足音の追跡者#1

洞窟に潜った冒険者たちに襲い掛かる、魔法使いの罠! 足音の追跡者#2 http://togetter.com/li/792043 足音の追跡者#3 http://togetter.com/li/795011 この話は#3まで続きます
減衰世界
rikumo 668view 0コメント
1
ログインして広告を非表示にする
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-25 21:17:49
    暗く湿った洞窟。そこに鬼火のような光が揺れた。ランタンの炎だ。ランタンを持つのは若い盗賊の娘。短く肩で切りそろえた髪をバンダナで覆っている。炎は右へ左へと踊るように揺れる。その光は、醜悪で巨大な影を闇の中から浮き彫りにした。2メートルはある巨大なキノコだ。 1
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-25 21:23:19
    盗賊の娘……キリマはキノコの化け物を明かりで誘導していた。蝙蝠のフンが積もった地面に足跡を残し、キノコが歩いていく。「ほうら、こっち、こっち」 娘は笑って、軽々とした足取りでキノコの化け物を先導した。化け物は明かりと声、そして動きに反応して娘を追いかける。 2
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-25 21:27:54
    しばらく追いかけっこは続いた。キノコの化け物はやがて広い空間に誘導された。盗賊のキリマはようやく立ち止まる。「ここなら囲めるね。3対1だよ」 キノコの両脇、闇の中から二つの影が躍り出た。二人ともチェインメイルで武装した戦士だ。頭にはバケツのようなヘルメットを被っている。 3
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-25 21:33:07
    背の高い戦士は雄たけびをあげてメイスを振り下ろした。キノコの傘がひしゃげて、胞子が舞った。続いてもう一人の……青いサーコートの戦士が鉈を振り回した。柔らかいキノコの幹がズタズタになり、紫の液体を滲ませる。キノコの化け物はぶるぶると震えて、抵抗しようとする。 4
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-25 21:36:48
    だが、一方を攻撃しようとするとスッと身を引かれてしまう。そして反対側から手痛い一撃を受けてしまう。そちらに意識を向けると、また後ろに下がられて、反対側から攻撃を受ける。キノコの化け物は完全に二人の戦士の間に板挟みになり、まともに反撃ができない状態になっていた。 5
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-25 21:40:48
    そう、二人の戦士が自由に行動できる空間まで、このキノコの化け物は誘導されていたのだ。そして、その戦いを見守るのはランタンを手にする盗賊のキリマ。彼女は戦士の二人が戦いやすいように、ランタンの明かりで上手く照らしていた。光源の確保は彼女の役目だ。 6
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-25 21:43:54
    盗賊のキリマは辺りを警戒しながら声援を送る。「その調子、その調子! あと一息だよ!」 キノコの化け物はすでに息絶え絶えだ。青いサーコートの戦士は一気に鉈を振り下ろす! キノコは大きな裂け目から紫の体液を撒き散らして絶命した。青いサーコートの戦士は口笛を吹く。 7
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-25 21:47:21
    「やったじゃん、ギルー。腕上げたんじゃない?」 青いサーコートの戦士……ギルーは兜を脱いで汗をぬぐう。まだ若い、童顔の青年だ。「まだまだジルベル師匠には敵わないよ」 そう言って長身の戦士……ジルベルを見上げる。ジルベルも兜を脱いで、ナイフでキノコを解体し始めた。 8
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-25 21:51:24
    ジルベルはしわの深い顔をした髭の男だ。黙ってキノコの中の柔らかい組織を切り分けていく。「ギルー、覚えておけ。バケヅラアルキタケの肝だ。魔力が濃い。高値で売れる」 そう言って切り分けた紫色の臓器を油紙で包んだ。ギルーも解体を手伝う。「今回も楽勝の依頼だね」 9
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-25 21:54:51
    「今回の目的はこのキノコではない。もっと恐ろしい何かがいる」 そう、彼らはこのダンジョンに巣くっているという化け物を退治しに来たのだ。だが、このキノコではないという。「行くぞ、もっと奥だ」 いくつかの内臓を手に入れ、一行は歩きだした。ダンジョンの、闇のさらに奥へと。 10
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-26 21:57:36
    このダンジョンは天然洞窟そのままのダンジョンだ。地下水でてらてらと光っている滑らかな岩肌、天井から垂れさがる鍾乳石がランタンの明かりに照らされる。こういった地下空間は魔力が濃く、それを栄養源とする生物があちこちに群れていた。ほとんどは親指大の蟲ばかりだ。 11
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-26 22:01:14
    戦士ジルベルは注意深く地面を観察する。そこには地下水が溜まっていて、薄く泥が積もっていた。地下深く潜るほどに水量が増えていく。ジルベルは泥の中から踏みつぶされた蟲の死骸をすくいあげた。それをランタンの光に照らす。「硬いブーツで踏まれたようだ。誰かが来ている」 12
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-26 22:05:15
    若いギルーはそれをよく観察して言う。「確かに、踏みつぶされたのは最近のようだね」 キリマは残念そうにため息をついた。「はぁ、今回の仕事は先を越されちゃったかぁ。手に入れたのはキノコの内臓だけ。お小遣い程度だよ」 しかし、ジルベルは笑って言った。 13
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-26 22:08:38
    「おいおい、先行するものが常に利益を得るとは限らないぞ。先を行くということは、問題や、失敗を常に先んじて受け入れているということだ。後に歩くものは、それを見て進むことができる。逆に言えば、それを注意深く見ていれば、先行くものが犯した失敗を避けることができる」 14
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-26 22:12:45
    ジルベルは蟲の死骸を捨てて、さらに奥へと歩きだした。若いギルーと盗賊のキリマは彼についていく。ジルベルは静かに語る。「大事なのは、先行くものが失敗したとき、いつでも追い抜ける位置にいることだ。おこぼれを求めるハイエナのようだが、そういう強かさが必要だ」 15
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-26 22:15:39
    三人は洞窟のさらに奥へと足を踏み入れた。水かさが増し、すねの半分まで水に浸かっている。先陣を切る戦士ジルベルは、水底に深い穴が開いていないか注意深く進んだ。いくつかの脇道があったが、先行者の痕跡は無い。カンで進むうちに、生臭い血の匂いが感じられた。 16
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-26 22:18:34
    盗賊のキリマは、眉間にしわを寄せて洞窟の行き止まりを照らす。そこには血まみれの死体が横たわっていた。「人間の死体だよ。新しそう……」 死体は、中肉中背の戦士の死体だった。大きな外傷はない。ギルーは死体を裏返す。だが、チェインメイルには穴も無かった。 17
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-26 22:22:20
    「奇妙だな。こいつは何で死んでいるんだ?」 ジルベルも死体を詳しく調べる。ギルーは一つの可能性を示唆した。「鈍器で殴られたのかも。メイスか何かで殴られると、チェインメイルはそんなに損傷しない。中身がやられる」 「しかし、それなら出血量が異常だ」 18
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-26 22:25:37
    ジルベルは死体の鎧を脱がせながら言う。「打撲の場合、内出血や骨折はしても、これほどまでに出血することは無い」 ジルベルは死んだ戦士の肌を見た。すると、そこにはびっしりと細かい穴が開いているのだ。「異常だな……何かの魔法か」 ジルベルはそう結論付けた。 19
  • 減衰世界 @decay_world 2015-02-26 22:30:35
    それ以上の情報は死体からは分からなかった。この道は行き止まりだったので、分岐点まで戻る。そのとき、道の先から……誰かの声が聞こえてきたのだ。 20

コメント

カテゴリーからまとめを探す

ログインして広告を非表示にする
ログインして広告を非表示にする