古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 #1

穏やかな日常を過ごす第六戦隊。そんな中、古鷹の進水日に起こったこととは。
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古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

「あ、衣笠聞いてください!今朝仕入れたばかりの最新の熱愛情報ですよ!まさかまさかのあの人たちがです!」 いつも作業に使っている背の低いちゃぶ台に原稿を広げながら、青葉が楽しげに話しかけてきた。ここはとある鎮守府の重巡寮。青葉型の私と青葉に割り当てられた二人部屋だ。

2015-02-25 22:25:22
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青葉は私に話しかけながら原稿を書き進める手は止めない。我が姉ながら器用なものだと思う。 「熱愛情報ねえ……どうせまた初風が雪風をご飯に誘ってすげなくされてるけど諦めてないとかじゃないの?」 「いやまあそれもあるんですけど、話は最後まで聞いてくださいよ」

2015-02-25 22:32:03
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「今回はですねー工廠の隅っこでの出来事だったので、誰も知らなかったと思うんですよ。青葉もその場に居合わせたのは偶然だったので気配を消して盗み聞きしてたんですけど」 だから忍者なのかこの姉は。 「最初は喧嘩なのかな?と思ったんですよ。片方が声を張り上げてたので」

2015-02-25 22:38:41
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「でもよく聞いてたら違ったんですよ。声を張り上げてたのは秋月さんで、真っ赤な顔しながら『あの!朧さん!こここれ受け取ってください!』って叫んで朧さんに何かを押しつけて、そのまま逃げてっちゃったんです」 秋月?ああ、あの最近艦隊に加わった防空駆逐艦の。朧ちゃんと仲良かったのかしら。

2015-02-25 22:43:26
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「朧さんも呆然としてたので、青葉近寄って話しかけてみたんです。そしたら、朧さんが持ってたのは綺麗にラッピングされたチョコだったんですよ!これはもう決まりでしょう!?」 「バレンタインデーってこと?それにしてはちょっと時期外れじゃない?」 「今まで渡す勇気が出なかったんでしょうね」

2015-02-25 22:48:43
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青葉が自信満々に推理を披露するけれど、それはちょっと苦しくないかしら。 「まあ、当の朧さんもなんで秋月さんにチョコを渡されたのかよく分かってないみたいでしたから。『秋月とは、あの子の初陣で一緒に瑞鶴の護衛とかしたんだけど、真面目な頑張り屋でいい子だよ』としか言ってませんでしたし」

2015-02-25 22:52:40
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「いやーでもこのカップルは進展が楽しみですよ!新人ながら優秀で生真面目な秋月さん!その不器用な恋のお相手は、ベテランだけれど鈍感で、無邪気に蟹と遊んでいるのがよく目撃される朧さん!これを記事にしないで何を――」 「そんなことより!」 私が声を差し挟むと、青葉がきょとんとした。

2015-02-25 23:00:05
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私は青葉の目の前にずいっと体を乗り出した。 「青葉自身の恋の行方は一体どうなってるのかしら?」 意地悪く笑いながらそう言ってやると、青葉がぎくっと硬直した。 「えっ、いや、その……」 「古鷹ねーさんとは、ちゃんとデートくらいしてるんでしょうね?」 青葉の視線が泳ぐ。

2015-02-25 23:04:42
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その時、ドアがノックされる音がした。途端に青葉が跳び上がる。私も青葉も、誰がこの部屋を訪ねてきたのか直感した。 「青葉、急用を思い出しぶべっ!?」 青葉が身を翻して窓から逃げ出そうとするけれど、私に足をつかまれて転倒した。もう私には青葉をわざと逃がしてあげる理由なんてないのよ!

2015-02-25 23:14:33
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青葉を押さえつけながら、私はドアに向かって答えた。 「開いてるから入って入って!」 「お邪魔します……」 遠慮がちな挨拶と共に部屋に入ってきたのは、もちろん古鷹ねーさんだ。青葉の姿を見てぱっと顔を輝かせる。 「青葉、こんばんは!……何してるの?」 おっと、早く青葉から降りなきゃ。

2015-02-25 23:19:33
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顔を赤らめて固まっている青葉を無理矢理引き起こし、古鷹ねーさんの前に座らせる。古鷹ねーさんも青葉の対面にちょこんと座る。その顔は、青葉を前にしていかにも幸せそうに綻んでいる。それに対して我が姉の情けないことと言ったら!なんで古鷹ねーさんと顔も合わせられないで俯いてるのよ。

