鋼鉄の咆哮×艦隊これくしょんSS「超兵器の金剛」

横須賀鎮守府に着任した戦艦金剛は、普通の艦娘ではなかった。
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さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

私は、金剛型戦艦の三番艦、榛名です。横須賀鎮守府で最初に配備された戦艦として、また現在では提督の秘書艦として任務に励んでいます。 鎮守府の戦力は、戦局がこちらの有利になるにつれて大きくなってきました。 姉の比叡や妹の霧島も、違う艦隊に所属しています。(1) #超兵器の金剛

2015-01-24 01:36:45
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

そしてつい先日、私たち姉妹のネームシップである金剛お姉さまが建造されました。 とても嬉しい出来事だったのですが……お姉さまは、私が知っているお姉さまとはどこか違ったのです。 妙によそよそしく、どの艦娘とも仲良くなろうとせず距離をとっていると聞きました。(2) #超兵器の金剛

2015-01-24 01:40:34
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

私は心配です。このままではお姉さまは鎮守府の中で孤立してしまう。 比叡姉さまや霧島も心を痛めています。 榛名がなんとかしなければ。 そう思っていた、矢先でした。(3) #超兵器の金剛

2015-01-24 01:42:08
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「おい、そこの金剛型!」 食堂で声を荒げたのは、長門型戦艦の長門さんでした。 床を軋ませるほど一歩一歩を強く踏みしめて、テーブルの端で一人食事をしていた金剛姉さまに近づきます。 姉さまはうつむいたまま、カレーを食べていました。 「顔を上げろ」(4) #超兵器の金剛

2015-01-24 01:46:23
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

姉さまは、無視しました。 「顔を上げてこちらを見ろと、言っている!」 机が叩かれ、水の入ったコップが倒れて床に落ちた。こぼれた水が、姉さまの脚を濡らす。 そこでやっと、姉さまは諦めたような顔をゆっくりともたげました。 「……何デスか?」(5) #超兵器の金剛

2015-01-24 01:49:12
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「それだ。貴様のその態度はなんだ。戦艦としての威厳や誇りはないのか!」 食堂には、駆逐艦をはじめ多くの艦娘たちがいました。 何人かが止めに入ろうとしましたが、長門さんが手で制します。 「邪魔をするな」 怒気を含んだ声でそう言われ、何人かは下がりました。(6) #超兵器の金剛

2015-01-24 01:52:31
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

怯えることなく、むしろ近づいて行ったのは、正規空母の赤城さんでした。 「せめて食事の後にしなさい。皆怯えているわ」 「だからなんだ。私は今、コイツに用があるんだ」 「コイツって……金剛さんはあなたよりも!」 「コイツは私が知っている金剛じゃない!」(7) #超兵器の金剛

2015-01-24 01:55:57
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

長門さんの声が食堂中に響き渡ります。 秘書艦として、私はこの場を納めなければなりませんでした。 ですが、情けないことに、長門さんの気迫に完全に飲み込まれて、足がすくんでしまっていました。 長門さんは姉さまを指さして叫びました。(8) #超兵器の金剛

2015-01-24 01:59:01
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「コイツは戦艦なんかじゃない! いや、もはや艦娘ですらない! 戦闘でのやる気も、何もかもが希薄だ! 演習ですらろくにやらないじゃないか!」 事実、でした。 姉さまは戦闘にすら、積極的ではなかったのです。 「フ、フフフ……」 姉さまが、低く笑いました。(9) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:02:09
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「笑ったか、貴様……? 今私を笑ったか!」 「フフ……。だったらどうするノ? 今ここでワタシを殴り壊すのカ? むしろそうしてもらったほうが本望デース」 「……ツ!」 振り上げられる拳。そこで私はやっと体を動かすことができ、その腕に飛びつきました。(10) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:04:43
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「やめてください! 暴力はやめてください!」 「離せ金剛型ァ! お前は何も思わないのか!? コイツは貴様の姉だろうがァ!」 私が飛び込んだことで我に返ったのか、何人かの艦娘が同じように長門さんに飛びついて、取り押さえました。(11) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:07:04
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「ここは私たちがなんとかするから、金剛さんを外へ!」 赤城さんがもみくちゃにされながら私に言いました。 私は金剛姉さまの手を引いて、ひとまず食堂を離れ、工房裏にある倉庫まで走りました。 そこで、手を、振りほどかれました。 「もう、いいデス」(12) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:08:31
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

