ラバウル少佐日誌:天空の母編

艦これ二次創作小説です。 一部艦娘のキャラ崩壊・独自設定・過去捏造注意です。
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檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

瑞鶴が戻って来たのは、昨年の晩夏の頃でした。 (1) #ラバウル少佐日誌

2015-01-14 20:15:30
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

その時私達は、まるで自分達の背負うモノの生き写しの様な敵を相手に、苦戦を強いられていた時でした。 空母棲姫は私達南雲機動部隊を相手にしても、制空権を易々奪える程の性能を有していましたから、その為に私達の作戦はあと一歩のところで暗礁に乗り上げていたのです。 (2)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 20:21:55
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

航空戦力にあと一押し、必要であると私は感じておりました。 しかし新任した瑞鶴では話にもなりませんし、翔鶴も練度の問題でいない方がマシといえる出来で、頼みの綱の龍驤も別方面の海域に出撃していましたから、その一押しに値する者は無い筈でした。 (3)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 20:29:38
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

その一押しは、作戦終了が迫っていた或る日、敵空母棲姫との航空戦が始まった直後に起きました。 敵空母ヲ級の内一隻が突如帽子を脱ぎ捨てると、その帽子の中から飛行甲板を取り出して、空母棲姫へ向けて矢を放ち始めたのでした。 (5)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 20:46:12
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

彼女の顔を一目見て、それが深海棲艦の振りをした艦娘であると最初に分かったのは私でした。 髪を白く染め肌も真白に塗り、服まで着替えていましたが、取り出した飛行甲板が迷彩模様であった事と……、 あの憎らしい程に不敵な笑みを浮かべた顔は、瑞鶴に相違ありません。 (6)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 20:54:51
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

味方航空戦力が漸く善戦出来るだけ揃った事と、空母棲姫を挟み撃ちに出来た事。 それらによって、私達は無事に作戦を完遂出来ました。 青ざめた顔で膝を震わせる飛龍と蒼龍に近付き、 「元気してた?」 と彼女は言うと、私を無視して赤城さんの前に進み立ち、 (7)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 21:03:37
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「ただいま」 とだけ言い放ったのでした。 (8)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 21:05:29
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

瑞鶴が帰ってきた事により、新任の瑞鶴は出撃の回数が露骨に減りました。 私達の艦隊の提督はそういった性格の男でしたから、寧ろ解体されない事が不思議な程の扱いです。 彼女は健気にニコニコと笑ってはおりましたが、きっと腸は煮えくり返っていた事でしょう。 (10)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 21:40:38
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

戻って来た瑞鶴は、前にも増して傲慢に振る舞い始めたのですから。 トラウマを植え付けた二航戦を体の良い小間使いとして酷使し、昼夜に場所まで問わず赤城さんを辱める。 そう……結局のところ何も変わってはいない、正にけだものの所業。 (11)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 21:50:06
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

いいえ、変わった事といえば無い事もありません。 龍驤の式をただの紙切れとすり替えて、彼女を轟沈寸前に追いやった事がありました。 以前の彼女であれば、そんな小細工は面倒がって実行に移さないまま終わった事でしょう。使える手下を得たという事かもしれませんが。 (12)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 21:58:06
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

しかし、その瑞鶴の横暴にも私達はおろか、提督も手を打つ事の出来ない理由がありました。 いうまでもありません。 彼女は死んでおらず、生きて帰ってきた。 それだけで説明は充分でしょう。 (13)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 22:02:17
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

しかし、私達を襲った災厄はたかが黒い鶴の一匹だけでは遂に済まなくなりました。 瑞鶴は私達を弄ぶ事にも飽き始めたのか、同じ基地に所属する別艦隊の艦娘にも同じ振舞いを始めたのですが、 或る日彼女は片腕片脚の血みどろになって、執務室へ逃げ込んできました。 (14)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 22:08:59
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

提督の執務机の中へ逃げ込んだ瑞鶴は、虫の息でありながら不愉快な程に愉しげな表情を浮かべておりました。 丁度赤城さんの言を伝える為に執務室へ来ていた私は、柄にもなく背筋に氷の矢を差し込まれた様な感覚を覚え、思わず提督と半年振りに目を合わせてしまいました。 (15)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 22:13:02
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

しかし、直後に私達の視線は執務室の扉へ向けられる事となりました。 「これこれ、そこの戦豚と弓引きの下女よ」 声を掛けてきたのは、褐色の肌と鍛え上げられた肉体をこれ見よがしに見せつける、艤装に不釣り合い極まる下品な女でした。 (16)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 22:18:45
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

ですが、ここには豚も下女もおりません。 返事が返って来ない事に、この女……元帥閣下の艦隊に所属する武蔵は、しかし負けじと高笑いました。 「まあ、そなた等下種共に用は無いが? 一つ尋ねたい事がある。心して聞け?」 (17)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 22:25:21
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

悠々と我が物顔で、元帥の武蔵は私達の執務室へずかずかと上がり込み、 どすん、とその両腕を机につくと、 「この部屋に、鶴が一匹隠れておるな?」 と不敵に笑みました。 「姑息で、無謀で、愚かな鶴だ。それ故手負いとなって漸く身の程を知れた、滑稽な鶴だ……!」 (18)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 22:29:46
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「鶴など知らんな」 提督は睨み返しました。 彼の喜劇的な勇士を見るのも、随分久しい事であったと記憶しております。 「知らぬか? 黒い鶴だ。私はその鶴に酷い仕打ちを受けて、心が張り裂けてしまった。このままでは、今夜にでも元帥閣下に泣き付く他は無い」 (19)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 22:35:53
檀富良(Dan Fuller) @NGWCTG

「故に、私の心を晴らせよ。さもなくば……」 もう一度、元帥の武蔵は机を殴りつけました。 「そなたの首が、誠の意味で斬れるぞ?」 (続く)#ラバウル少佐日誌

2015-01-14 22:38:57