【メモ用】芝村さんのパルマダの話(完了)

2/23付近からぽつぽつ呟かれているので、何かの時のために拾っておきます。 ※なお、剣が出てきますが、刀剣乱舞系ではありません。
無名世界観 パルマダ
yura_yuki 5210view 0コメント
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  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-02-23 13:03:01
    それは遙か遠くから、意気揚々と歩いてくるのを待っていたのだ。 <パルマダ古謠より>
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-02-24 10:40:18
    今はなんということはない地方幹線道路に収まっているが、当時この道はエラルに続く唯一の道であった。 この道に、一匹の女妖がいたという。身体はライオン、顔は人間、小利口にて道にしどけなく寝そべっては、猫好きと女好きを誘惑していたのだという。即ち人類の9割である。 <パルマダ歴史散歩
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-02-25 11:05:56
    女妖見たさ、会話したさに旅を休んで逗留する旅人があまりに多く、本来ただの街道の一角だったそこには集落ができ、村ができ、いつしか街が出来ていた。 女妖が何故ここにいるか、多くの賢者や口さがない連中、旅人が知ろうとしたが誰も知る事は出来ず、この事が一層女妖に人を集める理由になった。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-02-26 14:50:08
    いつしか巨大な街となった女妖の街を、人はパルマダと呼んだ。 古語によると女猫という意味である。同時代に猫女を意味するマダパルという言葉があり、何故こちらの語を使わなかったのか、謎がある。 おそらくは女が先に来たのであろう。つまりは人間の女として美しかったのではあるまいか。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-02-26 15:41:31
    時に歴史は、味なことをする。 あてにできない打率だが。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-02-26 15:43:48
    ガムを噛みながら話を聞いていると教師はすごい顔で睨んでいる。思わずガムを膨らませてしまった。 それで、横向いていたら授業が再開してた。 黒板に書かれたのは私の街。というテーマ。 何にもないパルマダの、何を調べようって言うんだか。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-02-26 15:48:20
    面白くないのはユーイチローが、メガネガンガン押しながらノートを取っていることだ。 当然、机の下は大荒れした。何こんな事真面目にやってんのよと膝を蹴ったが、ぞんざいなキックしか返って来ない。なんだこいつ。 あーもうダメ。私の小学校人生終わりだわ。なんでこんなやつか隣の席なんだろう。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-02-27 16:39:00
    ユーイチローはジャポネの子供だ。 ジャガイモ野郎より真面目で親父がいる山岳師団のロバより融通がきかない。ジャポネの製品がそうであるように、病的に細かくて無駄に丈夫な作業が大好き。工作の課題を見た先生がサボり方とベッドの使い方が間違っているとこぼしてた。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-02-27 16:40:56
    それが、放課後、道路を歩いていた。 授業で貰った古い地図と、勉強の 事しか書いてないノートを持ってる。 遊びに行こうと言われているが、誰の言うことも聞きゃしない、いつものユーイチローだ。 皆がやることをやるのがジャポネというけれど、ユーイチローはだいぶ違った。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-02-27 16:46:03
    私は後ろからついていった。 サッカーしないのは人生の損だよとか たとえ小学生でも恋に生きないとダメだと思うけど、とか そんなこと言っても聞きゃしない。 山上に造られた街をぐるぐると囲む道路から見える空は底抜けに青く、それを見るうちに私はイタリア一不幸な女だという気になってきた。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-02-28 16:12:05
    涙をこらえてソニーを耳につけて空を見ていたら、ユーイチローは立ち止まり、難しい顔で私を見た。 慌ててソニーを外した。膨らんだガムがはじけた。 "この街には猫がいない" 私は道端に落ちていた倒れた柱か石材を投げたと思う。カラビニエリに勤めている兄さんが見たら怒ったろう。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-02-28 16:13:51
    遺跡は保存すべきだ。ってね。でもそれどころじゃなかった。あったま来たわ。ネコよ。猫。あの男にとって私は道を歩いてる猫以下だったのよ。 それで私の子供時代の話は終わり。ほら、どうだっていい話だったでしょ?
