
法の倫理 - 三原順「橋の下のたとえ話」(岸本元さんによる連ツイを中心に)

なんか最近「平等という建前で弱者も強者も老若男女構わず全員平等にぶん殴ってたら弱い奴から倒れるだろ」(大意)という意見を読んで、三原順「はみだしっ子」の「橋の下の例え話」を思い出した。こういうことなんだよな(白泉社文庫版5巻261頁) pic.twitter.com/pf4fv0OEvG
2015-01-27 22:10:56

これは法の倫理を鋭く問うシーンだが、三原の凄い所はその少し後でこういう科白も出していることだ。《ジャックが橋の下で寝なければならない人達の話なんかしたからサ…マックスが言うんだ“他の人達がたすけてあげればいいんだ”って…そうだね!現にそんな助け合いの制度はいくらもあるのだけれど…
2015-01-27 22:16:02
…そして誰も正面からそれを否定したりはできないけれどね でも悪用する者もでてくる 弱者を装って“さぁ金をよこせ!俺も人間だぞ”と言われたらボクには我慢できないだろうね つまりボクの考える「人間」ってのはボクの頭の枠内だけの事…》(同318頁)これもまた一面を衝く言葉だろう。
2015-01-27 22:18:20
結局、弱者を助けるために真に適当な方法を考え実践すること、それと弱者を偽る人を毅然と跳ね除けること(しかし偽る者が真の弱者に転落しないわけではない。いつ転落してもおかしくない)は不断の努力と絶えざる観察が必要なのであろう。そういうことを私は少女マンガから学んだのである。
2015-01-27 22:21:21▼大事なおまけ

「没後20年展 三原順復活祭」は明大米澤嘉博記念図書館で2月6日から開催。今、最も再び読まれるべきマンガ家の1人です。「Die Energie 5.2☆11.8」など、チェルノブイリ以前にこれほど高密度の原発主題マンガが描けた見識に驚くmeiji.ac.jp/manga/yonezawa…
2015-01-27 22:27:32▼RT爆発余話
2月1日現在、最初のツイートが2万以上RTされています。その後のツイートは200RT前後。

小一時間離れてる間に3000リツイートを越えていた。これはやはり三原順先生の社会性や問題意識が没後20年を経てもアクチュアルなものだということであろう。幸い、その作品はほぼすべてが文庫化されているので読むのは容易である。展覧会をきっかけに広く読まれてほしい。
2015-01-27 23:55:51
それはそれとして、フォローも随分増えているんだが、勿論有難い事ですけど、私は普段の呟きの97%が獣人の僧坊筋をぺろぺろしたいだの、ブラッディロアのユーゴのエロ同人くださいだのそういうことばかりなので、そっと解除するなら今のうちですからね。ちゃんと言ったからな。
2015-01-27 23:58:41
朝起きたら、三原先生恐れ入りますすみません、というくらいに伸びていた。お礼?に展覧会でグッズ沢山買おうと思う(あれば)フォロー返しは追々やりますんで
2015-01-28 08:43:38
@buildBarricade 何より三原先生の作品に今なお訴えかける力があることの証拠です。あと、平等、人権に関心を抱き、弱者救済の必要性を感じる人が多くいるという希望も少なからず感じますね。
2015-01-28 20:40:35
ちょっとリツイートされすぎで怖いな。帰宅したら補足を少し書くが、あの橋の下の例えは「物語上は」被告人側弁護人(=主人公たちにとっては敵側)の理屈なんです。「物語上は」な。だから私は法の倫理を鋭く問うと書いたのだ。
2015-01-29 22:08:35▼補足 フランクファーター

で補足ですが、橋の下の例え的な理屈を駆使する被告人側弁護士フランクファーターの手腕に、主人公側は殆ど有効な反論ができず、被告人を「陥れ」て勝利することになるんです。フランクファーターは確かにえげつないやり口で有能だが、実はよく読むと「悪徳弁護士」には描かれていないのもポイント。
2015-01-29 23:13:36
マンガ的には「橋の下の例え話」は敵側の理屈なんですよ。けれどそれに主人公側は殆ど反則でしか勝てない。そして我々がそのマンガ上の敵側の理屈に大きな共感を覚えるのは、なんとなれば現実に「橋の下の例え話」を悲しいほどありふれて見てしまったからなのではないですか。
2015-01-29 23:17:19
それからこれはマンガ論の範疇だが、物語上で敵役だった側の方が実は正論を言っているということはままあることです。良い例が「美味しんぼ」で、山岡士郎にとって敵の海原雄山の方が正しいことを言っていたりするのはご存知の通りですね。
2015-01-29 23:20:00
三原順自身がフランクファーターを楽しんで描いていたと思う。はみだしっ子完結直後のムックで「加害者的な性格(の登場人物)に傾いて行きそう」という発言があるのは多分フランクファーターを前提としてのこと。で、「Die Energie 5.2☆11.8」の主人公ルドルフに結実する
2015-01-29 23:23:26
@bowwowolf 三原順作品のおそろしいところは、善と正義の双方を提示した上でとことん読者に判断を迫り、かつ突き放すところですね。弁証法マンガの極北とも言え、これを読んだあとは数多のマンガの拵えた理屈が陳腐にみえるほど。未だに「はみだしっ子」を超えたものに出くわさないですね。
2015-01-28 06:21:08
この指摘はまったく頷ける。私はそうして己の判断の上で、「橋の下の例え話」に重要な意義を認めるのである。フランクファーターが弁護した被告人の少年リッチーが、どうしようもなく粗暴な不良だったとしても。
2015-01-29 23:34:50