をきる音が、そして、二人を中心に綺麗に半円を描く爆炎が、神通と大和の心を震わせる。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 10:20:24
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

主力を完全に焼き尽くされた敵艦隊は撤退を開始し始めた。それを許すほど優しい二人ではない。 「残存敵勢力を沈めます。今度は文句はありませんね?」 「サンタさんが開いた勝利への門戸です。行かないわけにはいきませんよ」 返って来たのはいつもの、狂艦神通の笑みだった。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 11:22:26
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

「散々だったわね」 「ろくでもなかったのです」 「サンタさん、来なかったね」 「司令に怒られる……」 真っ先に飛び出した温泉兵器共がぼやいていた。これを叱るのは大和の仕事ではない。このグレキチ共は提督か叢雲でなければ手に負えないからだ。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 11:33:51
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

柱島に帰還し、大和がまずするのは戦闘報告を読むことだった。 信賞必罰。提督が泊地整備に赴き、叢雲は内地へ。大和は、この巨大な艦隊の一部を任せられていた。比較的自由な裁量が与えられているとはいえ、今回は罰が多い。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 12:08:22
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

「艦隊規模で赤字……」 「駆逐艦に戦艦が殆ど大破しましたからね……」 提督を真似、神通を秘書として業務を行うも、頭は痛くなる一方。 割り当てられた船渠は駆逐艦の列ができており、戦艦は未だに半裸である。 #マザーウィル泊地

2014-12-25 12:29:44
Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

頭を悩ませていると、准将が部屋に入ってくる。二人は揃って准将を睨んだ。 「おー、おっかない」 「筋違いだとは思いますが。余計なことを話してくれましたね」 「お陰で大赤字です」 「そうか。ここの連中は血の気が多いからな」 #マザーウィル泊地

2014-12-25 15:25:59