『フューリー』を観てきました

先日観に行った『フューリー』の感想文です。いささかとっ散らかった文ですが、もしよろしければご笑覧ください。
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HK15 @hardboiledski45

『フューリー』を観てきました

2014-12-24 23:16:14
HK15 @hardboiledski45

暴力の極致としての戦争、その容赦なさを冷徹に描いた135分、とにかく圧巻の一言ですし、デヴィッド・エアー監督のバイオレンスに対する真摯な姿勢に心打たれました #フューリー

2014-12-24 23:23:48
HK15 @hardboiledski45

絶え間ない暴力と恐怖に晒されたがゆえに、どうしようもなく変わり果ててしまった人間の悲しみ。死をもってしかその頚木からは逃れえぬという絶望。そのおぞましさ、恐ろしさはもはやホラーといっていいほどです #フューリー

2014-12-24 23:30:25
HK15 @hardboiledski45

考えてみれば、エアー監督は一貫して暴力のおぞましさ、醜悪さを描き続けてきた作家であり、その姿勢は近作『サボタージュ』においても明らかでした。その眼差しが戦争という対象に向けられたとき、いかなる結果がもたらされるかは半ば予期されるべきものだったでしょう #フューリー

2014-12-24 23:34:17
HK15 @hardboiledski45

一貫して「暴力によって結び付けられた小集団」を描いてきたエアー監督ですが、本作においては一台の戦車に乗り組むタンククルーたちがそれに当たります。そのボスがB.ピット演じるドン・《ウォーダディー》・コリアー軍曹です #フューリー

2014-12-24 23:41:16
HK15 @hardboiledski45

本作はウォーダディーと、死んだ副操縦士の代わりとしてやってきた補充兵のノーマンとの関係を軸に展開します。この両者の関係はエアー監督が脚本をつとめた『トレーニング デイ』を思い出させるところがありますね #フューリー

2014-12-24 23:43:25
HK15 @hardboiledski45

まだ少年めいたあどけなさの残るノーマンに対し、ウォーダディーは戦車を指差しこう言い放ちます――「ここがお前の家だ」。そして、兵士としてはあまりに頼りなさげなノーマンを一丁前の戦車兵にしようと過酷な試練を与えるわけです #フューリー

2014-12-24 23:47:53
HK15 @hardboiledski45

ウォーダディー配下の兵たちは、皆一癖も二癖もありそうな連中ばかり。しかし、ウォーダディーへの忠誠心はゆるぎないものがあります。彼らは戦車という「家」の下で、多くの苦楽をともにしてきた「家族」なのですね #フューリー

2014-12-24 23:49:55
HK15 @hardboiledski45

この物語はつまり、「家族」の物語であるともいえます。多くの罪、多くの傷で結びつけられた「家族」。そのつながりは、もしかすると血より濃いものかも知れません。そこに転がり込んできたノーマンは「家族」の一員になるべく、過酷な試練を与えられるわけです #フューリー

2014-12-24 23:52:40
HK15 @hardboiledski45

印象的なのは、投降してきたドイツ兵を射殺させるシーンです。右も左も分からぬ新兵に「戦場の法」を刻み込む恐るべき儀式――極限状況においては法も正義も意味を持たない、ただ守るべきは「家族」のみという規律を、ウォーダディーはノーマンに叩き込みます #フューリー

2014-12-25 00:01:32
HK15 @hardboiledski45

「戦場に正義などない」という言葉。それがいかなるものであるか、エアー監督はひたすら即物的に描き出します。暴力こそが法であり規範である世界のおぞましさを。そのおぞましさ、哀しさにはただ息を呑むしかありません #フューリー

2014-12-25 00:06:49
HK15 @hardboiledski45

いともあっけらかんと死んでいく兵士たち。その描写はとても即物的です。「ヒトラーの電動鋸」ことMG42に撃たれた兵士の脚が文字通りにぶった切られるシーンなど、一周回ってコメディめいてすら見えます #フューリー

