山本七平botまとめ/【教えて治に至る/転移する「家」①】「封建的な」家との絆を断って近代的自我を確立出来なかった明治以降の文学者/日本で「養子」がありえないのは天皇家だけ

山本七平・岸田秀の対談集『日本人と「日本病」について』/教えて治に至る/転移する「家」/62頁以降より抜粋引用。
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山本七平bot @yamamoto7hei
①【転移する「家」】【岸田】明治以降の文学者にとって、 いかにして家との絆を断って近代的自我を確立するか、 という事が文学上の大テーマであって、粒々辛苦してきている訳です。 しかし、どれもこれもぼくの目から見れば中途半端で挫折しているとしか思えないんですね。
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②【岸田】漱石にしても藤村にしても荷風にしても、みんなそうですね。 「封建的な」家を観念的には否定するんですが、家を否定するより前に自分が崩れてしまったり、個人主義者というよりは、はぐれ者、すね者になってしまったり、結局だめでした。<『日本人と「日本病」について』
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③【岸田】つまるところ、神がいない限り、近代的自我はつくれないんです。 【山本】結局、家が崩壊したと言いますけど、日本の家というのは元来、本当の血縁集団じゃないですからね。 家イデオロギー、家幻想なんだ。 だから、どこへでも転移するんです。
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④【山本】本当に家イデオロギーが崩壊したら大変なことですけれども、どこかに代りの家ができてしまうんです。 それだけのことですよ。 かつて、家、家とうるさく言ったのはね、古い家イデオロギーに固まっていて、新しい家イデオロギーにならないからいけない、 ということなんです。
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⑤【岸田】なるほどねえ、新しい家イデオロギーに過ぎないわけだなあ。 【山本】家イデオロギーが転移して、会社が家になっちゃっても構わんわけでね。それは今の中小企業を見ているとよくわかります。 あれは「家」なんですね。 徳川時代とちっとも変ってない。
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⑥【山本】私と同年輩の連中が昔の製本屋に入った時なども、就職という意識はないんですよ。 一家に加入するわけです。 その一家の中で働くと、だんだん兄貴分になって、最後にはのれん分けで分家するわけですね。 中小企業の場合、下請けになって、これは本家と分家という感じなんです。
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⑦【山本】本家からきた仕事はどんなに忙しくてもやるし、逆に仕事がなくなったときは本家へ行けば、本家は自分とこの設備を遊ばせてでも仕事をくれる。 こういう親企業、子企業、孫企業というつながりなのであって、日本の企業の95パーセント、企業従業員の85パーセントはこれなんです。
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⑧【岸田】一頃の…円高パニックの折、燕市の洋食器産業が全滅するとか、どこそこが潰滅するとか、弱小輸出産業の危機が喧伝された訳ですが、実は殆ど潰れなかった。 これはそういう構造に秘密があるんですね。企業の複雑な親子・兄弟関係がショック・アブソーバーになって負担を吸収し合っちゃった。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑨【山本】少しずつ犠牲を分担してね。だから本当の意味の労働組合、つまり職能別労働組合は絶対にできないんですね。唯一”海一家”という形の海員組合を除けば。 ニューヨークの新聞一斉ストなんて光景は日本には現れっこない。 朝日一家がス卜やれば毎日一家が俄然張り切っちゃうわけで。(笑)
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⑩【山本】ただ、機能集団が共同体になってしまうと困ったことが一つあって、 共同体を維持するために機能する という逆の現象が始まるわけですよ。 国鉄一家が、一家を維持するために汽車を走らすということになってくる。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑪【山本】日本の会社はそういう意味でいうと全部擬制の血縁集団なんだけど、この擬制の血縁意識についてもう少し話しましょう。旧約聖書に「養子」という言葉はないんです。子として育てたという表現は三回ぐらい出てきますけど、古代へブライ語には養子という単語はなく、そういうものは存在しない。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑫【山本】セム族は本質はそうなんで、厳密な意味の血縁集団なんです。 血縁と非血縁はきちっと分かれている。 だから、勝手に養子をもらって、今日からこの子をおれの息子にするというようなことはできない。 ところが、日本はそうじゃないんで、原理が全然違うんですよね。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑬【山本】たとえば、上杉家なんかでも、吉良上野介のときに吉良から養子がきている。それから、その四代あとの上杉鷹山というのは秋月藩の次男坊で、これまた養子である。 だから謙信一族の血なんでどこにもないんです。 上杉株式会社の社長がかわっているようなものなんですね。
山本七平bot @yamamoto7hei
⑭【山本】ほかもみんな同じで、本当の意味の血縁集団じゃない集団です。 まあ、唯一の例外は、さっきいいましたように、皇室典範で規定された天皇家だけ。 一般には、血縁というはっきりした原則がないんですね、日本には。 血縁の幅をどこまでも拡げていっちゃってもいい。

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