2015-02-25 23:27:14
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「青葉、明日の待ち合わせなんだけど、10時に街の広場でいい?」 古鷹ねーさんが問うと、青葉がおずおずと頷いた。あら、何よ、青葉ったらちゃんとやってるじゃない! 「水臭いわね、デートの約束してるならなんでそれ衣笠さんに話さないのよ?」 「なんで衣笠に話さなきゃいけないんですか!」

2015-02-25 23:34:05
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相変わらず赤い顔で恥ずかしそうに反論してくる青葉を肘でうりうり突っついていると、再び部屋のドアが開いた。入ってきたのはちょうど出撃から帰投してきたらしき加古だ。私はちょっとタイミングが悪いわね、と思った。加古は帰投してくると古鷹ねーさんの膝で寝て疲れを癒すのが常だからだ。

2015-02-25 23:40:39
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「あ、お帰り、加古」 古鷹ねーさんが加古の方に向き直ろうとした。それを見て、さっきまで目も合わせなかったくせに青葉がちょっと残念そうな顔をする。いまいいところだから、と私が加古に声をかけようとすると。 「ふああ、眠い」 なんと、そう言いながら加古は私の膝に寝転がってきた。

2015-02-25 23:45:51
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「えっ、ちょっと、加古?」 思わぬ事態に私が目を丸くしていると、私の膝枕の上から加古が目くばせを寄越してきた。それも、古鷹ねーさんや青葉からは見えないように。それで私も腑に落ちた。やるじゃない、加古。加古は古鷹ねーさんと青葉の仲を邪魔しないように咄嗟の機転を利かせたのだ。

2015-02-25 23:56:22
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加古の頭を撫でて寝かしつけるふりをしながら、私は二人に「こっちは気にしないで続けて続けて」とゼスチャーで伝えた。古鷹ねーさんがちょっと申し訳なさそうに微笑み、青葉に向き直った。青葉が嬉しいような困ったようなしどろもどろの表情になる。ほら、しっかり決めなさいよ、青葉?

2015-02-26 00:01:06
古鷹青葉を見守る衣笠さんbot改 @dairokusentai

古鷹ねーさんと青葉が小声で明日のデートプランを話し合っている。何しろ、明日は古鷹ねーさんの進水日だ。二人には是非とも心行くまで一緒に過ごしてもらわなきゃ。すっかり二人の世界を作り上げている古鷹ねーさんと青葉を尻目に、私は加古を抱え上げてこっそり部屋を抜け出した。

2015-02-26 00:06:48
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加古を抱えて、隣の古鷹型の部屋に入る。完全に夢の世界に入り込んでいるらしい加古は、目を覚ます気配もなかった。仕方がないので加古をそのままベッドに投げ込もうとするけれど、気が付けば加古は私のスカートの裾をしっかりと握りしめていた。 「ちょっと、加古!?離してよ!」

2015-02-26 00:15:37
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加古の頬を軽く叩いてみるけれど、やはり加古は目を開けないし手を離そうともしない。 「もう、スカートが皺になっちゃうじゃない!」 ぷりぷり怒りながら私は加古ごとベッドに寝転んだ。まあ今晩は向こうの部屋に戻るつもりはない。古鷹ねーさんと青葉には少しでも二人の時間を作ってあげなきゃね。

2015-02-26 00:20:26
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私の横で軽やかな寝息を立てつつ幸せそうな寝顔を晒している加古を見ているうちに、私も睡魔に襲われつつあった。 「……加古、あんたももうちょっと最後まで決めてくれたら、かっこよかったのにねえ……」 夢うつつにひとりごち、私も夢の世界へ旅立った。

2015-02-26 00:25:25
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翌日古鷹型の部屋で目を覚ましたとき、すでに私の隣に加古の姿はなかった。今日は出撃の予定はなかったはずだけれど、どこに行ったのかしら。まあどうせ中庭とか日当たりのいい場所に日向ぼっこしに行ったんでしょうけれど。時計を確かめると、すでにお昼をずいぶん回ってしまっていた。

2015-02-26 00:29:33
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今日は私もお休みだとは言え、のんびりしすぎてしまった。部屋に戻ってシャワーを浴びて着替えて、それから昼食を摂ろうと思案しながら青葉型の部屋に戻る。ドアノブを捻ると、予想に反して抵抗なくドアが開いてしまった。青葉のやつ、浮かれすぎて出かけるときに鍵を閉め忘れたのかしら。

2015-02-26 00:32:33
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部屋に入って、即座に異変に気付いた。誰かの気配がする。青葉は古鷹ねーさんとのデートに出掛けているはずの時間なのに。まさかと思いながら部屋に駆け込むと。 「青葉!あんた何やってんのよ!?」 「……ふえっ!?」 あろうことか、青葉が自分のベッドから飛び起きてきたのだ!

2015-02-26 00:37:20