「アロング・ウィズ・ザ・スメル・オブ・ガン・スモーク」

新年早々、咆哮系提督はブイン基地への輸送作戦に従事していた。輸送航路に戦艦級が出没するという噂があり・・・? (ロダンさん着任祝い)
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「アロング・ウィズ・ザ・スメル・オブ・ガン・スモーク」

Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

◆与太話◇ ◆望まぬならミュート推奨◇

2015-01-11 17:51:08
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「アロング・ウィズ・ザ・スメル・オブ・ガン・スモーク」

2015-01-11 17:51:55
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ウウ・・・」男は呻き声を上げた。強烈な光が瞼に閉ざされた眼球を刺激したからだ。目を開ければ、光を放つ複数の球体が整然と一列に並んでいた。そして己を囲む青い服を着た複数の人間たち。そして浮遊感。(誰だ?)男は訝しむ。そもそも男には、この状況へと至った経緯が思い出せなかった。 1

2015-01-11 17:58:16
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「あの、この人は大丈夫なんですか?」周囲の男達とは違う少女の声。彼は視線を右に向けた。そこには黒を基調とした衣服に桃色の髪の少女。何より奇特なのは体の彼方此方に鋼鉄を纏っていることだ。只者ではない。「いや、大丈夫だよ。応急処置が適切だったからね」白衣の男が少女に応える。 2

2015-01-11 18:04:31
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「良かった」少女は胸を撫で下ろした。反応から察するに、少女が自分を救ったのだろうか?救う?何から?彼の脳裏に疑問が渦巻く。(そもそも、ここはどこだ?)四方に視線を向けるが見えるのは鋼鉄の壁のみ。そして微かに鼻を突く磯の臭い。(海?)考え込む彼を余所に、男たちは担架で彼を運ぶ。 3

2015-01-11 18:11:40
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

浮遊感と共に移動する。声を出そうとしたが、舌が動かぬ。どうやら自分でも知らぬ間に、相当に体力を消耗していたらしい。(訳が分からないな)男は目を閉じた。(得物は、無事かね?)眠りに落ちる寸前、男が考えたのはそれだけだった。 4

2015-01-11 18:16:13
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

南太平洋沖。対深海棲艦戦前線であるこの海を一隻の軍用大型輸送艦が航行していた。艦の名は「あもり」、鹿屋基地の所有する長距離用輸送船の一隻である。「あもり」は艦娘との同時運用を目的として設計され、その証左として艦尾には艦娘出撃用の簡易出撃装置が取り付けられている。 6

2015-01-11 18:31:54
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「あもり」の周囲には駆逐艦娘達が随伴している。戦線を中部海域まで押し上げたとはいえ、未だ深海棲艦の影響が根強いからだ。その光景を艦首から見つめる一人の女性有り。ショートカットの黒髪に塔を思わせる艦橋型髪飾りと白い鉢巻。山桜をあしらった白い服に包まれたバストは豊満であった。 7

2015-01-11 18:41:08
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「不幸だわ」溜息と共に憂鬱げに呟く。「新年早々姉様と離れ離れなんて」「言うな山城」女―山城の愚痴に男の声が答える。山城が振り返ればそこには、蒼黒の甲冑を纏い、サングラスをかけた褐色肌の男であった。白髪が多く混じった黒髪を後ろに撫で付け、左頬の古傷を掻く男を山城は知っていた。 8

2015-01-11 18:45:45
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「そもそも、何で私が遠征に同行なんですかリカルド提督」山城は蒼黒甲冑の男―リカルドに非難の視線を送る。「説明はしただろ」「ですけど」山城は不満げだ。無論、何故自分が同行しなければならないのかも理解してだ。「この航路で戦艦級を含む深海棲艦群が確認されたから、ですよね」「そうだ」 9

2015-01-11 18:52:58
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「俺だって火急の任務でなきゃ、断って大淀とイチャイチャしてたっつーの」リカルドもまたぼやいた。「で、目には目を。戦艦の装甲には戦艦の主砲だ」「で、提督が指揮できる戦艦で一番練度が高いのが」「お前さんになるな、うん」「強くなったことを恨めしく思う日が来るなんて…不幸だわ」 10

