「キルゾーン・スモトリ」 #1

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
ニンジャスレイヤー
alohakun 70735view 1コメント
12
ログインして広告を非表示にする
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:43:38
    第1巻「ネオサイタマ炎上」より。「キルゾーン・スモトリ 1」
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:46:13
    廃墟と化した巨大ショッピングモール「コケシ」の暗い立体駐車場を、ケンドー型装甲服に身を包んだ2人の男が、互いの背中を守りながら進んでいた。1人の手にはショットガン、もう1人の手には小型火炎放射器が握られている。銃身に備わったスコープライトで闇を切り裂き、休み無く獲物を探している。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:47:31
    ブーンブーンブブーン。ブーンブーンブブーン。単調なベース音が特徴的な、コケシ・マートの店内BGMが、立体駐車場のスピーカーからざらついたノイズとともに微かに漏れ出している。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:48:06
    外からはネオサイタマの無機質な光が僅かに差し込んでくる程度で、この空間に光はほとんど無い。壁や柱に備わった非常ベルの赤い光や、九割がた割れ落ちた天井の蛍光灯が頼りなく明滅し、「27階」「ショウギモール」「実際安い」といった張り紙を照らす。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:49:30
    #KOKESI:NAGAMU:イカ発見。 //   #KOKESI:SATOU :どこですか? // #KOKESI:NAGAMU:黄色いスクラップカーの横に居ます。// #KOKESI:SATOU :焼きますか? // #KOKESI:NAGAMU:はい、焼いてください。 //
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:50:08
    これらの文字は、彼らの網膜バイオディスプレイに蛍光グリーンのフォントで映し出されていた。彼らは最新のサイバネティック手術で、脳に無線LAN端末機能とIRCメッセージング・クライアントをインプラントしている。声も発する必要も、キーボードを叩く必要も無く、意思疎通が可能なのである。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:50:22
    #KOKESI:SATOU :イカを発見したので焼きます。 /// #KOKESI:NAGAMU:はい、焼いてください。 ///  
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:50:48
    サトウ=サンと呼ばれる火炎放射器を持った男が引き金を引き、駐車スペースの1つに炎を放った。そこに置かれていた活きの良い大型イカは、猛烈な火炎放射攻撃を受けると、小型バイクほどもある体を丸めて、香ばしい匂いを発し始めた。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:51:01
    #KOKESI:NAGAMU:グッドクッキング、良い匂いですね。 ///   #KOKESI:SATOU :腹を空かせたスモトリが寄ってきますね。 ///
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:51:05
    #KOKESI:NAGAMU:今日の成績はいくつでしたっけ? ///   #KOKESI:SATOU :私が6、ナガム=サンが4です。次はお先にどうぞ。 ///
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:51:14
    #KOKESI:NAGAMU:いいんですか? ///   #KOKESI:SATOU :もちろんです。ユウジョウ! /// #KOKESI:NAGAMU:ユウジョウ! ///  
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:51:35
    突如、ガラスの割れる音が立体駐車場内に響いた。それから、苦しそうな呻き声と、荒々しい息遣いが2人の耳に聞こえてきた。二人はイカから離れ、黒いワゴン車の影に身を潜める。ナガムはマグネット式ライトのひとつを銃から取り外し、焼かれたイカのある辺りを照らす。何者かの気配が近づいてきた。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:51:52
    暗闇の中から、ぬうっと2メートル近い全裸の巨漢が姿を現す。それは野生化したバイオ・スモトリだった。死体のように白くすべすべとした肌が、ライトの灯りに照らし出された。スモトリに残った最後の羞恥心がそうさせているのか、首から上だけはコケシ・マートの茶色い紙袋ですっぽりと覆われていた。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:52:07
    腹を空かせたバイオ・スモトリは、本能的に罠だと知りつつも、焼けたイカの放つ香ばしい匂いに抗うことができない。スモトリはイカの前にひざまづき、こんがりと焼けた足の一本を紙袋の中に入れて、もぐもぐと咀嚼し始めた。観察者から見れば、嘔吐を催すほど不快な光景である。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:52:35
    #KOKESI:NAGAMU:イヤーッ! ///  ナガムはワゴン車の上に上ると、スモトリの頭部を狙ってショットガンを発射した。狙いはわずかに頭から外れ、白いすべすべとしたスモトリの肌に、無数の黒い鉛球が突き刺さった。異臭が辺りに立ち込める。緑色のバイオエキスが床に流れ落ちる。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:52:48
    「アイエエエエエ!」スモトリは情けない声をあげた。ナガム=サンはショットガンをコッキングしさらに射撃。紙袋が焼け焦げ、スモトリの顔面に散弾が容赦なく浴びせられた。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:53:24
    「アイエエエエ……」と断末魔の呻きをもらして絶命する。ナガムは慣れた手つきで駆け下り、スモトリの両耳をセラミックナイフで切り落とし、ケンドー型装甲服の腰に吊った保存液タッパーに浸した。これでスコアは6と6。同点である。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:53:35
    #KOKESI:SATOU :ユウジョウ! /// #KOKESI:NAGAMU:ユウジョウ! ///   2人は再び、声も無く互いのチームワークを賞賛し合った。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:54:19
    彼らは所謂「カチグミ」と呼ばれるエリート・サラリマンであり、全人口の約5%未満の人種だ。この辺り一帯の無人エリアは、彼らのために用意された危険な殺戮遊戯場。先程のイカも、主催者側が配置したアイテムのひとつなのである。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:55:42
    「カチグミ」は組織の和を重んじるため、このような場においては、できるだけ均等な成績になるよう互いに気を遣わねばならない。万が一、2人のスコアの差が10:0だったら、10を得たほうは社内やネット上でムラハチにされるのである。ムラハチとは、陰湿な社会的リンチのことだ。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:56:00
    #KOKESI:SATOU :疲れましたよね? /// #KOKESI:NAGAMU:そうですね。帰りますか? /// #KOKESI:SATOU :そうしましょう。 /// #KOKESI:NAGAMU:明日は会社ですからね。 /// 彼らの言葉はつねに過剰なほど丁寧だ。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:56:12
    これはなにも、カチグミの社会組織がそのようにできているから、というわけではない。ネオサイタマにおいて、ネットワーク上の発言はすべて監視されているからである。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:56:22
    不用意に攻撃的な発言をすると、たとえそれがどんなシチュエイションであっても関係なく、サイバー・マッポに告訴されてアカウント停止や罰金、最悪の場合投獄や社会的抹殺などのペナルティを課せられてしまうのだ。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 01:59:46
    2人のカチグミはキルゾーン・スモトリのコケシエリアから出るべく、エレベーターへと向かい、スモトリが寄ってこないうちに素早く乗り込む。だが、バリキ・ドリンクのオーバードーズで視界がぶれていたナガム=サンは、1階のボタンを押そうとして、うっかり地下13階のボタンを押してしまったのだ。
  • ニンジャスレイヤー @NJSLYR 2010-08-23 02:00:44
    (「キルゾーン・スモトリ 2」に続く。このセクションは2で完結します)

コメント

カテゴリーからまとめを探す

「バラエティー」に関連するカテゴリー