駄提督が職を失った日

竹村京さん(@kyou_takemura)の書いてくださった、落ちぬい二次創作です。 今回は駄提督のダメなところがむき出しの、龍田さんのお話です。 ぜひぜひお楽しみください。 続きを読む
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はじめに

竹村京 @kyou_takemura

#落ちぬい二次 、始まります。本作品は #不知火に落ち度はない の二次創作であり、公式ではありません。感想、指摘は #落ちぬい タグまでお願いします

2015-02-04 20:40:24

本編

竹村京 @kyou_takemura

「あっ。やべっ」 「どうした、司令」 兵頭は長門に窓の外を指し示す。そこには海岸と海が広がっており、その水平線上には 「見慣れない艦だな。あの形、おそらくはイギリス海軍のインヴィンシブル級か」 「すげーなお前、そこまで見えるのかよ」#落ちぬい二次

2015-02-04 20:41:44
竹村京 @kyou_takemura

「まあな。着弾観測に双眼鏡とか使ったことないぞ」 水平線上の空母は龍田の勢力アウターヘブンが運用するものだ。本拠は別にあるが、空母を使う事で一般の鎮守府よりはるかに広い範囲で行動することができる。#落ちぬい二次

2015-02-04 20:43:08
竹村京 @kyou_takemura

旧来の艦艇では深海棲艦に対する防御の点で不安があるが、乗っているのが艦娘であればその点はカバーできる。 「化け物め。とにかく俺はスロ打ちに行く。あとしくよろ」 「あらー。お散歩かしらー? じゃあ私もご一緒していいー?」#落ちぬい二次

2015-02-04 20:44:46
竹村京 @kyou_takemura

兵頭の背後からおっとりした声がする。龍田の声だ。 「ご遠慮願えないかなー?」 「駄目ー」 ですよねー。 「こんにちはー」 「おう。何の用だ、龍田」 兵頭が振り返ると、光学迷彩を切った龍田が立っていた。#落ちぬい二次

2015-02-04 20:46:48
竹村京 @kyou_takemura

「せっかちなのねー。短気は損気よー?」 「うっせ、早く言え」 「本当にいいのー?」 「もったいぶらなくていい」 龍田はにっこり笑って言う。#落ちぬい二次

2015-02-04 20:48:05
竹村京 @kyou_takemura

「じゃあ、言うわねー。兵頭さんは本日付でで更迭、この鎮守府は私のものになりましたー」 「…………は!?」 「だからー、兵頭さんの代わりに私が提督になったのー」#落ちぬい二次

2015-02-04 20:49:59
竹村京 @kyou_takemura

その言葉を聞いた長門が兵頭に詰め寄る。 「司令。お前何をやらかしたんだ」 「…………いや、別に」 わざとらしく目を逸らす。明らかに何か心当たりがある証拠だ。 「言え、馬鹿司令」 今にも胸倉を掴んで揺さぶりそうな長門に気圧され、兵頭は少しずつ話し始めた。#落ちぬい二次

2015-02-04 20:51:29
竹村京 @kyou_takemura

「こないだ龍田が来た時に、うまいこと乗せられてな?」 「で?」 「龍田と、一緒に来てた高雄と愛宕に接待されてさ? 酒は俺の私物だったけど」 「ほう?」 「…………パイタッチ」 「は?」#落ちぬい二次

2015-02-04 20:52:38
竹村京 @kyou_takemura

「したの。パイタッチ。べろんべろんに酔わされてよく覚えてねえんだけど」 「そうよー。お触りしたいなら基地をちょうだいって言ったら、兵頭さんったら快諾しちゃってー」#落ちぬい二次

2015-02-04 20:54:23
竹村京 @kyou_takemura

龍田が紙切れを取り出す。表題は「誓約書」。要約すると、三人のおっぱいを触る代わりに基地司令の地位を龍田に移譲する、という内容だった。一番下には兵頭一也の署名が辛うじて読めるのたくった字で書かれている。#落ちぬい二次

2015-02-04 20:56:22
竹村京 @kyou_takemura

「お前が駄目男だというのはわかっていたつもりだが、予想のさらに下を行くな、司令」 「酔わされて龍田の口車に乗せられたんだ」 「それを、最低のさらに下を行くと言うんだ」 「…………」#落ちぬい二次

2015-02-04 20:58:47
竹村京 @kyou_takemura

沈痛な面持ちの兵頭はやがて龍田に向き直ると、大きく息を吸い込んで決意の眼差しを向け――― 土下座した。 それはもう、見事な土下座であった。#落ちぬい二次

2015-02-04 21:00:43
竹村京 @kyou_takemura

でかい身体をこの上なくコンパクトに折りたたみ、ぴしっと揃えられた指の角度も完璧。額はしっかりと床に押し付けられていて必死さも満点だ。#落ちぬい二次

2015-02-04 21:01:54
竹村京 @kyou_takemura

「すみませんでした、龍田さん。どうかお許し願えませんでしょうか」 「えー? 許すってなにをー?」 「基地司令でいさせてください」 「でもー、誓約書書いてもらったしー、あとは書類一枚送るだけで正式な辞令が出るんだけどー?」#落ちぬい二次

2015-02-04 21:03:11
竹村京 @kyou_takemura

「そこを枉げて、頼む!」 戦う術。守る力。復讐の手段。それらを失いたくない。 大事な部下たちをアウターヘブンに渡したくない。#落ちぬい二次

2015-02-04 21:04:11
竹村京 @kyou_takemura

そんな真面目な思考はあるにはあったが、にこにこと微笑む少女に土下座する大男というのは、素晴らしくみっともないものだった。しかも身から出た錆である。 「うーん、兵頭さんがそこまで言うなら考えなくもないけどー」#落ちぬい二次

2015-02-04 21:05:31
竹村京 @kyou_takemura

「本当か!」 「誰が頭を上げていいって言いましたー?」 ごつん。 慌てて床に額をこすり付ける。 「無かった事にしちゃったらつまらないから、そうねー、一日提督で我慢するわー」#落ちぬい二次

2015-02-04 21:06:37
竹村京 @kyou_takemura

「まじか!」 がばっと顔を上げる兵頭に、龍田は重ねて言う。 「じゃあ兵頭さん、秘書漢、よろしくねー?」 「は?」#落ちぬい二次

2015-02-04 21:08:03
竹村京 @kyou_takemura

『あー、長門より達する。本日は軽巡・龍田が一日提督として着任することになった。各自、そのつもりで対応するように。以上』#落ちぬい二次

2015-02-04 21:08:54
竹村京 @kyou_takemura

長門は成り行きに呆れながらもさっさと鎮守府内に放送してその旨を触れる。これで兵頭は後に退けなくなったが、龍田も一日提督以上を要求することが難しくなった。#落ちぬい二次

2015-02-04 21:10:59
竹村京 @kyou_takemura

龍田は長門の手際に賞讃の眼差しを向けると、 「じゃあ、鎮守府の見回りに行くわよー」 兵頭を引きずって司令室を出たのだった。#落ちぬい二次

2015-02-04 21:12:08
竹村京 @kyou_takemura

一日提督となった龍田は鎮守府内をあちこち歩き回っている。 提督としての業務は時給ステーキ200グラムで長門が代行している。一日提督とはいっても一日署長と同じように実務上の権限は持たないもので何とか我慢してもらったのだ。兵頭の土下座に次ぐ土下座の威力であった。#落ちぬい二次

2015-02-04 21:13:25