2015年1月16日

イスパノスイザHS50戦闘機のお話

第二次大戦中、フランス占領後にイスパノスイザとドヴォアチンが手を組み、中立国スペインで戦闘機を開発しようと企てた事がありました。 今回、日本では無名の戦闘機のお話であり、貴重なのでまとめてみました。
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Bunzo @Kominebunzo

イスパノスイザはフランスに開発拠点を持つ世界企業で第一次大戦で大馬力水冷発動機を量産して不動の地位を築いた老舗。ダイムラーベンツなどの田舎企業とは育ちが違う名門だけれども第二次大戦でフランスが崩壊するとヴィシー政権とそりが合わずスペインに脱出してしまう。これが「運の尽き」だった。

2015-01-13 08:17:20
Bunzo @Kominebunzo

イスパノと同じように、正統な仏政権で真面目ではあるけれどどうにも貧乏臭いヴィシー政権とそりが合わずに脱出した人物がいる。それがエミール ドヴォワチン。フランス空軍の遅すぎた名機、D520の設計者。根っからの技術者でしかも偏屈、かつ商才の無い人物。こんな人物がスペインに逃げて来た。

2015-01-13 08:22:00
Bunzo @Kominebunzo

イスパノスイザとドヴォワチンの縁は深い。1924年に彼の才能を見出したイスパノ社は日本の三菱とドヴォワチンの三者が出資してドヴォワチン航空機製造株式会社を設立する。三菱はイスパノエンジンのライセンス生産をしていた縁で参加している。 何とドヴォワチンは「三菱系企業」だったのだ。

2015-01-13 08:25:27
Bunzo @Kominebunzo

ところがこの三菱系企業、たった5%の出資しかしていないドヴォワチンの好きにさせたのが間違いで新機体の設計はするけれども自社で量産して商売にする気概が全く無いことから数年で破綻してしまう。だからほら、ドヴォワチンと名の付く戦闘機の量産工場っておおかた「ドヴォワチン」じゃないよね。

2015-01-13 08:30:18
Bunzo @Kominebunzo

イスパノスイザはそれでもドヴォワチンを見捨てない。蔭に日なたに応援して自社の目玉商品であるモーターカノンまたはエンジンガンの売込みに利用する。帝国陸軍と海軍がそれぞれ「おおっ」と思ってしまったデボワチン戦闘機がそれだ。世界中が乗せられた営業主体の「新機軸」だった。

2015-01-13 08:37:23
Bunzo @Kominebunzo

アメリカの航空雑誌掲載の広告でハッキリと「エンジンガン」と書いてあるのにモーターカノンになってしまうのは、どう見てもこっちの方が響きがカッコいいからに違いない。そしてイスパノのV12エンジンがエンジンガンの為に設計された訳でもない。偶々適性があったというだけの営業的発想だった。

2015-01-13 08:41:24
Bunzo @Kominebunzo

イスパノ12X、Yシリーズエンジンは何だかんだ言われるけれどもマーリンやDB600シリーズよりちょいと先んじた製品で、先にイイのを出したものだから当然、売れる。でもあそこがダメだ、こんなだから発展性が無いとケチョンケチョンに言われることもある。言うは易し、されどそれには訳がある。

2015-01-13 09:00:29
Bunzo @Kominebunzo

エンジンガンの売りは「これに換装すればお宅の現用戦闘機の性能が向上しますよ」「旧設計の弱い主翼では翼銃が積めませんね。でも軸内発射の当社エンジンなら武装強化できますよ」「機首の銃2丁と同じ重量で機関砲が積めますよ」というもの。新規調達が減った不況時代のアイデア商品でもあるのだ。

2015-01-13 09:03:52
Bunzo @Kominebunzo

現用機の換装用として売りたいイスパノエンジンは重量軽減を最優先に設計される。その為にクランクケースから何から何までちょっとずつ強度が足りない。どこかの国の「ほま・・」何とかエンジンみたいなものだ。 だから日本で進められたこのエンジンのライセンス計画は何も無くても破綻しただろう。

2015-01-13 09:06:48
Bunzo @Kominebunzo

生い立ちが軽量化を最重要視したちょっと強度が足りないエンジンということで1940年代に通用させるには出力向上に耐え得る大規模な改設計が必要になる。それが未完の新エンジン12Z。これが出来るまではしょうがない、という事で、ドヴォワチンD520にはマーリン型やアリソン型が生まれる。

2015-01-13 09:15:07
Bunzo @Kominebunzo

イスパノ12Zとはどんなエンジンなのかと言えば、12Yのボア×ストロークを受け継いでクランクシャフトから何から見直して剛性を増し、それからそれから4バルブDOHCにした「イスパノが考えた世界最強のエンジン」でフランス降伏時には地下疎開工場で量産準備中の「これさえあれば」アイテム。

2015-01-13 09:58:40
Bunzo @Kominebunzo

「これさえあればイスパノは復活できる」とフランス崩壊後のイスパノスイザ首脳陣は12Zの技術資料と試作エンジンをドイツから守り通して国外に救出するのに死力を尽くす。最初の計画はまだ中立だったアメリカ。フォードのデトロイト工場でのライセンス生産交渉が水面下で始まるも間もなく破綻。

