【第四部-序】夢 #見つめる時雨

時雨 龍鳳 山城
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とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

提督「体調はどう?」 扶桑「…悪くはないですよ」 提督「…良くもなさそうね。山城は?」 扶桑「あのコもまだそれほど影響は出ていません。ですが…」 提督「…そう。幸い、大規模作戦が成功して深海棲艦の動きも鎮静化しています。その間に…ね」 扶桑「……」 提督「…大丈夫よ、貴女達なら」

2015-02-13 12:34:39
とある舞鎮の艦娘たち @S_side_story

提督「…大丈夫そうね。よかったわ。…そんな顔しないで。別に変なこと想像してるわけじゃ…」 山城「…わかってます…よ」 提督「…貴女達の繋がりはとても尊いものだと思うわ。記憶が想いを繋ぎ、貴女という存在を繋ぎとめ、同時に扶桑という存在も繋いで…。山城、もし…―」

2015-02-13 22:01:10

  ***

――深夜

誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

…あれ。みんな、どうしたの。何処へ行くの? 夕立、みんな何処へ向かってるの? …夕立ってば。もう、聞いてる?村雨も、どうして黙ってるの。目も合わせてくれないし…。春雨? え…待ってよ。逃げなくてもいいじゃないか…。あっ、白露。皆どうしちゃったんだろう。…ねぇ、白露?白露ってば。

2015-02-14 01:53:21
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

…あ、五月雨。皆はどうしちゃったのかな。何か知ってる…?…五月雨、五月雨?あれ…?何処へ行っちゃったんだろう…。皆も…いなくなってる…。何処?皆、何処…?

2015-02-14 01:59:37
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

…あ、いた。よかった…。…あれ?キミは…誰?白露型…なの? 「……」 …キミはひとり?他の皆は何処へ行ったか知らないかな。教えてくれると助かるんだけど。 「……だ」 …うん?ごめん、よく聞こえ…。 「皆、沈んだ」 …え?

2015-02-14 02:07:05
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

…そんなはずはないよ。だって、さっき会ったし…。それに、今日だっていつもみたいに一緒に訓練して、一緒に夕食も食べて…。 「…それは本当に現実かな」 …どういうこと?夢だとでも…。 「…キミは考えたことない?皆と再会できて、一緒に過ごせて…そんな都合のいい話、本当にあるのかって」

2015-02-14 02:12:50
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…全ては海の底で眠る、僕の夢なんじゃないかって。考えたこと、あるでしょう?」 …それは…。でも…違う。僕は確かに…。 「これが夢ではないなんて、一体誰が保証してくれた?…全てはキミの願望。夢。たったひとり死に損なったキミの…」 …違う、違う…。 「じゃあ早く帰りなよ。皆の元へ」

2015-02-14 02:23:08
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「どうかした?帰らないのかい?皆は、確かにいるんだろう?」 ……。 「…帰れない、そうだね?まぁ、当然だね。だって、そんな現実は何処にもないから。キミは今も、ひとり寂しく…海の底で眠ってるんだよ」 …僕は…。

2015-02-14 02:30:02
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…時雨は、ひとりぼっちだ。ずっと、これからも」 …ひとりぼっち…僕は…ひとり…。そうか…そうだよね…。こんな都合のいい話…あるわけがなかったんだ…。…全ては、僕の夢…。

2015-02-14 02:36:33
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…時雨、もう夢を見るのはやめよう。ただ…苦しいだけだよ」 …そうだね。…ああ、何で僕はこんな夢を見ていたんだろう。虚しさしか、残らないというのに…。

2015-02-14 02:44:43
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「さぁ…帰ろう、僕。静かで、暗イ…海ノ底ヘ…」 …うん…。

2015-02-14 02:48:40

 ***

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村雨「…顔色悪いわよ?」 時雨「…最近眠れなくって」 村雨「龍鳳さんとお盛ん?」 時雨「違うよ。…変な夢を見るんだ…。夢、だよね…」 村雨「夢かぁ…。…大丈夫、時雨はちゃんとここにいるよ」 時雨「村雨…」 村雨「ええ!?ちょ…泣いちゃうほど!?」 時雨「ごめん…安心しちゃって…」

2015-02-14 10:10:40

――バレンタイン

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「山城、これ…」 談話室で、僕と山城の二人だけになった一時。僕は用意していたチョコレートを山城に渡した。…山城の眉が、困ったように下がる。 「…もう、またあんたはこういうことをして…」 ごめんね。でも、やっぱりキミには渡したいんだ。

2015-02-14 20:48:00
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

…ああ、だけど考えてみれば少し変かも。ふふ。 「…? どうしたのよ、時雨」 くすくすと笑みが零れてしまった僕に、山城の訝しげな視線が届く。 「だって、本命だっていう前提に話してない? 僕達」 そう言うと、山城の顔が一気に赤くなった。

2015-02-14 20:52:34
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…私としたことが…」 山城が掌で顔を隠しながらぼやいた。…間違いじゃないけどね。これは、僕の本命。けれど、僕がそのことを明言しちゃいけない。いけないんだ。 「美味しくできたつもりだから、よかったら食べて」

2015-02-14 20:56:56
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

山城が包みを丁寧に開け、中にあるチョコを一つ摘まんだ。 「…いただきます」 「うん」 白くて細い指に摘ままれたチョコレートが、ふっくらとした朱色の唇の中へと消えていく。 「…おいし」 …その一言で、僕の胸の中は多幸感に包まれた。

2015-02-14 21:03:30
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「じゃあ、僕はこれで」 部屋に戻ろうとソファーから立ち上がったとき、僕のスカートが引っ張られた。 「忘れ物」 山城が、僕の手に小さな包みを乗せる。…これは。 「…一応、ね」

2015-02-14 21:08:00
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…ありがとう、山城」 「…頬緩み過ぎ」 山城に指摘されて、頑張って頬を元に戻そうとしたけれど、ああ、やっぱり無理そうだ。 「ホント、しょうがないコね」 山城の手が僕の首元を撫でる。僕は胸に少しの絞扼感を感じながら、その手に身を委ねた―

2015-02-14 21:14:33

 ***

誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「…時雨は、どうしてそんな恋ができるの?」 部屋で髪を乾かして、逆サイドに髪を軽く結っているときに、龍鳳が僕にそう尋ねてきた。 「…山城のこと?」 「…うん」 …珍しいね。龍鳳がそんなこと聞いてくるなんて。もしかして、さっきの見られてたかな。

2015-02-15 00:30:14
誰かを見つめる時雨 @rainshowers_bot

「どうして…どうしてだろうね」 何度も苦しんで、泣いて…それでも、僕は山城に想いを寄せている。…それはまるで呪いのようで、この想いはどんなに叶う見込みがなくても色褪せてはくれない。…ああ、前に進もうって、そう決めたはずだったのに。

2015-02-15 00:35:13
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