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-02-28 16:17:05
    感想も聞かずにカフェを出て、狭い石畳の坂道を行く。横を通るフィアットが、邪魔。 あちこちに倒れた柱があるのは相変わらず。片付ければ狭い山上の街も、もう少しは住む所が増えるでしょうに。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-02-28 16:23:44
    あの時以来、猫を見るとポスター相手でも歯を見せて威嚇する癖がついてしまった。もういいおばちゃんなのにね、遺憾だわ。ジャポネが悪いのよ。 人生踏み外すと奈落に落ちるもので、私は今もうじうじしている。遺憾だわ。 基地に帰ったら猫が好きと答えた若い男をたっぷり鍛えてやる。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-03-01 21:03:28
    乾いてまばらな木々を左手に、右にローマ時代の水道橋を見ながら、坂道を歩いて山と崖から張り出すような建物を見上げる。もう街も終わりだわ。この先には修道院しかない。 後ろからゆっくり近づいてきたフィアットが止まった。手回しハンドルで窓が開いた。 若い男が顔を突き出した。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-03-01 21:04:14
    "故郷を散策中申し訳ないんですが、時間です。中尉" 確かにこの街には猫がいないわ。 "なんですって" いいわ。軍曹。行きましょう。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-03-01 21:04:58
    猫にぴったりの狭い後席に乗り込みながら座先に置いてあったFN90を持ち上げる。ベルギーのSF兵器。ベレッタ以外を使うなんて遺憾だわ。命令なら仕方ないけど。 "拳銃までベルギーにする事はないんですよ" 前席の軍曹がぼやいた。北部出身みたい。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-03-01 21:06:02
    でも弾薬を二種類持って動くのもバカっぽいと思わない? "ところで故郷はどうでしたか" 相変わらず何もないわよ。猫もいないわ。 "はあ。まあ、壊して殺すには持ってこいと" そうねと言いかけて思わず道を凝視した。 額から血を流した小学生くらいの男の子が道端を歩いている。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-03-02 10:53:29
    血で汚れた顔を見た瞬間に、髪が凍るかと思った。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-03-02 10:53:40
    余りにも、遠い昔に見た男の子に似過ぎていた。奴の子供? いや、そんなはずはない。 最短で計算してもあの子は少し歳をとり過ぎている。 落ち着け。落ち着け。銃の重さを思い出せ。 ユーイチローはあの日居なくなった。そう。私の完璧な人生に、猫なんていない。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-03-02 10:55:20
    軍曹、あれ。 "まだ作戦までには10時間ありますが" 目標じゃなくて。怪我人に見えるわ。車停めて。 "10時間もすれば盛大に量産されますよ" 軍曹。君は殺人者か。 私はルームミラー越しに軍曹を見た。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-03-02 10:56:04
    軍曹。君は殺人者か。 "はい。いいえ。違います" よろしい。我々は軍人だ。命令であれば制圧もするし前進もする。だが殺傷は結果であって目的ではない。我々は良き隣人であるべきだ。軍曹。助けよう。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-03-05 14:04:21
    やり取りとは裏腹に、心臓が妙な鼓動を奏でている。まさか、まさかとは思うが似過ぎている。銃を握っていなければ、自分がガムを噛んでいる小娘である錯覚すら覚える。 時間を超えてユーイチローが私の前に、私の罪を断罪に来たのかもしれない。 バカな。非科学的だ。今は1994年よ。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-03-05 14:05:41
    手早く銃を隠してドアを開ける。顔を出す。 こっちよ。早く。と言うが彼は難しい顔をするだけで寄ってこなかった。 口笛を吹く前席を蹴っ飛ばしてフィアットを近づけさせた。 君、怪我してるじゃない。治療するから、乗って。
  • 芝村裕吏 @siva_yuri 2015-03-05 14:06:24
    彼は私の顔を見て、横を見た。 "いらない" なんで。 "知らない人の車に乗るなって先生が言ってた" "正しい教育だ" くだらない事を言う前席を数度蹴っ飛ばして私は彼を、メガネの小学生を見た。知らない人ね。何故か傷ついた。

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