#今日のたぬきさん 2015年1月

#加賀さん観察日記 でお馴染みのあの人(@k_t_y_k)による、前方後円墳が見守る男たちの刀剣乱舞。主役は同田貫正国ことたぬきさん。だと思う。
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キタユキ @k_t_y_k

刀剣のプレイヤー名が「前方後円墳」なので多分こういう感じ pic.twitter.com/LIwXt4vSqE

2015-01-15 22:39:19
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キタユキ @k_t_y_k

初子の過ぎ、雪に紛れて羽が積もった。白鳩の羽である。その和毛の丸みを、稚児の足が踏む。裸足草履である。幾度となく踏み散らし、次第に土色が肌と白に混じる。 「おや、またそんな格好で」 後に続く窘めを察し、稚児は顔を上げた。縹の髪簾、翳る目は爛々と鋭い。 #今日のたぬきさん

2015-01-15 23:06:14
キタユキ @k_t_y_k

「バカと刀は」 「風邪を引かぬ、ですか」 優男の声。稚児は再び俯く。再び半泥を足で混ぜるが、遮るように石竹の布が揺れ、なよ竹の足が重ねの下から伸びた。 「兄上が聞いたらなんと言うか」 「兄さんはいない」 「小夜」 「うるさい、邪魔、死ね」 #今日のたぬきさん

2015-01-15 23:17:22
キタユキ @k_t_y_k

小夜と呼ばれた稚児は強く地を蹴る。土くれと雪が羽を巻き込んで弾け、対面に立つ優男の衣裾を濡らした。優男は小さく舌打ちをするが、小夜は悪びれる素振りすら見せず、歩き下がって背を屈めた。右手が腰に伸びる。短刀。ずう、と寒風が過ぎる。 #今日のたぬきさん

2015-01-15 23:26:38
キタユキ @k_t_y_k

「止しなさい。小夜。主の忠告を忘れたのですか。一、刀剣相討つべからず。宗佐は敵ではありませんよ」 優男、宗佐は声を落とし、小夜に一歩寄った。彼も同じく、腰は刀。崩し僧衣と華奢な体格を括るが如く、打刀が佩かれている 「主ならさっき殺した」 風で雪が転がる。 #今日のたぬきさん

2015-01-15 23:38:25
キタユキ @k_t_y_k

雪が椿となる。落ちた椿は嘴を曝け出し、次第に鳩の首となった。羽に覆われていたもの、土くれと混ざっていたもの、合せて八つほどの鳥首が、小夜の足周りを囲っていた。宗佐の口から白息が濃く上る。 「またですか」 呆れ顔に焦りの色はない。宗佐は裾を絡げ、首を眺める。 #今日のたぬきさん

2015-01-15 23:51:15
キタユキ @k_t_y_k

「今日で95羽目」 羽音が頭を掠めた。宗佐は上目遣いに曇天を見上げる。牡丹雪の中を、白鳩が飛ぶ。 「鳴かぬなら……とはよく言ったものですよ」 鳩は宗佐を越え、縁側に足を休めた。首を伸ばしてくう、と鳴き、瞬く。瞼が上がるより早く、頭は半月にずり落ちる。 #今日のたぬきさん

2015-01-15 23:56:45
キタユキ @k_t_y_k

宗佐が視線を戻した時、眼前は庭が広がるのみであった。傍らに小夜の足跡が距離を置いて残り、縁側へと続いている。その後の挙動は思い描くまでもない。宗佐は何か言おうとして、再び濃く息を白ませた。白鳩の羽が散る。牡丹雪に椿花が飛ぶ。 #今日のたぬきさん

2015-01-16 00:04:55
キタユキ @k_t_y_k

わたし、前方後円墳! 誰の墓かわからないしなまえもないの!だって調査が入らないから! それでどうやら歴史が改変されると消えてしまうらしいので、それはいかんと時空管理の某の要求を飲み、刀剣男子たる者達の主を務める運びとなった。此処にその記録を残す。徒然に。 #今日のたぬきさん

2015-01-16 00:12:36
キタユキ @k_t_y_k

彼らの住居、本丸は我が麓にある。然程広い屋敷ではないが、庭がある。そこから私は彼らの生活を文字通り垣間見、また彼らは私を臨むことができるのだ。だが何分、伝達には距離がある。そこで、使いを寄越している。 先程から切って切って切りまくられていた鳩、あれだそうだ。 #今日のたぬきさん