姉さまは悲しそうな顔をしていました。 「なにが……もういいんですか」 「私に構うのはやめてくだサイ。貴女まで被害が及んでしまいマース……」 姉さまと言葉を交わすことは、思えば今までありませんでした。 ですが、まさかこんなに他人行儀にされるなんて……。(13) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:11:32
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「なんで……そんな言い方、するんですか……。私たち、姉妹じゃないですか」 涙が止まりませんでした。悲しくて、哀しくて。 「姉妹なんかジャ、ない」 「えっ」 「貴女は、私の妹じゃ、ナイよ」 意味が、わかりませんでした。 ですが、納得もしてしまいました。(14) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:13:44
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「ワタシは、ね。貴女の知ってる金剛じゃ、ないんデスよ」 「わかりません……お姉さま。お姉さまが何を言っているのか、榛名はわかりません!」 私は逃げてしまいました。 これ以上お姉さまを、お姉さまの姿をした誰かを見たくなくて。(15) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:16:30
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

どれぐらい走ったでしょうか。 私はいつの間にか提督の執務室の前にいて、ドアの前に立ちすくんでいました。 慰めてもらいたかったのかもしれません。 ノックしようと手を挙げたとき、中から声が聞こえてきました。 一人は提督、もう一人は工作艦の明石さんのものでした。(16) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:18:49
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

『間違いないんだな?』 『ええ。あの金剛さんにはブラックボックスが多すぎる。というより、彼女自体がその塊でした』 『そうか……。やはり、解体するしかないのか』 「やめてください!」 榛名は思わず飛び込んでいました。(17) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:21:08
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「は、榛名!? 聞いていたのか!」 「解体なんてダメです! そんなの榛名が許しません!」 「話を聞いていたのならお前もわかるだろう。あの金剛は危険すぎる。それに、あれはそもそも金剛であるかどうかも……」 「いいえ! 榛名の、私たちの姉さまです!」(18) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:26:52
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

私は、自分の気持ちから逃げていたんです。 姉さまのような誰かを姉さまと思いたくなかった。 でも、やっぱり私の姉さまだって、心の奥の榛名が言うんです。 だから、解体なんて許せません。 「姉さまのことは私が責任を持ちます! だから、解体だけは……!」(19) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:27:16
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「お前もこの鎮守府にいる艦娘ならわかっているだろう! 正体不明の者を置いておくわけには……」 その時、提督のデスクの電話が鳴り響きました。 言葉を止めて、提督が受話器を取ります。 「私だ……。何!? 遠征艦隊が!」(20) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:29:41
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

それは突然の知らせでした。 ボーキサイト輸送任務から帰還中の艦隊が、正体不明の艦艇に襲われているというのです。 敵は恐るべき速力で艦隊を翻弄し、まるで遊んでいるかのように戦闘を続行中とのこと。 金剛姉さまのことは、ひとまず後回しになりました。(21) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:32:00
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

私を旗艦とした第一艦隊は、すぐにその海域に向かいました。 編成は、私こと戦艦榛名と空母赤城、重巡那智と愛宕、そして駆逐艦の吹雪と初雪です。 すぐに出撃できるメンバーが集められました。 「偵察機から報告。遠征艦隊は健在、でも大破している子がいるみたい」(22) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:36:15
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

「見えた……! 12時の方角に艦影!」 「遠征艦隊……かな。みんな無事だといいけれど……」 初雪ちゃんが不安そうな表情で言いました。 「……! 違う、あれは……!」 だんだんと大きくなっていく艦影。でもその速度は……通常では考えられないほど速かった。(23) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:40:10
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

あれは、敵だ! 「散開!」 そう叫ぶと、皆一斉に散らばりました。 同時にすり抜ける鈍色の艤装。 大きくのたうった水しぶきが顔にかかり、口の中にしょっぱい味が広がる。 「は、速過ぎる! なんだアイツは!」 那智さんが取り乱すのも無理はありませんでした。(24) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:43:24
さのすけ @_SANOSUKE_SAN_

敵は少なくとも、50ノット以上の速度で航行していました。 赤城さんの艦載機も追いすがるのがやっとなほどです。 「魚雷より速いわ! なんてヤツ!」 愛宕さんが主砲を撃ち続けますが、すべて敵艦の後方へ着弾していました。 私の砲は照準すらまともにつけらせません。(25) #超兵器の金剛

2015-01-24 02:45:49