冬イベント「迎撃！トラック泊地強襲」嘘予告

FALSE＠秋例大祭き04b「偽者の脳内」 @false76

……まさかとは思いますが、深海棲艦がトラック泊地空爆を計画しているのは「リア充爆発しろ」という意味なのではありませんか？ #ケッコンカッコカリ実装1周年でもあるし

里村邦彦 @SaTMRa

絶望的な男不足であった。なにしろ雄型の個体が存在しないのだ。もちろん深海棲艦は人間ではなく、便宜上(と、ここでは表現する)ホモ・サピエンスの雌性体に近い形態を得ているだけといえばそうである。だが彼女たち(と、ここでは表現する)は人類文化の学習転写を宿命づけられた存在でもあった。

里村邦彦 @SaTMRa

こと、日本式に変容を遂げたバレンタインに、友チョコホモチョコという高度な適応行動を示すことができたのは、最上位個体のうちでも少数にすぎない。雌雄分化が不明瞭な駆逐艦クラスに最上位個体までもがチョコレート贈呈を検討し始めるに及び、遂に深海棲艦のうちで、自然発生的な文化転写が生じた。

里村邦彦 @SaTMRa

リア充爆発しろ。提督という指揮個体を持つ艦娘、やつらをなんとしてでも爆殺せねばならぬ。彼女たちは、許された再現のライブラリを必死に探し、艦娘の(人類ではなく！)拠点、それも海上に孤立した拠点を徹底的に叩くことができるエピソードを見つけ出した。トラック泊地空襲作戦の決定である。

里村邦彦 @SaTMRa

ところで艦娘たち(この際は人類、とは呼ばないこととする)にとってもバレンタインは難関であった。何しろバレンタインである。日本において特異に変質したそれは、女性が男性にチョコレートを贈るというプロトコルにより成り立つ。厄介さは、贈る条件設定にあった。何を馬鹿な、と思われるだろうか。

里村邦彦 @SaTMRa

だがプロトコルへの遵守精神を重んじる「日本的な」文化は、たかがそれだけのことをボトルネックに変える。まず艦娘、そのほぼ全てが人類女性型である。つまり贈る側としての条件を満たしている。提督は？ 男性であるか女性であるかその他の何かであるかは概ね人口比に従っている。しかし、しかしだ。

里村邦彦 @SaTMRa

提督総数の半数にチョコレートを贈ればよいかといえば、違うのだ。これが問題だった。長期運用に伴うプロトコルの複雑化は、いくつもの例外処置を生んでいた。たとえば上司に、敬愛の情を込めてチョコレートを贈る。友人、同僚に、親愛の情を込めて贈る。もちろんこの際は、性別定義は問題にされない。

里村邦彦 @SaTMRa

全海域で活動する提督は百万を超え、その下には少なくとも二十四の艦娘とその保全要員が存在する。そして、軍組織はプロトコル上の「不義理」が認められ難い土壌でもあった。すなわち何が起こるか。最小で二千四百万かける各保全要員に提督を加えた、最低数を概算するだけでも一億を超える需要である。

里村邦彦 @SaTMRa

当然ながら供給が枯渇する。対深海棲艦戦術が安定して後、これは銃後すらも揺るがす大事件となった。そこで赤煉瓦が一大号令を発した。鎮守府ごと艦娘からスタッフに贈るチョコレート、これを一つ限りとする。この影に、涙に溺れた艦娘が数多いたという。反乱鎮圧部隊が過去最大数投入されたともいう。

里村邦彦 @SaTMRa

内々の協定が結ばれた。盟主は定かではない。基本的にチョコレートは無記名とする。名を書き込む場合にはケッコンを行った艦娘のみが、各鎮守府全ケッコン艦娘合議の上で行うものとする。すなわち。艦娘にとってもバレンタインは一大の政であり、祭り事であり、砲火をあまり交えぬ決戦の場となった。

里村邦彦 @SaTMRa

そしてまた、莫大な量のチョコレート需要が生まれ、それを充足するためには艦娘たちの血と鉄火により維持される、マイクロネシア経由輸送路が不可欠であることも、申し添えねばなるまい。マイクロネシア航路、その要石は、該当海域最大の環礁に構えられたトラック泊地であることは言うまでもない。

里村邦彦 @SaTMRa

双方の思惑をうわずり、明後日の方向で激しく激突する、決戦の火蓋が切って落とされようとしていた。 #嘘予告