☆1/18　高尾家緑間家挨拶②

歯医者高尾bot @dent_takao

「……よし、行くぞ真ちゃん」 「ああ」 「スーツオッケー、ネクタイオッケー、手土産もオッケー、顔はまあ……オッケー？」 「オッケーなのだよ」 「おっし、……じゃあ真ちゃん」 「なんだ」 「願掛けにキスでもしませんか？」 「ああ」 「あ！エロくないヤツな！」 「分かっているのだよ」

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大丈夫、大丈夫。反対される覚悟も、罵倒される覚悟も殴られる覚悟も出来てる。それでも真ちゃんと一緒にいたいんだから、人事尽くすっきゃねーだろ。行ってきます！！

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……つ、着いた。真ちゃん家。高校の時にはほぼ毎日来てたけど……さすがになんつーか、今日は心構えが違うっつーか……ラスボスの城に見えるぜ……

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「……よ、呼び鈴って鳴らした方がいーのかな？」 「ああ」 「……これ？」 「いいから早く押せ」 「ちょ、あああああ！押しやがった！オレまだ心の準備が！」 「落ち着け。別に取って食われたりはしないのだよ」 「……で、でも」 だああああ緊張する！！！

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「いらっしゃい高尾君。久しぶりね」 「お、お久しぶりです！あの、これ……お好きだって聞いたので、良かったら」 「別に何も持ってきてくださらなくても良かったのに……真太郎も、おかえりなさい。奥でお父さんがお待ちですよ」 「ああ」 「どうぞ、あがって」 「お、お邪魔します！」

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なんか……真ちゃんのお母さんの雰囲気、ぜってー棘あるって。口調は優しいけど、歓迎されてない感があんだよなー……ううう、でもいきなり平手打ちとかが来なかっただけマシなのか？そー思っとけばいーの？……お、お父さんに会うのマジで怖ぇ……

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「……高尾、」 「お、おう」 「何を言われてもオレはお前と別れる気はない。……それだけは覚えておけ」 「うん。……なんか、試合みてーだな、すっげー緊張してんだけどオレ」 「試合の方がはるかにマシなのだよ。……行くぞ」 「おーよ」

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……な、なんかここ、何、応接室、って感じなんだけど……扉からしてすげー重厚っつーか……え、なんで真ちゃんノックとかしてんの、自分の家だろ自分の……さ、さすが緑間家、やっぱ庶民とはちげーわ……。

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「入りなさい」 「失礼します」 「し、失礼します……あ、あの、高尾和成と申します、今日はお忙しいのにお時間を取っていただき、ありがとうございます」 「こちらこそ呼びつけるような真似をして悪かったね。座りなさい」 「は、はい」

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お……おお？もしかして真ちゃんのお父さん、優しい？なんかすげーソファふっかふかだし、殴られる雰囲気ではなさそーだぜ？ ……あ。お母さんがコーヒー持ってきてくれた。これコーヒーに見せかけて泥水とかじゃねーよな？大丈夫だよな？

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「高尾君」 「は、はい」 「君は歯科医師だと真太郎に聞いたが」 「はい」 「高尾はすぐそこの病院の口腔外科に今は勤務しているのだよ」 「将来は？」 「……数年後には、開業したいと考えています」

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「実家は歯科関係の家系か？」 「いえ、父は普通の会社勤めですし……医療関係に行ったのは、自分だけで」 「では、ゼロからの立ち上げというわけか」 「そのつもりです」 「場所はどの辺りを考えている？」 「……実家もこの近くなので、出来ればこの辺りで、と」 「そうか」

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……ま、待って話が見えないっつーか、なんで着席早々に仕事の話になってんの？いや別にいーよ？いーけどさ？オレこれで何見極められてんの！？

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「開業資金はどうする予定だ？」 「一応今貯金しているのと……あとは、銀行からの融資で、どうにかしようと思ってます。先輩にも、開業した人が何人かいるのでアドバイスを貰いながら、と」 「……悪いが歯科の分野にはあまり明るくなくてね。億単位の買い物になると考えればいいのかな？」

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「そう……ですね、たぶん、CTとか入れたら、１億じゃ足りないかな、って覚悟はしてます」 「うちがその１億を出すというのはどうだ？」 「……はい？」 「その代わり、真太郎とは別れてほしい」

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あー……なるほどね、よーやく話が見えてきたわ。見極めてやるとか言ってたけど、最初っから別れさせる気満々じゃねーか。……別れさせる予定の相手なんか、そりゃー殴る価値もねーわな。

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「……父さん、何を、」 「手切れ金、って事ですか？」 「……あまり言い方が良くないな。君は開業のための資金が必要だ、息子には異性の伴侶が必要だと我々は考えている。お互いにとって悪くない話だろう」 「だからって……１億、って」 「足りないというのであれば上乗せしてもいい」

歯医者高尾bot @dent_takao

手切れ金が億単位とか……マジ聞いたことねーんだけど。真ちゃんの将来には億の価値があるってか？……ま、その気持ちも理解出来なくはねーけどさ。でも開業資金くらい、自分で稼いで取り返すっつーの。

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「これでも君には感謝しているんだよ。真太郎は昔から誤解されやすい子だった。だが、高校に入学してからずいぶん丸くなったと家内も言っていた。君に出会えた影響なのだろう」 「……ありがとうございます」 「そこまで高尾のことを認めていながら、何故別れろなどと言うのか理解に苦しむのだよ」

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「この前も言ったはずだ。真太郎、お前に緑間家の長男としての自覚はないのかと」 「子孫を残せないことに関しては申し訳ないと思っています、ですが普通の男女の夫婦であっても必ず子どもが望めるというわけでもないでしょう。それに養子という選択肢もある」

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「仮に養子を貰うにしても男女の夫婦よりはるかに困難だろう。母親の不在は子どもの成長にも悪影響だ」 「憶測で物を言わないでください。父１人で子どもを育てているケースなど珍しくもないでしょう」 「だが同性同士の親を持つ子どもなど日本では皆無だろう」

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「前例がないというだけでしょう。世界的に見れば同性同士のカップルが養子を取ることには問題がないとされているはずです。家庭が円満であれば、子どもの成長にも影響はないと」 「…その考えが日本でも通用するとは私は思えん」 「オレは、高尾と一緒であればどうにか出来ると思っています」

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「やはりお前に話をしても無駄なようだ。高尾君、見ての通り息子はまだ世間知らずだ。今は良くても、将来君達は必ず後悔する。息子の将来のためにも、別れてやってくれないか？」 「ふざけるな。オレはこんな話をするために高尾を連れてきたのではないのだよ。高尾、これ以上話しても無駄だ。帰るぞ」

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「え？ちょ、ま、」 「オレは家を出ます」 「はあ！？」 「少し黙っていろ高尾。コイツを手放すくらいなら、オレは家を手放すと前にも言ったはずです」 「……真太郎、少し冷静に考えなさい。私は君達の将来を考えて、」 「緑間の家の将来を考えて、でしょう？」