三門市暮らしの霊感少女。

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

そして私が考えるのが悉く怖い話じゃなくなんかただの霊感少女から見たボーダー、でしかない件について

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

私のクラスにはボーダーの子がいる。何時も怖い顔をしている男の子だ。どうしてボーダーに入ったのか、聞いたわけじゃないけれど知っている。彼の傍には彼とよく似た面影をした長い黒髪の女の人がいるから。胸から血を流しているその姿は、あの侵攻の時の犠牲者だとすぐにわかる。 #三門市の怖い話

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

似ているからお姉さんかな。いつも思いつめたような顔をしているように見える彼を心配そうに見ている彼女は、私と目が合うと一寸困ったように笑って見せるのだ。彼にとっての戦う理由なんだろうと思うけど、そんな彼を見ている彼女の眼は、とても苦しそうに見えるのは気のせいかな。 #三門市の怖い話

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

どうして彼には見えないのかな。私にはこんなにはっきり見えているのに。君の背中を見ている君のお姉さんの顔が、私はとても悲しそうに見えるのは私の気のせいなのかな、三輪君。 #三門市の怖い話 三輪と捏造三輪姉を見ている、クラスメイトの霊感少女の独白。怖い話というべきではない気がする

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

皆は「近界民は怪物だ」と言っている。ボーダーも同じことを言う。だけど私は気づいている。私達が近界民と呼んでいるモノが、本当は生き物ですらないことを。ボーダーの人達の中に、現実のものじゃない血の臭いをさせている人――ヒトゴロシがいることを。 #三門市の怖い話

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

人を殺したことのある人はどんなに洗ってもとれない血の臭いがする。ボーダーの人達の中に、時々それを臭わせている人がいることに、私は気づいている。クラスメイトの出水君もその匂いがしていることに、私は気づいている。彼も殺人者だと、気づいている人が何人いるのだろう。 #三門市の怖い話

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

近界民と呼んでいるあれは生き物じゃないから、あれを殺している他の隊員達にはそんな匂いはしていないけれど、その中にほんの何人か、そうやって血の臭いをさせている人がいる。近界民と戦っているという彼らが人殺しの臭いを纏っていることに気付いているのは、私だけだ。 #三門市の怖い話

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

皆が信頼を寄せるボーダーが嘘をついていること、彼らは本当は人を殺しているということに、私だけが気付いている。 #三門市の怖い話 今度は出水のクラスメイトの霊感少女。こんなんばっかである

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

街を歩いていたら、中学生とすれ違った。眼鏡をかけた男の子と、白髪の妙に小さな男の子の二人組。何となく視線を向けて、白い髪の男の子によく似た別の誰かの姿が重なって見えた。腕と足が片方ずつなくて、脇腹と片目が抉れた、よく似た黒髪の男の子がいた。 #三門市の怖い話

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

兄弟かな、双子かな。それとも、もしかしたらその子自身かもしれないとも思った。髪の色が違うだけで、あまりによく似ていたから。よく見たらその子自身も、何だか奇妙な感じがした。それでもその白髪の子はとても楽しそうに見えたから、私は何も言わないことにした。 #三門市の怖い話

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

白髪の子に重なって見えた、黒髪の男の子も、楽しそうに笑っていた。傷だらけの、それでも生きている君にささやかながら幸あれと呟くと、白髪の子が一寸だけ振り返った気がした。 #三門市の怖い話 霊感少女第三弾。今度は遊真…怖い話じゃねーよ！

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

この街ではあちこちで迷子に出会う。お母さんと逸れた子、お姉ちゃんと逸れた子、お父さんと逸れた子、お兄ちゃんと逸れた子。おじいちゃんと逸れた子。たくさんの迷子がいる。迷子になったのは、四年半前。ずっとずっと、子供達は迷子のままで彷徨っている。探している人はどこ？ #三門市の怖い話

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

迷子は死んだ子供達の霊。迷子は残された子供達の影。誰かを探して街を歩き回る、それが見えているのは私だけ。クラスメイトの彼もいる。お姉さんを亡くしたという彼も、迷子の子供と一緒に迷っている。 #三門市の怖い話 霊感少女第四弾。死んだ子供の亡霊と、遺族となった子供の生霊の迷子達。

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

大切な人を亡くして、亡くした人を探して夜な夜な彷徨う遺族の生霊。

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

警戒区域に一般人は入ってはいけない。でも私は時々そこに足を踏み入れる。忍び込む警戒区域の空気は何時も重い。あの侵攻でたくさんの人が死んで、逃げ惑って、その時の恐怖や悲しみや、時には憎悪が、何処へも流されずに澱んだままになっている。 #三門市霊感少女

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

警戒区域に一般人は入ってはいけない。普通なら日常生活の中で静かに晒されて薄められていくものなのに、ここには誰も入らないから、何年も経った今でもそれがここには染み付いて、色濃く残ってしまっている。生きた人間は私しか入り込まないから、どうしても残ってしまう。 #三門市霊感少女

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

ボーダー隊員？うん、あの人達は生きた人間だけど、隊員として動いている時、彼らは生きた人間の匂いがしないから、こういうときは駄目。トリガーを使っている彼らが幾ら警戒区域を歩き回っても、この感情の澱みを静かに晒していくことは出来ないことを、私は知っているんだよ。 #三門市霊感少女

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

以前投下した「三門氏暮らしの霊感少女」の話。トリオン体という生身ではない体では、「生きた人間の営み」とは言えないから、それに晒されて薄められていくものも薄まらないんだよ、という話。

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

私は時々警戒区域に忍び込む。警戒区域にはボーダー隊員や近界民といわれるあの人形しかいないと思われているけれど、実は迷子がとても多いことを私は知っている。私にしか見えない迷子達に会いに、私は今日も警戒区域に忍び込む。 #三門市霊感少女

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

今日もそんな迷子と出会った。少し離れた四つ角で、こっちこっちと手招きをしている子供。あんな風に呼ぶ子の目的は大体わかっている。私はその後をついて行く。小さな背中を追って角を曲がれば、次の角でまた小さな手が招いている。私はその背を追いかけていく。 #三門市霊感少女

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

迷子の背を追いかけて辿り着いた、半壊した家屋。壊れた扉の隙間から顔を覗かせて、追いかけていた迷子の背中を見つける。瓦礫に埋もれた、その隙間から覗いた真っ白な手を、私は見つける。ああ、この子はこれに気付いてほしかったんだね。ボーダーは気づいてくれないから、私を。 #三門市霊感少女

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

警戒区域を後にして、私は真っ白な便箋に文字を綴る。あの迷子が教えてくれた白骨死体を私はどうにもしてあげられないから、ボーダーに知らせるしかない。信じて貰えるかは分からないけど、こうして私は何度も匿名の手紙を送る。迷子が伝えてくれる被害者達を、弔ってもらう為に。 #三門市霊感少女

白火@ in狼欒神社 @WhiteMissing

……こっそり思っていることなんだけど、警戒区域にはまだ回収されていない遺体があるんじゃないかって…四年半、そろそろ五年か。多分もう白骨化してるよね、それを見つけてほしい亡霊たちと、そのシグナルを拾う霊感少女の話。