『血の繋がったぷっちんプリン』

何だか、血の繋がった○○っていうのがはやってるらしいので。
10
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

此処で一つ、血の繋がったぷっちんプリンとかで行ってみよう。

2015-01-04 01:37:11
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

僕には血の繋がったぷっちんプリンがいる。ボクが物心ついたころから、ぷっちんプリンは冷蔵庫の中に居て、その小さな容器の中で姿勢よく収まっていた。ボクが毎朝、寝癖を直すように、水平にカラメルを整えて、ボクが食卓でママのご飯を待ってると、たまに冷蔵庫の扉を開けて会話してくれた。

2015-01-04 01:39:11
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

ぷっりんプリンはお尻の所に突起があって、ボクがいつも指摘するとこれは大切なものなんだと言って、触らせてくれなかった。でもボクはどうしても気になって……皆が寝静まった夜、冷蔵庫の扉を開いてしまった。ぷっりんプリンはすやすやと寝ていて、簡単に抱えてあげることが出来た。

2015-01-04 01:41:31
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

ボクはぷっちんプリンが窮屈そうに寝返りを打つのを見届けると、そっと布団をテーブルの上に敷き直して上げた。そしてぷっちんプリンが触らせてくれなかった突起に指を添え、ボクはそっとへし折った。何かが壊れる音がして、それが何の音か分からなくて、気づいた時には手の中の重みが無くなっていた。

2015-01-04 01:44:23
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

気づけばぷっちんプリンはボクの手の中、ぷっちんプリンがずっと姿勢よく収まっていた器から滑り落ち、ボクが敷いてあげた白い布団めがけて落ちていった。衝突する寸前、カラメルの輝きが増して、ぷっちんプリンが目を覚ましたことにボクは気づく。ぷっちんプリンはボクを見て、仕方無そうに笑った。

2015-01-04 01:46:16
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

ぷっちんプリンは布団の上で砕け散った、ずっとボクを見守ってくれていた綺麗な台形のぷっちんプリンは無残に砕け散り、ふるふると震え……そして止まった。ぷっちんプリンをかき集めて器に戻しても、ぷっちんプリンはもう息をしていなかった。ボクが追ってしまった突起の部分からカラメルが零れる。

2015-01-04 01:48:17
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

ボクはその時悟った。血の繋がったぷっちんプリンをボクが殺してしまったということを。ボクのことを弟として可愛がってくれて、いつも冷蔵庫から見守ってくれていたぷっちんプリンを。言いつけを護らず、興味本位で動いて、ボクはかけがえのない家族を失ってしまったんだ。ボクはその時泣いていた。

2015-01-04 01:50:32
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

血の繋がったぷっちんプリンは、何故あの時笑っていたんだろう。ボクを恨んで当たり前だろうに、死ぬのが怖くなかったんだろうか。ぷっちんプリンの最後の笑顔が脳裏に焼き付いていて、砕け散ったぷっちんプリンの姿を直視できなくて。ボクの泣き声に気づき、降りてきた両親の腕の中で泣き続けた。

2015-01-04 01:55:34
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

あれから20年――ボクはようやっとあの時のぷっちんプリンの気持ちが分かった気がした。伴侶となってくれた女性の腕に抱かれ、眠るボクの赤ん坊を見て、ようやくボクは分かった気がする。ボクに取ってのかけがえのないぷっちんプリンの様に、この子にとってのかけがえのないボクになれるだろうか。

2015-01-04 01:58:04
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

早くお家に帰ろう。ボクと、妻と、君と――ぷっちんプリンで暮らす、あのお家に。 『血の繋がったぷっちんプリン』

2015-01-04 01:59:33
ヒソヒソらっこ。 @Rakko1984

殺人の罪に問われないことを悔やみ続けたボクの青春時代とか、気になりますね。多分、自分を裁く方法を求めて法学部とかに行っていたんだと思う。

2015-01-04 02:10:20