異端のデフレ論

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樋口耕太郎 @trinity_inc

日本において、90年代以降20年以上続いているデフレの原因は、不良債権問題に象徴されるバランスシート調整、円高、自然利子率の低下(≒潜在成長率の減少)という議論がなされている(http://bit.ly/ccmuMg)。 経済学の素人が何を、といわれそうだが本当にそうだろうか?

2010-10-29 05:07:19
樋口耕太郎 @trinity_inc

潜在成長率は、経済がインフレにもデフレにもならない成長率で、①資本の投入量、②労働の投入量、③全要素生産性(TFP)、これら三要素の増加率がその構成要素だ。日本の「失われた20年」では、その中でも、TFPの大幅な減少が潜在成長率を低下させた「主因」とされている。

2010-10-29 05:16:28
樋口耕太郎 @trinity_inc

③TFPは一般に広義の技術革新(イノベーション)であると説明され、労働、機械設備、原材料投入などの全生産要素投入量で生産量を割って求められる「生産性」の概念だという。

2010-10-29 05:33:17
樋口耕太郎 @trinity_inc

私が不思議に思うのは、生産性が生産効率の概念だけで説明されているように見えることだ。生産性とは、(i)生産効率に加えて、(ii)価格、という二つ目の変数が存在すると思う。

2010-10-29 05:36:55
樋口耕太郎 @trinity_inc

経済学の世界で議論されている「生産性」とは、経済活動における利益率が一定であるという重大な前提に基づいていると思うのだが、どうだろう?仮に私の理解が正しければ、この経済学の前提は現実社会をまったく反映していないと思う。

2010-10-29 05:41:19
樋口耕太郎 @trinity_inc

例えば、売上高利益率10%の事業において、まったく同じ労働力、資本投下、原材料で生産を行っても、価格を10%上げることができれば、利益は倍増し、生産性は2倍になる。逆に、どんなに生産効率を高めても、価格競争に巻き込まれれば生産性は著しく低下する。

2010-10-29 05:44:09
樋口耕太郎 @trinity_inc

ちょっと懐かしい気もするが、バブル経済では誰もが浮かれていた。「値段が高くなければ売れない」といわれたほどで、マーケティングに苦労していた商品でも、ラベルを変えて値段を思い切り上げると、飛ぶように売れた。

2010-10-29 05:48:02
樋口耕太郎 @trinity_inc

案の定、過去20年間のうち、TFPと潜在生産性が最高水準だったのは、バブル期である。

2010-10-29 05:50:07
樋口耕太郎 @trinity_inc

「失われた20年で日本の生産性が低下した」という議論において、ホワイトカラーの低い労働生産性、起業家意識の欠如、失敗を許さない風土、保証を求められる金融などなど、が頻繁にやり玉に上げられ、そのたびに日本人は自尊心を傷つけられているような気がするのだが・・・

2010-10-29 05:53:37
樋口耕太郎 @trinity_inc

私が思うに、資本主義社会がやがて「超・資本主義(http://p.tl/G8BA)」へと先鋭化し、それがさらに90年以降の規制緩和と自由化の流れによって加速し、価格競争が激化し、企業の利益が急速に失われたことが原因ではないかと思うのだ。

2010-10-29 05:59:13
樋口耕太郎 @trinity_inc

現に超・資本主義で「大成功」している、例えばウォルマートのような超大手企業も、とうの昔に消費者に対する価格決定力を完全に失っており、強力な購買力を梃子にして仕入れ業価格を叩くことで利益を確保しているに過ぎない。

2010-10-29 06:08:00
樋口耕太郎 @trinity_inc

私の肌感覚としては、価格競争が生じた場合とそうでない場合、例えば投資案件では、入札(仕入れ)価格2割増、競合他社10倍、利益率50%減として、生産性が20倍悪化するイメージだ。

2010-10-29 06:09:40
樋口耕太郎 @trinity_inc

・・・さて、重大な点だが、仮に以上の私の仮説が正しければ、日本の経済政策、構造改革、デフレ対策の処方は完全に間違っている可能性がある。企業が価格を維持し、利益を生み出すことができなければ、どれだけ資本や労働や資源の投下効率を高めても、社会全体の生産性向上には殆ど寄与しない。

2010-10-29 06:14:14
樋口耕太郎 @trinity_inc

・・・価格を維持するためには、その裏づけとなる、商品やサービスの質を高める以外に、持続性のある事業を成り立たせる方法はない。翻って、資本主義社会が過去60年間継続してきたのは、質を量に転換して収益を生み出してきた事業モデルだ。

2010-10-29 06:19:11
樋口耕太郎 @trinity_inc

価格決定力を失った企業は、原価を下げ、商品の質を落とし、サービスから人間性を排除して画一化し、価格を下げて顧客を確保せざるを得ない。利益率の大幅な低下を埋め合わせるために、規模的・地理的な拡大によって大量の顧客を囲い込み、大量の資本を調達し、M&Aを繰り返し、人件費を大量に削る。

2010-10-29 06:31:29
樋口耕太郎 @trinity_inc

このような超・資本主義社会において、従業員の給与を上げよう、労働時間を削減しよう、商品の質を高めようと考えている経営者は既に絶滅危惧種だが、彼らは彼らの事情で資本主義の構造に適応している訳でもあり、単純に経営者を規制して解決できるような問題でもない。

2010-10-29 06:35:22
樋口耕太郎 @trinity_inc

以上が我々が直面している「本当の」社会・経済問題ではないだろうか。・・・つまり我々は、問題が何かを理解していない可能性があるのだ。私の経験では、問題解決が進まない最大かつ殆ど唯一の理由は、問題そのものが特定されていないからであり、それが日本の(というより世界の)現状を表している。

2010-10-29 06:38:34
樋口耕太郎 @trinity_inc

重要な点は、我々が過去60年間以上維持してきた資本主義社会のパラダイム自体が問題の原因であり、その世界観を前提としたいかなる「改革」も「対処」も対症療法に過ぎないということだ。対症療法には必ず副作用が伴い、長期的には病を治癒するどころか、死を早めることすらある。

2010-10-29 06:48:20
樋口耕太郎 @trinity_inc

「問題をつくりだした時と同じ考え方では、その問題を解決することはできない。」 アルバート・アインシュタイン

2010-10-29 06:48:25
樋口耕太郎 @trinity_inc

しかしながら、以上を前提とすると、社会を(ほぼ)完全に治癒するための処方は驚くほどシンプルである。①質を高め、原価以上の付加価値を生み出し、価格を維持して生産性を確保する、②生産性を労働報酬の分配と労働時間の削減のための原資にする、③以上を許容する価値観を持つ資本を調達する。

2010-10-29 07:18:23
樋口耕太郎 @trinity_inc

いずれも、資本主義の常識とは反対のことばかりだが、反面、そのすべては資本主義社会環境で実現可能なことばかりでもある・・・つまり、社会の何も変える必要はないのだ。この条件を満たすプロトタイプ事業を、一切の妥協なく、まずひとつ実現すること。これが次世代社会の扉を開く一枚目のドミノ。

2010-10-29 07:22:00