マザーウィル泊地　#20　柱島泊地の節分

Rey.Redeyesers @S_O_M_Harbor

未だ整備から戻らぬ泊地を露ほどに案ずる気配さえ見せず、柱島で気ままに生きる艦娘共は、2月3日に何か面白いことをやろうと鑑みた。 「豆まきしましょ！」 「鬼には困らないね」 #マザーウィル泊地

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GA製スプレッドバズーカの弾頭をグレに変えただけの粗雑な武器を試したくてたまらないのがいた。 悪名高き暁型である。長女暁はいない。巻き込まれて貧乏くじを惹かないためにも、部屋に引きこもっている。傭兵としてだんだんとしたたかになりつつある。 #マザーウィル泊地

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そう、鬼はそこら中にいる。 適当に珊瑚諸島辺りをぶらつけば、ホイホイ食いついてくる。 その後、鉄の雨に蹂躙されるのがテンプレとなりつつある。 #マザーウィル泊地

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しかし、今日は節分であった。 天龍が連れてきた輸送艦には、大豆と大豆油が満載されていた。 道中の艦隊は温泉兵器共が焼き払う。その後を輸送艦を中心とした大艦隊が進撃してくる。 臨時編成無法艦隊「桃太郎」が征く。 #マザーウィル泊地

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こんな馬鹿げたことにこれだけの資源をつぎ込むのは何処の馬鹿だ。呉辺りで今回の『実弾演習』の報告を受け取ったお偉いさんは頭を抱えた。 『大豆ノ敵性存在ニ対スル有効性ヲ実証セシメル為ノ演習』 #マザーウィル泊地

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待ちに待ったとばかりに『桃太郎』艦隊が斉射を始める。大豆油と大豆が空中炸裂し、火の雨が降る。容赦も加減も出し惜しみも不要とばかりにバカスカ撃つ。泊地最後の良心たる大和も景気良く撃つ。 明日からの台所事情など知った事か！ #マザーウィル泊地

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参式大豆弾を撃ち尽くした艦から帰還、しない。なんの為の輸送艦か。 輸送艦に挟まれた明石が次々に参式大豆弾を作る。いつの間にか敵戦鬼は姿を消し、敵増援が右往左往している。狙っていない。鎮守府にあるまじき物量攻撃。 #マザーウィル泊地

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「フォイエル！フォイエル！」 ビスマルクも随分と泊地に染まった。これが日本の伝統行事であると騙されている。 酷いのは狂気空母共だ。筆頭たる赤城は参式大豆弾を食いながらぶっ放し、正気空母はStukaCで正確に敵艦を狙う。どちらも行事の要旨を把握していない。 #マザーウィル泊地

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「だらっしゃああああああああ！」 「とおおおおおおう！」 「どおおおおりゃあああああああ！」 正確無比なる熊野の砲撃が敵を襲う。威力が小さいが、ネチネチと執拗な参式大豆弾による攻撃は、確実にヲ級の精神と身体を削っていた。 #マザーウィル泊地

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青葉はただひたすら写真を撮る。 とりあえず弾が尽きるまで撃ったからだ。面白い報道ができれば、あとはそれでいいのだ。 燃え上がる海面。阿鼻叫喚の敵艦隊。敵増援に延焼する焔。 この光景を生み出した原料が大図であると、誰が信じよう。 #マザーウィル泊地

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やがて喫水線どころか赤い腹を二隻が見せる。大豆も大豆油も尽きた。 「おかわりはありませんか？」 「我慢して下さい。帰ったら叢雲食堂で恵方巻きを用意してあるようです」 豆が尽きれば用はない。そう言わんばかりに赤城がそそくさと撤収を開始した。 #マザーウィル泊地

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赤城とその保護者たる加賀を先頭に、のんびりとした帰還が始まる。 燃え盛る珊瑚諸島。青葉が撮った凱旋の写真は、尽くがその焔で逆光であった。 後にこの写真は「大豆で敵戦鬼を撃沈した空前にして絶後の記録」として噂のごとく語られる。 #マザーウィル泊地

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「馬鹿ばかりね」 「辛気臭いよりは良かろう」 通信砲で届いた報告書は、真っ当な提督であれば信じない。そんな内容を腹を抱えて読む叢雲。 泊地は、今日も平和であった。 柱島泊地の節分、了。 #マザーウィル泊地