現役記者が語る、マスコミ受験

朝日新聞社の記者である抜井規泰さん(@nezumi32)が、マスコミ受験について自身の経験を踏まえながらアドバイスをしています。
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抜井規泰 @nezumi32

①)新聞やテレビの報道各社の入社試験は、作文・小論文のウエートが非常に高いです。僕が受験したころは、各社おおむね、一般教養が2時間で200点満点、英語が1時間で100点満点、作文・小論文が1時間で200点満点でした。時間当たりのウエートは作文・小論文が他の2倍、重視されています。

2014-12-09 10:06:47
抜井規泰 @nezumi32

②)受験対策をどうするか。英語は、大学で単位が取れるレベルなら何とかなります。一般教養は「カントの三批判書を列記せよ」みたいな教養問題ではなく時事問題なので、新聞を読んでいれば問題ないです。だいたい5択なので、分からない問題でも5問に1問は正解できます。問題は、作文・小論文です。

2014-12-09 10:07:14
抜井規泰 @nezumi32

③)僕がマスコミ受験をしたころは、この作文・小論文の対策がポイントだ、と言われていました。 ところで、当時はネットなどまるで普及しておらず、マスコミ受験の最新情報は、クチコミが頼りでした。どこのアナウンス職の募集は何日からだ、とか。面接はどんな雰囲気で、何回行われる、とか。

2014-12-09 10:07:44
抜井規泰 @nezumi32

④)これを、いかに入手できるかも、ひとつの戦いでした。 いま、真剣にマスコミ就職を考えている人が、いまから僕が書く話を読んだら、きっと笑いますよ。 当時、創出版が「マスコミ就職読本」を毎年出していました。僕ら学生は「創出版こそマスコミ就職情報の集約所」みたいに思っていました。で、

2014-12-09 10:08:02
抜井規泰 @nezumi32

⑤)でも本の情報だけでは足りません。本に書いてあるのは去年の話だったり、全般的な話だったり。NHKのセミナーはいつ募集が始まるといった話は、載っていない。考えてもみてください。ネットもメールもない時代です。その会社がいつから採用を始めるか、どんな試験かを調べるのは、苦労しました。

2014-12-09 10:08:19
抜井規泰 @nezumi32

⑥)その会社に電話をすれば教えてもらえる、ってなもんでもありません。何万の学生の問い合わせに、懇切丁寧に応じてなどくれない時代でした。でも、そんな時代にはそんな時代の、面白い商売がありまして。登録してお金を払うと、毎週の最新情報を手紙で(!)教えてくれるサービスがあったんです。

2014-12-09 10:08:58
抜井規泰 @nezumi32

⑦)当時、封書1通62円でした。たしか、1通200円くらい払ったのかなあ。A4だかB5の紙何枚かにびっしりと、どこのマスコミは何日から募集が始まり、試験はいつで、と。そのサービスを誰から教えてもらったのか、どうやってお金を払ったか、全く覚えていないんですが、そんなのがありましたw

2014-12-09 10:09:18
抜井規泰 @nezumi32

⑧)「手紙情報」のほとんどは、すでに知っている話でしたが、なんか、こう、最新! って感じの高揚感がありましたね。手書きでしたしw ネット社会のいま、信じられない話でしょうがww で、その手の情報に強い大学と弱い大学がありまして。早稲田は、ものすごく強いんです。どのくらい強いって、

2014-12-09 10:10:30
抜井規泰 @nezumi32

⑨)どのくらい強いって、築地の朝日新聞だろうが、大手町の読売新聞だろうが、渋谷のNHKだろうが、赤坂のTBSだろうが、汐留の電通だろうが。会社の中で石を投げれば、だいたい早大出に当たります。 こういう大学なら、学内にマスコミ就職情報があふれているので、苦労しないんです。ところが、

2014-12-09 10:11:14
抜井規泰 @nezumi32

⑩)僕の出身大学は、同級生の大多数が法曹か公務員志望で、マスコミを目指すヤツなんて、まず、いませんでした。こういう大学でしたから、情報がない。だから、あんな「手書きコピーの封書情報」を何百円かで買っていたんだろうなあw で、話を戻しまして。 マスコミ就職は、作文・小論文が肝です。

2014-12-09 10:11:35
抜井規泰 @nezumi32

10ー3)12月9日に書きはじめて止まっていた、マスコミ受験について。前回までは、小論文対策が大切だ、という話をしました。その続きです。

2014-12-28 12:33:39
抜井規泰 @nezumi32

11)マスコミ受験では、英語や一般教養に比べると、作文・小論文のウエイトが非常に高いです。その作文・小論文は、社によって出題傾向がまるで違います。現在の傾向は詳しく知りませんが、僕が受験したころは、出版社は「三題噺」でした。落語の芸の一つなんですが、どういうことかといいますと…

