「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」 #4

B・ボンド&P・モーゼズ作。ネオサイタマを舞台としたサイバーパンク・ニンジャ活劇「ニンジャスレイヤー」の私家翻訳物 詳細はこちら http://togetter.com/li/73867
ニンジャスレイヤー
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Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
第1巻「ネオサイタマ炎上」より 「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」#4
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
(あらすじ:IRC空間で秘密会議を行っていた復讐の戦士ニンジャスレイヤーとジャーナリストのナンシー・リーは、ソウカイヤの刺客ダイダロスから電脳攻撃を受ける。これを回避した彼らは、ヨロシサン製薬の機密情報を奪取するために、アヤセ・ジャンクションにある第1ユタンポ・プラント内に潜入)
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(だが、その直後、新たなニンジャ2人が非常口の見張りを殺して第1ユタンポ・プラントへと侵入した。それはニンジャスレイヤーの側にもソウカイヤの側にも与さない独立ニンジャ勢力、サヴァイヴァー・ドージョーの首領サワタリとノトーリアスであった! 何故彼らがここにいるのか? その目的は?)
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「また先をこされたぜ」四本腕のニンジャは、白い床に転がったクローンヤクザ十体の死体を見ながら不満そうに叫んだ「オレのバイオ・イアイドがなまっちまう!」。 「無駄口を叩くなノトーリアス。急ぐぞ」迷彩ニンジャ装束に身を包んだサワタリは、ヤクザ達の懐から万札を手早く回収しながら言った。
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サワタリはここまでの道のりを振り返る。……非常水路の天井に空いた縦穴を三十メートルほど登ると、その先には強化セルロイドの真白い回廊が続いていた。天井や床の角という角は丸く、重役用にバリアフリーが行き届いていた。壁自体に照明が埋め込まれているようで、何とも現実味のない空間であった。
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クローンヤクザ数百人体制の警備、そして綺麗な床……ここはどう見てもただのユタンポ・プラントではない。その内側に秘密施設が存在していたのだ。彼ら2人はそれを最初から知っていた。予想外だったのは、恐らくニンジャスレイヤーとナンシー・リーと思われる2人組が、一足先に潜りこんでいた事だ。
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彼らは時折道に迷いながらも、ニンジャスレイヤーとナンシー・リーが作った血と殺戮の痕跡を、狩猟動物のごとく追っていった。トリイギロチン、電子レンジ部屋、ネギトログラインダーなどのハイテクトラップ群も、ナンシーによって破壊された後で、壁に埋め込まれたLAN端子から白い煙を吐いていた。
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2人は、サバンナを渡るジャガーのように音も無く回廊を駆ける。しばしば、クローンヤクザの体液である緑色のエキスや、それが酸化して真赤になったものが、白い床や壁に飛び散っている。ニンジャスレイヤーの仕業だろう。万札回収のために多少の時間を費やすため、なかなか追いつくことが出来ない。
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「大将、何故奴らがここに? もしかして奴らも、バイオ・インゴットを?」ノトーリアスが鋭い推理を行う。 「そんな筈はない。あいつらにとって、インゴットは何の価値もない、ただの緑色のヨーカンだ」サワタリは自分の疑念にも答えるかのように、強い口調で言った「インゴットはお前達のものだ」。
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「アバーッ!」万札を回収していたノトーリアスが突如その場にくず折れ、緑色の血を吐いた。ナムサン! 血はすぐに酸化してどす黒い赤に変わる。「くそったれめ、インゴット不足の初期症状だ」サワタリが口惜しげに言う「まだ動けるか?」「何ともないぜ大将、俺のバイオ・イアイドは無敵だからな!」
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四本腕をガクガクと痙攣させながら体を起こし深呼吸すると、いつもの自信溢れる彼に戻った。サワタリは胸をマチェーテで抉られるような苦々しい思いを味わった……そしてヨロシサンのバイオ研究員だった彼の記憶を、ナムの偽りの記憶が塗りつぶすのだった。「持ちこたえろ、もうじきイロコイが来る!」
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サワタリ率いるサヴァイヴァー・ドージョーは、ノトーリアス他数名のバイオニンジャで構成される。彼らは皆、かつてサワタリが研究員として観察していた実験体だ。バイオニンジャ計画は、ラオモトによって廃棄されたニンジャをヨロシサンが回収し、バイオ技術で改造するという、狂気の計画であった。
