艦娘特有の疾患とかあったら面白いのにな。 主症状は ・艦娘としての能力の消失(武器が装備・操縦できなくなる) ・艦の記憶を失う(悪化すると自分の名前すら分からなくなる) ・燃料や弾薬などの特殊な食事を受け付けなくなる ・海水に異様な執着を示し、海での入水自殺を試みるようになる
2015-01-08 20:56:33@picca009 この疾患は原因不明で、激しい戦闘からの帰投後に好発することが確認されている。 戦歴や練度、艦種を問わず発症するリスクがある。現時点では有効な治療法はなく、多くの例では解体処分とされることが多い。稀に回復例も報告されているが、今だその機序は不明。
2015-01-08 20:58:56@picca009 ケッコン済みの艦娘が発症した場合、解体処分にされず鎮守府内で療養されることもある。しかし症状が進行し名前が言えなくなる段階まで悪化すると、窓から飛び降りる・窓を破壊するなどして海へ行こうとするため、出入り口は厳重に戸締りする必要がある。
2015-01-08 21:01:26@picca009 とある症例では海岸のすぐそばに療養室を設け、室内に海水を引いた。この例では海水の隣接により症状の進行が緩和されたが、艦娘がある晩跡形もなく消え、療養室の床は海水で水浸しだった、と報告されている。
2015-01-08 21:04:18@picca009 海水を飲ませることで治療を試みた例では、患者は海水を好んで飲むようになるが、その度に肌の色が青白く、そして半透明になっていったと報告されている。
2015-01-08 21:12:21自分の名前も言えないまま「うみにかえして」しか言わない艦娘とか良くないですか。窓の外を見ながら「よんでる」とだけ言って両手を血まみれにしながら窓を叩き割って指輪を投げ捨てて海に飛び込むとか。
2015-01-08 21:05:34症状が悪化し、話す言葉も随分少なくなってしまった翔鶴。指輪をつけた左手は、もう随分と透明になってしまって、いまでは向こう側が透けて見えるほどだ。「翔鶴」と彼女の名を呼びかけながら髪を梳いても、一向にこちらに振り向くことはない。ただ静かに窓の外の海を見つめ、薄く微笑むばかりだ。
2015-01-08 21:18:40@picca009 もはや輪郭だけになった彼女の指先に触れる。それは水底のように冷え切っていた。その手を持ちあげ光にかざすと、指先は水面のように静かに輝いた。けれど、それでも彼女は振り返らない。透明な手のひら越しに、彼女の微笑む横顔が見えた。
2015-01-08 21:23:59@picca009 ケッコンを済ませた翌日の出撃で、彼女は大破した。帰投後もひどい高熱が何日も続き、熱が引いた頃には、今のような状態になっていた。
2015-01-08 21:25:01那珂ちゃんが仮にこういう症状を発したとして、椅子に腰かけながらお気に入りだった曲を口ずさみながらつま先でリズムを刻んでるんだよきっと 虚ろな目で
2015-01-08 21:21:02@tktn1984 すみません、妹がこんな状態で――― そう語りながら、神通は淡々と彼女の世話を続ける。 ここはとある鎮守府内に設置された長期入渠ドッグだ。入渠ドッグ、とは聞こえが良いものの、未だに名がつけられない不治の病を発症した艦むす達の実質最期の時を迎える場所である。
2015-01-08 21:32:54@tktn1984 神通はただ作業のように、もうだいぶ薄く透けるようになった那珂の身体を丁寧にぬぐっていく。彼女らの間に会話は無い。この場には那珂が囁くように歌う楽しげな声と、床を叩くつま先のコツコツとした硬質な音だけが響く。
2015-01-08 21:42:02@tktn1984 もうそろそろ妹も海に還るようですね、と力なく笑った神通がこちらを振り返る。姉も海に還しましたから、その時は那珂と一緒に最期までお世話していたんですけどね、と続けるとまた那珂に向き直り、桶の中の海水を捨て新しい海水で妹の身体を清め始めた。
2015-01-08 21:46:45@tktn1984 解体予定日が決まったんです、だから提督にお頼みして、こうして最期のお世話を…知ってますよ、こういう事をしても妹はなンにも分からないんだって、無駄なんだって… 語る神通の肩が震えているのが見える。 #艦娘奇病録
2015-01-08 21:58:12「でも妹のことですから…ほら、あの子なんでも散らかしっぱなしにしたりしますしね、私が最期まで面倒みなきゃ…って」
2015-01-08 22:06:02「なあおい、嘘だろ?!龍田が、そんな——」 「天龍。これは事実だ。受け入れてくれ」 「なあ龍田、お前、疲れてるだけだよな?また一緒に出撃しよう。そしたらきっと、前みたいに」 「……。」 (また肌の色が薄くなってる……俺の声にも反応しなくなってきた......) #艦娘奇病録
2015-01-08 21:47:17@picca009 「提督!見てくれよ。龍田がさ、随分顔色がよくなったんだ。ほら、もう指先も透けてないだろ?」 「……天龍」 「本当だって!この間なんか俺の名前呼んだんだぞ!」 「天龍、いいかげんにしろ」 「龍田はもうすぐ治るよ、だから解体の予定を——」
2015-01-08 21:49:33@picca009 提督はいきなり、龍田の顔めがけて花瓶の水をぶちまけた。どろり、と肌の色が崩れる。厚く塗り重ねた白粉と紅が流れ落ちて、透明な頬が現れた。ずぶ濡れになった龍田は、それでも静かに微笑んだままだ。
2015-01-08 21:52:05窓の向こうでは、月が水面を照らしている。 扶桑は静かにベッドから立ち上がると、すっかり透明になった拳で、窓を叩き始めた。 「姉様?どうしたの?外に行きたいの?」 山城が尋ねる、しかし、扶桑は一向にやめようとしない。 「姉様、いけません、海へ行ったら……」 #艦娘奇病録
2015-01-08 21:56:33@picca009 「でも、姉様がそれを望むなら……山城、ご一緒します」 山城は扶桑の手をとり、部屋の外へと連れだした。月の光を浴びて、波は白く輝いていた。足元のコンクリートに波が打ち付ける。 「姉様、さあ」 山城は扶桑を抱きしめると、共に海の中へと倒れこんだ。
2015-01-08 22:01:46「赤城さんは、いつからあんなふうに」 「三日前だ。先週の出撃から様子がおかしかったんだが、まさかこの厳しい戦況の最中でアレを発症するとは……」 「提督、あの病気の治療方法は」 「無い、と言われている。進行を止める方法しかわかっていない」 「そう……」 #艦娘奇病録
2015-01-08 22:06:56@picca009 「加賀。済まないが、しばらくの間赤城の面倒を見てくれるか」 「でも、治らないのでしょう」 「ああ」 「一度これにかかると、解体してしまう提督も居るそうですね」 「そういう噂もあるな」
2015-01-08 22:10:05@picca009 「なら、解体してください。一航戦の誇りを失った彼女を、このまま永らえさせるのは、あまりに酷です」 「加賀、お前、本気で言っているのか」 「私は本気です。あのときにも雷撃処分を望んだ彼女です。彼女なら、きっとそれを望むでしょう」
2015-01-08 22:12:41