「利益の終わり」

「異端の資本主義論」(http://www.trinityinc.jp/updated/?cat=67)の続編として、現在原稿作成中の続編「利益のの終わり」のプレビューです。資本主義は競争原理によって利益を奪われ、自壊することが運命付けられているシステムではないか。
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樋口耕太郎 @trinity_inc

英エコノミスト誌の「ビッグマック指数」。ビッグマックはアメリカで現在3.58ドル。日本の期間限定値下げ(200円)を反映すると、適正?為替レートは1ドル=55.9円(200円÷3.58ドル)となる。日本でこのままデフレが続けば現実になるだろう。 http://p.tl/l9Ed

2010-08-29 07:26:13
樋口耕太郎 @trinity_inc

購買力平価の考え方はシンプルで、日米においてビッグマックの価値が同じだと仮定するならば、3.58ドルは200円に等しいと考えられ、両通貨の交換比率は200円÷3.58ドル、すなわち為替レート、1ドル=55.9円となる。デフレが進めば現金の価値が高まり、為替レートは切り上がる。

2010-08-29 07:30:26
樋口耕太郎 @trinity_inc

デフレの原因は社会の生産性が低下し、潜在成長率(≒自然利子率)がマイナスになっているため。名目金利をマイナスにすることはできないので、金融政策でデフレは解消できない。財政政策を試みたとしても、政府が無駄にお金を使って債務が増えるだけ。結局、社会の生産性を高める以外に答えはない。

2010-08-29 07:43:55
樋口耕太郎 @trinity_inc

このような発想で、規制緩和、民営化などの構造改革を行い、競争原理を梃子にして社会の生産性を回復しようと試みたのが小泉改革の考え方だったと思う。また、日本の労働市場が硬直化していて生産性の妨げになっているという考え方もある。だが、このような新自由主義政策で見落とされている点がある。

2010-08-29 07:46:55
樋口耕太郎 @trinity_inc

競争原理とは生産性を高めるものではなく、企業の利益を奪い生産性を限りなくゼロに収斂させる社会原理だという点だ。アメリカで労働力や経済規模が増えながら、長期金利(≒自然利子率)が過去30年間低下し続けているのは、超・資本主義がもたらした競争原理によって、企業の利益が奪われたためだ。

2010-08-29 07:50:43
樋口耕太郎 @trinity_inc

利益を奪われた企業は、益々増加する資本コストを賄うために労働分配を削り、正社員を派遣に切り替え、ワーキングプアが生まれ、社会格差が増大した。沖縄ではまともな社会経験を持った大人が、手取り15万円以上の仕事を見つけることすらできない。大人の貧困が子供の貧困を生み、虐待が激増した。

2010-08-29 07:55:36
樋口耕太郎 @trinity_inc

冷静に考えてみれば、競争原理下の金融機関(銀行)は、少なくとも中長期的なスパンにおいて、税金なしでは事業が成り立たなくなってしまった。つまり、資本主義社会の心臓である銀行業が実質的に機能不全を起こしているのだ。資本主義が心筋梗塞を起こしているというべきだろうか。

2010-08-29 08:01:08
樋口耕太郎 @trinity_inc

最後の砦、デジタル情報産業は、リナックス、ウィキペディアに代表されるように、フリーミアム現象が顕著になり、ベルトランの法則に従って利益が限界費用、すなわちゼロに収斂しつつある。重大な仮説だが、資本主義社会は収益を生み出す手段を失ったのかもしれない。

2010-08-29 08:05:16
樋口耕太郎 @trinity_inc

資本主義社会とは、その社会構造に内蔵されている競争原理によって、その社会の燃料である収益そのものを奪うという「自壊するシステム」なのかもしれない。資本主義が生まれてから200年、超・資本主義に変質してから40年、我々は「利益の終わり」を迎えているのかもしれない。

2010-08-29 08:09:25
樋口耕太郎 @trinity_inc

この前提で考えると、小泉改革や新自由主義政策が、社会の生産性を高めるよりも、格差社会と貧困を生み出してしまったという現象をうまく説明できるのではないか。そうだとすると、労働の流動化を進めることは社会を決定的に崩壊させてしまう可能性が高い。

2010-08-29 08:14:55
樋口耕太郎 @trinity_inc

何よりも重要なことだが、どのような政策を採るにせよ、生産性がどのようにして生まれるのか、具体的なメカニズムを明らかにし、検証してから行うべきだ。規制緩和や労働の流動化は費用削減効果による一時的な収益増で終わるかも知れず、もしそうなってしまったら社会はもう二度と立ち直れない。

2010-08-29 08:18:00
樋口耕太郎 @trinity_inc

次世代社会において、生産性のパラダイムが根源的に転換すると私が考える理由である。資本主義社会における「第一の生産性」に対して、次世代社会の「第二の生産性」とは、資本と、資源と、時間をかけずに生み出されるものでなければならない。

2010-08-29 08:24:37