2014-12-25 00:13:02
HK15 @hardboiledski45

頑丈な装甲に守られ、強力な武装を備えたシャーマン戦車といえども無敵ではありません。だいたい、冒頭にしてからが、独軍の頑強な抵抗に遭った米軍戦車部隊が壊滅し、ウォーダディーたちの戦車だけが生き残るという劇的なものです #フューリー

2014-12-25 00:16:44
HK15 @hardboiledski45

ティーガー戦車との戦いが象徴的ですが、一度やられてしまえば戦車はそのまま鉄の棺桶、そして火葬場にすらなってしまうのです。そんな究極的状況下において、ノーマンの人間性は急速に揮発していきます #フューリー

2014-12-25 00:25:03
HK15 @hardboiledski45

ついこのあいだまで、タイピストとしての訓練を受けていたような青年が、見る見るうちに非情な兵士に変貌していくのです。「人間の持つ無限の可能性」という言葉、その裏側に隠れた恐るべき含意を読み取らずにはいられません #フューリー

2014-12-25 00:28:26
HK15 @hardboiledski45

ですが、もっとも恐ろしいことは、斯様に苛烈な試練を潜り抜けてきたウォーダディーたちが、未だに人間的な優しさや感傷をなくしきっていないということなのです。彼らもかつては普通の人間でしかなかったということが、この物語をどうしようもなく悲痛なものにしています #フューリー

2014-12-25 00:31:30
HK15 @hardboiledski45

戦争という極限状況を生き延びるために、人間性を犠牲にしたはずにも関わらず、彼らはどうしようもなく人間でしかないのです。そして、それゆえに、彼らにはもはや戦場しか居場所がないのです #フューリー

2014-12-25 00:33:23
HK15 @hardboiledski45

もはや《フューリー》の行き先には破滅しかないわけです。このお先真っ暗感はノワール的ですらありますが、もともとノワールを得意としていたエアー監督ですから、これは当然のことではあるでしょう #フューリー

2014-12-25 00:41:03
HK15 @hardboiledski45

終盤のウォーダディーの行動がいかにもとってつけたようだ、という意見を目にしたことがありますが、物語における《フューリー》の破滅はすでに約束されていたのです。「家族」の一員、副操縦士のレッドが死んだときから。 #フューリー

2014-12-25 00:46:22
HK15 @hardboiledski45

ウォーダディーと彼の「家族」は一心同体に戦い続けてきました。そしてこれまでは誰一人欠けなかった。しかし、ついにそのジンクスが破られたとき、死神は静かに鋼鉄の巨獣の傍らに立ったのです。そして彼らはその運命にとらわれてしまったのです #フューリー

2014-12-25 00:48:31
HK15 @hardboiledski45

ウォーダディーは自分でも気づかぬうちに死神の微笑みに魅入られてしまったのでしょう。そして彼の「家族」も。ノーマンが生き残ったのは、彼が完全に「家族」になりきってはいなかった、ということの証左にも思えます #フューリー

2014-12-25 00:51:52
HK15 @hardboiledski45

しかし――生存したノーマンにしても、彼の魂の一部は死んでしまったわけです。「家族」とともに。結局、誰一人として「生存者」はいなかった、というのが『フューリー』の決着ではなかったかと思います #フューリー

2014-12-25 00:54:36
HK15 @hardboiledski45

「ねじれたキューでゲームを始め、あまりにも多くを望んで、あまりにわずかしか得られず、よかれと思って、大きな悪を為す者たち。おれたち人間」(ジム・トンプスン『おれの中の殺し屋』)という言葉が、《フューリー》のクルーたちにはしっくりきますね

2014-12-25 01:02:41
HK15 @hardboiledski45

インタビューにおいて「リアリティを追求した」と述べたエアー監督ですが、そのリアリティとはすなわち「兵士が兵士であるということ」をどのように描くか、ということではなかったかと思います #フューリー

2014-12-25 01:10:23
HK15 @hardboiledski45

そしてまた、WW2とは「ごく普通の人間が兵士になることを求められた」戦争だったということを考え合わせると、言い知れぬ苦味が口の中に広がるように思えるのです #フューリー

2014-12-25 01:14:38