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「スシ・ナイト・アット・ザ・バリケード」

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「スシ・ナイト・アット・ザ・バリケード」
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「ハッピー、マブ、ラッキーアワー。U、つきぬけろ、このネオサイタマを走るクルマ、お前の城、俺2KEWLリリックが今夜11時をお知らせ、ダイヤルを回せ、今すぐマッポー、勝ち抜け、トミクジ・サプライ、実際安い」
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カーラジオが流すノイズ混じりのトミクジ放送をBGMに、重金属雨がフロントガラスを叩くねばついた深夜のハイウェイ、仮眠を終えたカマタイ・タキオはシートで大きくのびをした。
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仮眠をとっても、己の脳に蜘蛛の巣が張ったような不快感は引かない。活力バリキ・ドリンクにも頼れない。これ以上の服用はハート・アタックを誘発するからだ。タキオは諦めたように首を振ると、マイコ・ポルノ雑誌を助手席へ投げ捨て、トラックを発進させた。
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タキオはネオサイタマと中国地方を一日に二往復する過酷な甘栗運送トラッカーである。仮眠を取るか、マイコ・ポルノ雑誌を読んでいるか、マイコ・サービスセンターでマイコとファックする時以外は、常にハイウェイを走行している。
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甘栗運送トラックの仕事は半年続けばいいほうだ。その期間、奴隷以下の過酷な労働に自らをおいて、まとまった賃金を手にして、そのカネを元手に開業するのだ。タキオもそのクチである。何しろカネを使う場所が無い、道路沿いのマイコ・サービスセンター以外には。それとて週に一度行くかどうかである。
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もう一月ほど働けば、タキオはテリヤキ・ラーメンの屋台を開業する事ができるだろう。男なら一国一城のアルジとなれ、か。それが正しいのかどうかも、もはやわからない。流されて生きるだけだ。フロントガラスに張り付く重金属雨のように。
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単調な直線を三十分ほど走行しただろうか。タキオは渋滞に出くわした。Oops。道路脇の電光掲示板に「少し事故です」と点灯している。最近多いな、ついてねえ。タキオは気を紛らわすために茶ガムを噛んだ。
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ーーそれから四十分は待った。渋滞はまったく動かない。おいおい、どうなってる。タキオは舌打ちした。バリキ・ドリンクの空き瓶に茶ガムを吐き捨て、車外に出た。雨は止んでいる。車列を少し歩いて進み、下り坂の前方に目を凝らす。空がオレンジに染まっている。「なんだ、ありゃ?」
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「暴動だとよ!」トラックの窓から男が身を乗り出し、タキオに声をかけた。「迷惑な話だぜ!」「暴動?」「ああ、暴動だ!オムラの都市開発計画で、このへんの町をダムに沈めるんだとよ。それに反対する住人がハイウェイを封鎖した」「マジかよ?」タキオは絶望的な気分になった。
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下手をすればこのまま車中泊だろうか?スーパーバイザーのアサヒ=サンに電話しないといけない。事情が事情だけにペナルティは無いだろうが、アサヒ=サンは自分の朝食のエビに殻が残っていた事ですら嫌味の理由にできる男だった。気が重い。
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「だが、もうちっとでカタがつくらしいぜ?」男が言った。「どうして?」「空の色、あれはな、燃えてるんだとよ。さっき俺も前まで行って聞いてきたんだ。なんでもオムラが鎮圧のために新兵器を投入するとさ」「新兵器ねえ。物騒だな」「物騒、物騒。オムラは恐ろしいからな。ナムアミダブツ!」
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男が言い終えるか終えないかという時、闇夜をジェット機のキイイインという飛行音が切り裂いた。「何だあ?」タキオが天を仰いだ。「来たんじゃねえのか…」トラックの男は最後まで話せなかった。ズシン、グシャ、という質量音と衝撃に、タキオは吹っ飛ばされた。
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タキオは尻餅をつき、目を白黒させながら、「それ」を見た。トラックの車両部分は、降って来た鉄の塊に押し潰され、ぺしゃんこになっていた。男も即死だろう。
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ピピピピ、チチチチという電子音を発しながら、鉄の塊がサーチライトを点灯した。巨大な頭部が高速で回転し、周囲の状況を走査している。「着地点、座標補正、ありがとうございます、ご迷惑おかけします」不快な合成音声が聞こえた。胴体部分から蒸気を吹き上げ、ごつい脚部がボディを持ち上げた。
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無骨な脚部はカンガルーを思わせる逆関節になっている。ひっきりなしに回転する頭部の赤いLEDが残忍そうに光る。背中にはオムラ・インダストリの家紋がレリーフされ、カタカナで「モーターヤブ」と書かれていた。
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「モーターヤブ」は一瞬身を沈め、その脚部で潰れたトラックの車体を蹴り、大きくジャンプした。タキオは呆然と、車を飛び石のように踏み潰しながら下り坂を降りて行く鉄製の悪魔を目で追っていた。タキオが死なずにすんだのは、ほんの数メートルの落下誤差のためだ。震えが止まらない。
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オレンジ色の空に跳ね上がっては降りる影が、他にも二つほど確認された。数分後、前方で激しい銃撃音と阿鼻叫喚の悲鳴が届いて来た。「モーターヤブ」がおっぱじめたのだ。タキオは恐怖すると共に、ああ、これで渋滞も解消されるだろう、と安堵し、そのあと、そんな自分の利己的な感情を少し恥じた。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「アイエエエエエエ!」カブラ・アキモは、すぐ隣りのサイモト=サンが一瞬にして血煙に変わった事に絶叫した。バリケードを飛び越えてきた殺戮マシーンは全くの無慈悲であった。
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鋼鉄のボディ、カンガルーのような逆関節の脚。右腕にはサスマタを持ち、左腕はガトリング砲になっている。頭部が回転し、サーチライトでレジスタンスの顔をつぎつぎ照らす。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
カブラ=サンは鋼鉄の悪魔に向けてアサルトライフルの引き金を引いた。バチバチと音が鳴り火花が散るが、殺人マシーンはガシャガシャと足踏みしただけだった。頭部が回転し、チチチチと走査が鳴る。「ドーモ、ハジメマシテ、モーターヤブです。今なら投降を受け付けています。オムラは寛大です」
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「本当か!」後ろから一人、身を投げ出すように飛び出した。「やめろ、キンザミ=サン!諦めちゃいかん……」「だって、もう無理だろう?こんな!」キンザミ=サンはよろよろとモーターヤブに近づいた。「投降します!タスケテ!」
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
「ポジティブ!」モーターヤブの不快な合成音声が聞こえた。「投降を受け入れました」ガトリング砲がキンザミさんに狙いを定めた。「え……」「投降を受け入れました。ありがとうございます」ガトリング砲が火を吹いた。叫ぶ時間すら与えられず、キンザミ=サンは理不尽も血煙に変えられていた。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ズシン、ズシンと音が響く。もう2体のモーターヤブがバリケードを飛び越えて着地したのだ。「投降を受け付けています。ドーモ」「アイエエエエエエ!」
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