2015-01-16 00:17:43
キタユキ @k_t_y_k

私は墓である。名も知れぬ墓の神格は低い。故に使いを産むのが精一杯であり、遣ったところで普通の白鳩。ででぽっぽの五文字で何とかするしかない。そこで時空管理の某に頼み、鳥相手でも真摯に取り合ってくれる刀を寄越してもらった。陸奥守吉行。彼が最初の守り刀となった。 #今日のたぬきさん

2015-01-16 00:25:43
キタユキ @k_t_y_k

坂本龍馬の手に馴染んだ彼は、非常に大らかで、そしていい加減だった。私との会話は全て彼自身のエア通訳で賄われ、伝わって真意は三割弱というところだった。初陣で様子を伺えと伝えたのに先走って深手を負う様子には、千年以上時の過客を見てきた私も流石に悲しみが鬼なった。 #今日のたぬきさん

2015-01-16 00:29:20
キタユキ @k_t_y_k

それではいかんと時の某に頼み、狐の使いを寄越してもらった。確かヌマクローと言った気がする。違う気もする。彼の手を借り、紆余曲折あってようやく、私は多種多様の刀を束ねる腰縄として、数多の審神者達に肩を並べている。 こうかくと締まるが、実際人任せである。 #今日のたぬきさん

2015-01-16 00:37:56
キタユキ @k_t_y_k

そしてただ悠然と墓をしているのも癪なので、頻繁に鳩を送って本丸の様子を覗くことにしているのだが、結果は前述の通りである。私を縊った小夜左文字は気性が荒い。兄役刀である宗佐左文字が先に居ついてくれなかったら、鳩の死骸が小山集りとなったことだろう。しょたこわい。 #今日のたぬきさん

2015-01-16 00:42:57
キタユキ @k_t_y_k

さてここで一本の刀の話をしよう。かつて一本の刀が、展覧試合で兜割を成し遂げた。その日数多の武具を片手に、達人達が競い合って割らんとした、明珍の十二間筋。その脳天へと、易々と刀身を沈めこんだのだ。 その人の名は、榊原。 刀の名は、胴田貫。 #今日のたぬきさん

2015-01-16 00:56:01
キタユキ @k_t_y_k

天割の武勲より百余年。歴史改変の危機を前にして、数ある銘刀と共に胴田貫もまた自我を得た。『彼』が私の本丸に降ろされたのは偶然だったが、彼の目を見て私は確信した。紛う事無く、銘刀であると。 その情を感じとったかは知らぬが、彼は挨拶代わりに私の脳天も二つに割った。 #今日のたぬきさん

2015-01-16 00:59:58
キタユキ @k_t_y_k

試し切りという名目だったそうだが、その日から私は彼を贔屓目で見るようになった。 兵(つわもの)である。 彼は兵である。 彼という存在が一振りの刃であり、其れ正に刀剣男子である。 こう書くと詩的だが、フランクに書くとLOVEずっきゅんである。 #今日のたぬきさん

2015-01-16 01:09:35
キタユキ @k_t_y_k

胴田貫は群れぬ一本刀であった。先輩格の陸奥守や宗佐と鞘二つ分は距離を取り、一人庭にて空を睨む思想家でもあった。一度戦となれば我武者羅に突っ込む無謀さを持ちながら、闇雲に振るだけが太刀筋の真でないことを熟慮していた。彼の思想は常に次の一振りの為にあった。 #今日のたぬきさん

2015-01-16 01:14:11
キタユキ @k_t_y_k

そして人、いや鳩にも媚びぬ刀であった。近づくと斬られる。短刀の類、例えば今剣や粟田口の小童達には棒で突いたり豆を鉄砲にしてぶつけたりなど扱いが手柔らかに持て成されるが、太刀である胴田貫は違う。近寄らば斬る。相討ちの禁を出さねばならぬほどに容赦がないのだ。 #今日のたぬきさん

2015-01-16 01:20:03
キタユキ @k_t_y_k

散々書いてしまった。とにかく、彼については未だ知り得ぬことの方が多い。他の刀剣達も同様だが、気づきがあれば逐一記していこうと思う。 最後に。 今日もたぬきちゃんにいっぱい斬られました。 たのしかったです。さよちゃんにもきられました。 わたしはどえむのこふん。 #今日のたぬきさん

2015-01-16 01:23:29