山本七平botまとめ/【教えて治に至る/チェスと将棋①】集団が機能すれば即「共同体」へと転化する日本社会/擬制の血縁集団原則でまとまる日本の派閥、地縁原則でまとまるアメリカ

山本七平・岸田秀の対談集『日本人と「日本病」について』/教えて治に至る/チェスと将棋/54頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei

①【チェスと将棋】【岸田】向こうの社会とか集団とかは皆そうですね。家族という血の繋がりを断ち切った者達が、全然別の明確な原理に基づいて別のレベルで新たに集団を形成するんですね。 ナチにしてもそうでした。親を裏切り、見捨てて、ヒトラーの下に馳せ参じた者が忠実なナチ党員というわけ。

2015-01-30 10:08:58
山本七平bot @yamamoto7hei

②【岸田】だから、向こうでは忠孝不一致は当然なんで、いわば不孝な者しか忠ではないんです。 言ってみれば、不孝な者でなけれは、新しい集団のメンバーとして信用されないわけです。<岸田秀との対談集『日本人と「日本病」について』

2015-01-30 10:39:02
山本七平bot @yamamoto7hei

③【岸田】だから、向こうでは、社会に適応するためには、親から独立することが絶対の前提条件で、精神分析なんかでも、日本なら単に親孝行な人だと見られるような人を、近親相姦的固着だとかマザー・コンプレックスだとか名づけて、とにかく治療すべき対象と見るわけです。

2015-01-30 11:08:58
山本七平bot @yamamoto7hei

④【岸田】こういう点に関してはナチズムでも精神分析でも同じ前提に立っていますね。 【山本】初期のキリスト教徒がそうなんですが、教会に入ると別人種になっちゃうんですね。

2015-01-30 11:39:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑤【山本】小プリニウス(ローマ時代の政治家・文人)が「第三の種族」の誕生と言ってるんですが、もはやローマ人でもなければ、ギリシア人でもない、アフリカ系でもない。 なんびとでも教会に入れば、全然別な教会人種というか、キリスト者という第三の種族になっちゃうわけです。

2015-01-30 12:09:03
山本七平bot @yamamoto7hei

⑥【山本】アメリカがこれと同じでアメリカ族という第三の種族ができる訳です。 これが本当の地縁集団な訳ですね。 では、鎌倉幕府はそれかというと、そうでもない。 あの地縁に入った人間は全部別人種という意識があって、血縁の系譜を切ってゆくのなら、天皇制を保持する筈がないんですね。

2015-01-30 12:38:57
山本七平bot @yamamoto7hei

⑦【山本】だから、地縁集団としての原則もない。 【岸田】では、日本の集団はどういう原理で動いているんでしょうかね。 【山本】ただ一つ、言えるだろうと思う仮説を立てるとしますと、日本では何かの集団が機能すれば、それは「共同体」になってしまう。

2015-01-30 13:08:57
山本七平bot @yamamoto7hei

⑧【山本】それを擬制の血縁集団のようにして統制するという事じゃないでしょうか。ただ、機能しなくちゃいけないんです、絶対に。血縁集団というものは元来、機能しなくていいんですね。機能しなくても血縁は血縁。しかし、機能集団は別にある。しかし、日本の場合、それは即共同体に転化しちゃう。

2015-01-30 13:39:06
山本七平bot @yamamoto7hei

⑨【山本】だから、機能しなくなれば共同体ではなくなっちゃうという状態が出てきたのは、ずいぶん歴史が古いと思うんですよ。 荘園が大体そうですね。 公地公民制の重圧から逃れてきた難民集団のような一面がありますでしょ。

2015-01-30 14:09:02
山本七平bot @yamamoto7hei

⑩【山本】北条重時(1198~1261、鎌倉幕府の連署)の家訓を見ると、これをすべて擬制の血縁として扱えというのがあります。 藩というのもやっぱりそうなんで、擬制の血縁を組織するけれども、実際には血縁ではない。

2015-01-30 14:39:01
山本七平bot @yamamoto7hei

⑪【山本】したがって、藩閥も機能しなくなったらダメなんで、そうでなければ、たちまち分解しちゃうわけですね。 これが日本の特徴なんじゃないですか。 【岸田】日本の幕府というのは完全な武力で成立するんじゃないんですね。あそこがおもしろい。

2015-01-30 15:08:59
山本七平bot @yamamoto7hei

⑫【岸田】ヨーロッパでは本当に武力において勝った者が支配権を持ちますね。 ところが、秀吉なんかは一つ一つ敵対勢力を武力で潰して頂上に立った訳ではなくて、諸大名の一種の人気投票のようなもので成立している。 秀吉にまかせれば天下は治まると諸大名が思った時に、彼は権力を握っている。

2015-01-30 15:39:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑬【山本】そうなんです。 だから秀吉が文禄・慶長の役で考えた方式というのが、まったく日本的でね、ちょっとソウルを取っておいて聚楽第に来い、と。 来たら一部の領土だけ取りあげて、あとは全部返して本領安堵状かなにか渡して、頭をなでて帰せばいいというつもりだった。

2015-01-30 16:09:00
山本七平bot @yamamoto7hei

⑭【山本】そうすればたちまち今度は自分の味方について、明朝征服の先頭に立ってくれるだろう、と本気で思ってたんですね。 この日本的システムが通用しなかったゆえの大失敗なんです。 【岸田】擬制の血縁を拡大してゆくというシステムですね。

2015-01-30 16:39:03
山本七平bot @yamamoto7hei

⑮【岸田】そもそも日本では相手を完膚なきまでに叩きのめすという戦争をしたことがない。 勝てば味方に引き入れる。 味方に引き入れるために戦さをやるということですね。 ヨーロッパのチェスと日本の将棋の違いでね。

2015-01-30 17:08:57