2015-01-13 10:04:22
Bunzo @Kominebunzo

右往左往する中で落ち着いたのがスペイン。ここではイスパノ傘下の工場が細々と機体とエンジンを造っていた。曲がりなりにも製造設備があるなら「やれる」という判断で12Zのスペインでの製造計画が始まる。多少ブランクは空いたものの「技術的には世界最高」なので何とかなるだろう、と考えた。

2015-01-13 10:07:16
Bunzo @Kominebunzo

12Zのスペイン生産計画が始まると同時にやって来たのがエミール ドヴォワチン。この人もフランス崩壊で中止された12Z装備のD550シリーズに未練がある。そしてスペインで「世界最高のエンジン」と「世界最高の機体設計者」が「世界最高の戦闘機」を生み出そうと「世界の片隅で」動き始める。

2015-01-13 10:14:57
Bunzo @Kominebunzo

最高速度670km/h、実用上昇限度1万2千m、上昇時間6千mまで6分ジャストで航続距離は1300km、がイスパノスイザHS50戦闘機の計画値。当然モーターカノンで翼内にもHS404を装備する重武装。戦闘爆撃機としても使える。そしてこれだけ盛り込んでいながら機体はD550ベース。

2015-01-13 10:19:33
Bunzo @Kominebunzo

HS50計画を支える12Zにも問題が出た。スペインには過給器製造工場が無い。イスパノは2速過給器で遅れをとっていたので余計に辛い。早速スペイン国内で過給器製造を開始しようと試みるもののこれが上手く進まない。結局、補機類の調達がネックになって12Z計画は遅れに遅れることになる。

2015-01-13 10:22:21
Bunzo @Kominebunzo

何とかかんとか12Z製造の目途が立ち、HS50のモックアップも作った時点で思わぬ競合が出現する。それはメッサーシュミットBf109Gのスペインへの供与。政策的にフランコの機嫌を取りたいドイツが提示したこの供与計画で実機も完成していないHS50計画は見事に吹き飛んでしまう。

2015-01-13 10:26:39
Bunzo @Kominebunzo

供与計画に従って中古のBf109Gの機体がスペインに到着し始めるけれども肝心のDB605が来ない。いつまで待っても来ない。ひょっとしたらずっと来ないんじゃないか、と思えるのでBf109に12Zを積む計画が始まる。この計画がドイツ側にとってどれだけオフィシャルなことだったかは謎。

2015-01-13 10:29:23
Bunzo @Kominebunzo

Bf109のバリエーションで欠番になっているBF109Jはこのイスパノ12Z装備計画を指すと言われ、実際、イスパノ側の資料にもそんな感じの記述がある。けれども詳細はよくわからない。とにかくDB605を待っているうちにノルマンディ上陸を迎えてもはや絶対にDB605が来ないとわかる。

2015-01-13 10:33:38
Bunzo @Kominebunzo

DB605が来ないことから12Zへの換装が始まりBf109JことHA1109が出来上がる。それでも12Zは不調続きで安定せず終戦後2年経った1947年に中止されてしまう。そしてマーリンメッサーHA1112が誕生。 ほっ、やっと話が最初に戻って来たよ~、クドいね~。まったく。

2015-01-13 10:42:53
Bunzo @Kominebunzo

1947年の12Z中止についても技術的限界という解釈は正しくない。なぜなら解放された本拠地フランスでのイスパノスイザ再建活動が開始されていたからスペインの田舎で中古のHe111やBf109を相手に苦労する必要が無くなったのだ。イスパノの歴史は一から十までビジネスの世界なんだなー。

2015-01-13 10:50:05
敵🔪🔍🥖🈂🥄🐟🦀 @JimberMelonArms

HS50。元の元になったD.550は胴体を綺麗にしたり翼面積を大きく減らしたりして1000hpに満たないエンジンで420mph(676km/h)を達成したそうですが、翼面荷重が競速機なみに大きくて旋回性能や離着陸距離が悪い予感が…… pic.twitter.com/FDDuUmCqyQ

2015-01-13 12:34:55
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てぃーぽ・あばると@お茶くみ @TipoAbart

@Potez63 D.550自体が速度記録機として作られてますから、翼面荷重が大きいのはまさにその血筋なんでしょうねぇ。

2015-01-14 02:22:30
敵🔪🔍🥖🈂🥄🐟🦀 @JimberMelonArms

@TipoAbart D.520は15.87m^2でD.550の翼面積は10.80m^2ですから7割以下です。D.550は軽量化に腐心してLoaded weightがD.520の約7割になってますが実戦的な戦闘機にするなら色々重くなりますから7割には収まらないでしょう。

2015-01-14 02:43:13
敵🔪🔍🥖🈂🥄🐟🦀 @JimberMelonArms

@TipoAbart 英語版Wikipediaソースで計算するとBf109Eの翼面荷重が約167、D.520が168、MiG-3が192です。D.551やHS50の翼面積がそのままで重量だけD.550から増えていたならMiG-3並みかそれ以上に旋回性能や離着陸性能が悪そうです。

2015-01-14 02:54:52
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コメント

瀬戸の住人 @Seto_Zyunin 2015年1月16日
まとめを更新しました。 ※解説文を訂正しました。
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