2015-01-11 18:57:24
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「まぁ、そう言うな。行って帰ってくりゃあ任務は終わりだ。有給出しといておくから、扶桑とデートでもして来い。」「それは、有り難いですけど」「何だ?」「これから戦うかもしれないのに、そんなこと言うのは不吉では?」「フィクションの悪影響だな、そりゃあ」 11

2015-01-11 19:00:22
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「そう言えば」「何だ?」山城は思い出したようにリカルドに問うた。「春雨が発見したっていう、漂流者。提督と“同業”なんですよね?」「・・・らしい、な」一時間ほど前、春雨は任務中に漂流者を発見、「あもり」に運び込んだ。最初は深海棲艦に襲われた密漁者の類と思われた。 12

2015-01-12 02:12:01
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

だが、実際に運び込まれたのは全身に甲冑を纏い、火縄銃らしき銃を背負った男であった。春雨の迅速な応急措置により一命は取り留め、今は艦内の医務室で眠っているそうだ。その身に着けていた甲冑は金属であり、生物的であり、統一性が無かったと船員たちは口にしていた。 13

2015-01-11 19:13:31
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「実際見てないから鎧については解らんが、火縄銃は恐らく鬼ヶ島か神ヶ島だろう」「鬼?」「そう言う銘の軽弩だ」リカルドは海を見つめ、話を続けた。「炸薬系の運用に長けた奴でな。腕利きが扱えば、どんな堅牢な甲殻すら砕く優れものだ」「単装砲みたいですね」「先祖みたいなもんなんだろ」 14

2015-01-11 19:20:30
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「最も、周囲を爆破するから俺みたいな根っからの近接連中との相性は悪いがな」「はぁ」「で、何でそんな話題を?」「実は」山城は周囲を見渡し、誰も居ないことを確認する。そして小さな声で言った。「その人の兜、頭蓋骨だって話が」「頭蓋骨?」「不吉だわ」山城は眉を顰めた。 15

2015-01-11 19:25:51
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「頭蓋…?」だが、リカルドは山城の話を聞き、はっとした顔をする。「なぁ、その頭蓋骨の色って、噂になってたか?」「色ですか?」「ああ、色だ」山城は腕を組み、思い出そうとする。「確か、黒とか言っていたような…」「黒!?」「提督?」「まさか、あの人が?」その時である! 16

2015-01-11 19:31:27
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

KA-DOOOOOM!「グワーッ!?」「ンアーッ!?」突如、轟音が鳴り響き、「あもり」の船体が揺れる!そして同時に、リカルドの小型端末に吹雪からのノーティスが入る!『司令官!遠距離からの砲撃を確認!敵襲です!』「お出ましか!」リカルドは小型端末を手に取り指示を出す! 17

2015-01-11 19:37:49
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「敵影は?」『今だ確認できず。恐らく噂の戦艦級かと!』「釣れちまったか。よし。吹雪、春雨、若葉の3名は先行するであろう敵快速部隊を迎撃。山城たちが降りる時間を稼げ!」『了解!』「山城!那珂の奴連れて出撃準備だ!」「了解!」 18

2015-01-11 19:40:57
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「隼鷹!」『あいよ提督!』リカルドは小型端末で艦内の隼鷹に呼びかける。「さっきの音は聞こえたな?敵襲だ!どうやら戦艦級がいるらしい」『探し出せって?』「撃破してもいいぞ?」『アイアイ!』リカルドは獣じみた笑みを浮かべる。これから始まる戦闘への愉悦であった。 19

2015-01-11 19:44:05
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

リカルドは小型端末から顔を離し、あらんかぎりの声を上げる!戦の始まりを告げる法螺貝めいた大声が轟いた!「総員、戦闘開始!輸送船だからって挑んだとこを後悔させてやれ!」 20

2015-01-11 19:46:17
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