【彼女たちは頼まない】福間健二 #2factory79
東京の寒さ。メッセージは「甘く見るな」だ。売れない。なんにも売れない。ぼくの売りたかったもの。みんな乾燥して火をつけるとよく燃える。羽が落ちてくる。どこかの屋上に鳩の死骸があるのだ。身はもうない。ウイスキーくれよ。火の鳥は飛びません。(彼女たちは頼まない1)#2factory79
2015-01-21 09:52:33では、何が飛ぶのか。いやなことばかりが続いた。「この状態はいつ終わるんだろう」が感傷の抜けないロケットに翻訳されて飛ぶ。「そのあと何をするんだろう」の発射はまだ。当たり前すぎて、冷たい雨が降ってきた。大奮発して、ラフロイグ。ダブルで。(彼女たちは頼まない2)#2factory79
2015-01-22 11:42:28火の鳥は飛ばない。解決能力のないロケットが飛ぶ。まだ殴る親がいる。殴られて腫れた片方の目をちがう眼帯の「泣いてないよ」に隠した十三人のプリンセス。どこにいるのか。いくつもの線。それぞれに切れ目を入れるものと関係なくぼくはここにいる。 (彼女たちは頼まない3)#2factory79
2015-01-23 11:35:12この社会、この夜。ゆっくりした動きの苦手な、死んだ犬たち。死んでも、役割が終わっても、そうなのだ。かれらを慰めるための報告。酔いだした男の足下にこぼれる貝殻、砂利、木の葉。何を語っているか。病気が治ると困る黒い帽子の病気は治らない。(彼女たちは頼まない4)#2factory79
2015-01-24 12:55:39ずらりと並んだ黒い帽子。斜面をのぼりながら、空を見ない目。笑わない。通ってきたいくつもの悲しい町が、その眠りが、昼間の作業の針で傷つけた指の処置もしない理由になっている。かれらの見ない空を見る。夜が明ける。指が腫れるのはこれからだ。(彼女たちは頼まない5)#2factory79
2015-01-25 11:33:26ずっと先の課題だと思っていたこと。ふたつの指、こわれても鳴る楽器の上で何をするのだ。線を描く。急いで、痛くて、余裕をなくしながら、出会うことなく折れ曲がる。つまり、やってくるはずの彼女たちが来ない。もうすぐ正午。気温があがってきた。(彼女たちは頼まない6)#2factory79
2015-01-26 11:55:47さっきまで大勢の人がいたが、いまはまばらだ。大学通りのわきの、ベンチのある場所。売れ残った破片のぼく。とにかく治った。スターバックスの椅子とテーブルの片付け方にならって彫刻的に立ち、こんなにからっぽ。行き来した言語、何も思い出せない。(彼女たちは頼まない7)#2factory79
2015-01-27 11:45:50わからない、と言われた。でも黙っていると連れていかれる。旧街道、その先で待つ寒い海に。溶けない部分、見る目と交換したルビーを奪われ、失神する人々。そのなかに育つ何を踏もうとしてあせるのか。頭も胸も腹もあるこの虫。足を脱いだ靴なのだ。(彼女たちは頼まない8)#2factory79
2015-01-28 11:14:13ここまでの骨。黒い帽子では隠せない捻れと歪みを大きくするもの。まだなにか閉じ込めているのか。どこに。どうやって。All of you、どう危険なのか。わかってほしいと願う。階段の靴と線、もうロケットにならないように始末してからだろう。(彼女たちは頼まない9)#2factory79
2015-01-29 12:37:35迷う。失う。もっと、もっと、なのだ。夜の、ひきつる足のあいだに挟んだ古い世界。書きつづけるしかないが、やはり危険だ。虫たち。「今日もよろしく」の背中がばりばりと破れて、アリサたち、やっときた。彼女たちは頼まない。命令するだけだ。(彼女たちは頼まない10)#2factory79
2015-01-30 09:18:20