2014-12-28 12:34:06
抜井規泰 @nezumi32

12)三題噺というのは、まるで関連性のないキーワードを3つ与えられ、それらがすべて入った一つのストーリーを作っていく、というものです。例えば、「電車」「土俵」「リーゼント」みたいな。このすべてのキーワードが盛り込まれた、一つのストーリーを書く。これが、大多数の出版社の試験でした。

2014-12-28 12:34:34
抜井規泰 @nezumi32

13)当時思っていたのは、出版社というのは事実に基づいてリポートする力よりも、与えられたテーマで面白おかしい話を創作できる能力を求めているのかな、と。そうじゃないのかもしれませんが、出題傾向からそう感じ、僕のやりたいこととは違うと思い、出版社は一社も受験しませんでした。

2014-12-28 12:35:00
抜井規泰 @nezumi32

14)報道志望だとNHKと新聞を中心に受験することになります。民放は採用人数が少ないので、「ダメ元で、ついでに受ける」という感覚でした。とはいえ、NHKと朝日新聞と読売新聞では、小論文の出題傾向がまるで違いました。NHKは毎年、漢字一文字が課題でした。「面」とか「波」とか。

2014-12-28 12:35:33
抜井規泰 @nezumi32

15)NHKの試験は、何でも書けるけれど、何を書けばいいのか途方にくれる、みたいな課題でした。記者職だけでなく、制作や営業も採用する試験なので、文章力以外に感性なども見る課題設定なのかもしれません。読売新聞は、もっと限定的な課題でした。僕が受験した時の課題は「日本国憲法」でした。

2014-12-28 12:36:05
抜井規泰 @nezumi32

16)読売新聞は、この直前に読売独自の憲法改正試案を発表していたので、記者志望者にもそれを問うたのかもしれません。朝日新聞は、読売よりさらに絞った課題を出題します。僕が受験した時の課題は「君たちの親の世代は働きすぎか」。前年は「バブルはなぜ起き、なぜ弾けたか」という課題でした。

2014-12-28 12:36:31
抜井規泰 @nezumi32

17)社によってここまで異なる作文・小論文のテストなんですが、対策は一つしかありません。とにかく何十本も書くことです。僕が記者志望を固めたのは、大学3年の秋でした。マスコミ就職の本を読んだり、来春の就職が内定している先輩から話を聞いたりして、数を書かなきゃダメだな、と焦りました。

2014-12-28 12:36:58
抜井規泰 @nezumi32

18)とはいえ、規定時間で何かの課題で文章を書いたことなんてないし、たとえ何かを書き上げても、それがいいのか悪いのか、どう優れているのか、劣っているのか、自分では判断できません。そこで、マスコミ受験の予備校に通いました。いま思えば、ここが、人生で3回あるチャンスの1回目でした。

2014-12-28 12:37:34
抜井規泰 @nezumi32

19)その「人生で3度あるチャンスの1回目」については後述しますが、その前に、このマスコミ受験予備校について。要するに、マスコミ受験の模擬試験を受ける塾です。英語、一般教養、小論文。規定時間で受け、成績は翌週渡される。試験の後は、一般教養と小論文の講義がありました。

2014-12-28 12:38:07
抜井規泰 @nezumi32

20)先日の連投でも書きましたが、英語は、中堅大学に合格するレベルであれば、何とかなります。一般教養も、新聞を毎日読んでいれば大丈夫です。問題は、最も配点の高い、作文・小論文です。いまでも覚えているんですが、僕が記者を志望して最初に与えられた作文テーマは、「私の中学時代」でした。

2014-12-28 12:38:30
抜井規泰 @nezumi32

21)その作文テスト。実は、僕は、何も書けなかったんです。何か書こうとして、書き始める。でも、まとまりがつかなくなってしまう。そこで、消しゴムで消して、書き直す。今度は、どう着地させていいのか分からなくなってしまう。また消して書き直す。何度目かの書き直しで、作文用紙が破れました。

2014-12-28 12:38:50
抜井規泰 @nezumi32

22)かっこいいことを書きたいとか、きをてらったことを書きたいとか、そういう自己顕示欲で、筆がコチコチになっていました。最後は、もう何も書けなくなってしまいました。当時の僕と、いま大学3年の記者志望の方とを比べたら、いまの学生さんの方がはるかに、文章を書き慣れていると思います。

2014-12-28 12:45:32
抜井規泰 @nezumi32

23)というのも、いまの学生さんは、ラインやツイッターなどを介して、文章を書き慣れていますからね。僕の学生時代は、携帯電話はおろか、パソコンすらない時代です。卒論やゼミ論でワープロを触るくらいで、不特定多数の方に自分の考えを文章で伝える機会など、絶無でした。

2014-12-28 12:45:53
抜井規泰 @nezumi32

24)いまの学生さんたちは、ツイッターやネットの掲示板などで、自分の考えを世間に示すことに慣れていらっしゃる。だから、僕の学生時代とは比べものにならないほどのスキルをお持ちだと思います。 でも、ですねえ。でも、マスコミ受験の作文・小論文は、一筋縄ではいかないんです。

2014-12-28 12:46:22