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自由を求めて研究所を脱走した彼らは、ネオサイタマ東端部に広がる耐酸性バンブー・ジャングルに身を隠し、バイオパンダなどを狩って自給自足の生活を送っていた。時折、どうしても金や物資が必要になった時や、殺人衝動に駆られた時のみ、彼らはネオサイタマ市街に下りてきて殺人や強盗を行ったのだ。
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彼らの行動はまるで、竹林に隠れガゼルを狩る、気高きタイガーそのものだった。彼らはソウカイヤのように政治経済を支配する気など無く、サヴァイヴァー・ドージョーの名前どおり、ただ平安時代のニンジャ神話に登場するタイガーのごとく、汚染された自然の中で逞しく生きようとしていたのである。
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だが、そんな生活の中でサワタリは不意に気付いた。バイオニンジャ達は、高純度のバイオ・インゴットを定期摂取せねば死んでしまうことを。すると彼らは、研究所にいたほうが幸せだったのでは? その重い事実に耐え切れなくなった時……彼は混乱をきたし、偽りのベトナム戦争の記憶に支配されるのだ。
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「急ぐぞノトーリアス。ここには間違いなくインゴット製造機がある筈だ。ベトコンどもからそれを奪い取れば、ドージョーで無限にヨーカンが作れる。MOVE、MOVE、MOVE!」……だが、彼に確信は無かった。かつての彼は上級研究員などではなく、末端のサラリマン研究員に過ぎなかったからだ。
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オモチじみた真っ白い回廊で、ボーリングのピンのような規則正しい隊列を組み、Y12型クローンヤクザ10体が警備任務に当たっていた。何とも威圧的な光景だ。数秒ごとに、全員が一糸乱れぬタイミングで回れ右をし、アサルトライフルの銃口を反対側の回廊の先に向ける。クローンならではの統一感だ。
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不意に、T字型回廊を曲がり、赤黒い装束のニンジャが全速力で駆け込んできた。その右手には、スゴイテック社製のとても長いLANケーブルの末端が。ナンシーはやや後方の壁にもたれかかり、既に意識を半分電脳世界に飛ばしている。ヤクザたちはサングラスを光らせ、一斉に同じ動きで引き金を引いた。
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アサルトライフルが火を噴く! だが凄まじい速度に達しているニンジャスレイヤーは、床も壁も天井も関係なく螺旋を描きながら駆け抜けて銃弾を回避し、スリケンを放つ。 「イヤーッ!」「グワーッ!」 喉にスリケンが命中したクローンヤクザは、次々とアボカドジュース・スプリンクラーに変わった!
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ニンジャスレイヤーが動きを止めて床に着地すると、螺旋軌跡を描いていた軽量LANケーブルも、ふわりと地面に舞い降りる。ケーブルが床に触れるよりも速く、ニンジャスレイヤーは次なるトラップを解除するための隠しLAN端子ソケットを壁に発見し、そこにLANケーブルの末端をジャックインした。
Ninja Slayer / ニンジャスレイヤー @NJSLYR
ビクン、と電気ショックを受けたようにナンシーの体と胸が揺れる。かなりのプログラム防壁が施されているようだ。ナンシーの精神はIRC空間へとダイヴする。 一方、ニンジャスレイヤーの鋭い視線は、回廊の前方からじわじわ迫ってくる網目状のレーザー光線を睨みつけていた。これが次のトラップか。
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ふと、嫌な予感がしたニンジャスレイヤーは背後を振り向く。果たして、T字路を曲がってすぐの場所にも、赤い網目状のレーザー光線が出現していた。ウカツ! T字路前の壁の陰に隠れているナンシー=サンと分断されてしまった! いまや2人を繋ぐのは、真綿のように軽いLANケーブルのみである。
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ニンジャスレイヤーは正面を向き直り、レーザーの発射源があると思われる壁のスリットに向けてスリケンを投げつける。だが、さしものスリケンもレーザー光線に切断されてしまう。ナムアミダブツ! ニンジャスレイヤーはLANケーブルが切断されないよう位置を微調整しながら、少しずつ後ずさりした。
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(((急いでくれ、ナンシー=サン。前後のレーザー網目の間隔は、残り僅かタタミ5枚分だ!)))ニンジャスレイヤーは脱出経路を探った。「イヤーッ!」真っ白い壁に向けてカラテを叩き込むが、オモチ状の強化セルロイドに弾かれる。ナラク化する手もあるが、この状況下ではナンシーを殺しかねない。
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コメント

オスツ🍣 @alohakun 2010年12月18日
「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」 #1 http://togetter.com/li/78144 「ワン・ミニット・ビフォア・ザ・タヌキ」 #5 http://togetter.com/li/80264
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