アトラタン戦史～グランクレスト大戦～1

三原クロウ @crow_mihara

今からつらつらと書き溜めたSS連投するので、不快ならミュートなりリムーブなりしてくだせぇ。　#グランクレスト大戦

三原クロウ @crow_mihara

アトラタン戦史（ヒストリー、という名の編纂ログもといSSロールプレイ） （公式に『戦記』が存在するため、戦史の名称をとることとする） #グランクレスト大戦

三原クロウ @crow_mihara

「大戦」の章 #グランクレスト大戦

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そこは密林であった。 否。この表現は正確ではない。 人跡未踏の、と形容するべき場所であった。 混沌濃度が異常に高いその地は魔境と呼ばれ、人の生活はおろか滞在すら拒むはずの地である。 #グランクレスト大戦

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そこに一人の男がいた。 名はダニエル・カルハイン 本名をダリー・ニエル・カルスタイン・ハインランドという。 ダニエル・カルハインは長ったらしい名を面倒がって本人が名乗りだした結果広まった通称である。 #グランクレスト大戦

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彼の容姿にはさほど特筆すべき点は無い。 周囲を威圧するほど容貌魁偉なわけでもなく、衆目を集めるほどに容姿端麗でもない。 アトラタン大陸において比較的珍しい黒髪であることを除けば、中肉中背の年若い男、としか形容できぬ人物である。 ……ただ、一点を除いて。 #グランクレスト大戦

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「邪紋」である。 その全身をほとんど隙間なくびっしりと邪紋が覆っている彼の姿は例外なく見る者の背を寒からしめるものであった。 それは不気味であり、恐ろしげであり、見ようによっては神々しくすらあった。 #グランクレスト大戦

三原クロウ @crow_mihara

唯一、顔にだけは邪紋が刻まれることなく素肌を晒してはいるが、かえってそれが恐ろしげな印象を強めている。 彼曰く「顔が見えないほうが怖がられやすいだろう？」とのことだが、おそらく逆効果であろう。 #グランクレスト大戦

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この男、どうやらマティアス・クライシェに仕えて大いに勲功を挙げたらしい。 （一説によればユルゲン・クライシェの代より仕えて、共に決戦に赴いたとも） #グランクレスト大戦

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その後、「己の武芸を磨くため」と国を離れて単独で魔境に籠り、腐海密林サルガッソーや黒柱神殿といった名だたる魔境の奥深くに単独で潜入するという荒行を繰り返していた。 ＃グランクレスト大戦

三原クロウ @crow_mihara

そして今。 彼の目前には湯気を立てて毒々しい体液を垂れ流す巨獣の姿があった。 混沌投影体である。おそらく竜種を模したのであろう四足のソレは頭部を叩き割られ、胴の中心に大穴が開いていた。 ＃グランクレスト大戦

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ダニエル・カルハインはゆっくりと呼吸を整えながら、まだ抉り出したばかりの温かく脈打つ混沌核を取り込む。 一瞬、全身に刻まれた邪紋が黒々と光を放ち、やがてその光を薄れさせていった。 「ふむ」 己の肉体の調子を確かめながらダニエルは思案する。 ＃グランクレスト大戦

三原クロウ @crow_mihara

……この魔境のめぼしい投影体は狩った。そろそろ俺も人里に下りる時期だろう。 予感がするのだ。大きな戦いが近いと。大陸の歴史が動こうとしているのだと。 主君クライシェの恩義に忠を以て報いるべき時が来たのだと。 ＃グランクレスト大戦

三原クロウ @crow_mihara

……時に大陸歴1970年。「邪紋使い」ダニエル・カルハインが歴史の表舞台に再び現れたのは「大戦」の始まる一月ほど前のことだと『戦史』には記録されている。 ＃グランクレスト大戦

三原クロウ @crow_mihara

ちょっと今から駄文連続投下しますぞ #グランクレスト大戦 #大工房同盟

三原クロウ @crow_mihara

「大戦」の開始から約一月。この間ダニエル・カルハインは大陸全土で転戦していた。 ある時は最前線で同盟君主や魔法師と肩を並べて投影体と戦い、またある時は後方の同盟領土で田畑を耕し、ある時は「パンドラ」なる組織の足取りを追い続けた。 #グランクレスト大戦

三原クロウ @crow_mihara

投影体や軍勢を相手に単独で勝利を収めるその戦いぶりから「独角」「孤拳」「破山」などの異名をもって畏れられるようになったと伝わっているが、彼はいつの頃からか二人の同行者を連れて行動するようになった。 #グランクレスト大戦

三原クロウ @crow_mihara

死地を求めて戦いに赴き、危険を楽しむ女邪紋使いシャナル・ミァン。 復讐の為にパンドラを追う者アル・サイード。 ダニエル・カルハインはこの両名と共に戦うようになったのである。 ＃グランクレスト大戦

三原クロウ @crow_mihara

彼らが行動を共にするようになってから一週間ほど後。 シャナル・ミァンはとある疑問をダニエル・カルハインにぶつけた。 それは彼の戦いに関するものである。 「あんたは何のために戦うの？」と。 #グランクレスト大戦

三原クロウ @crow_mihara

「あんたってさぁ……何のために戦ってるの？」 「いきなりなんだ藪から棒に」 #グランクレスト大戦

三原クロウ @crow_mihara

「アタシを拾ったときにあんたは言ったじゃない『命を捨てるというならせめて安売りはするな。どうしてもというなら捨て場所を一旦俺に預けろ』って。今のあんたは満身創痍でアタシを止めた時とは別人のようだけど？」 #グランクレスト大戦

三原クロウ @crow_mihara

「俺が戦う理由は最初から同じだ。死に急ぐ気もない。生きていなければ俺の願いが、目的が果たせないからな」 #グランクレスト大戦

三原クロウ @crow_mihara

「だからなんなのよそれは」 「我が主の為だ」 「紙切れ一枚もらっただけで、会ったことも喋ったこともロクにないんでしょ？」 「構わない。恋心ではないからな」 #グランクレスト大戦

三原クロウ @crow_mihara

「あの方の笑顔が俺の望みだ。俺の目的であり、戦う理由だ」 ひどく澄んだ目をしてダニエル・カルハインはこう言った。何の迷いもなく。 「俺はマリーネ殿に笑っていてほしいのだ。その笑顔が俺に向けられるものでなくとも、それは構わない」 #グランクレスト大戦

三原クロウ @crow_mihara

「なにそれ。バッカみたい」 「感傷など他人から見ればみな愚かなものだろう」 バッカみたい、っていうかバカじゃないの本当にバカなんじゃないの、といらだたしげに吐き捨てたシャナルは片手で髪をかきむしった。 #グランクレスト大戦