映画「幕が上がる」を観て ~舞台という麻薬と演劇界~

高校時代、演劇部だった私が、映画「幕が上がる」を観ていろいろ思ったことをまとめてみました。偏った知識などあるかもしれませんが暖かく好意的に観ていただけると幸いです。
幕が上がる 高校演劇 映画 演劇 平田オリザ 舞台芸術
anivenir 25493view 3コメント
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  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 00:20:08
    映画「幕が上がる」見てきました。率直な感想を言います。素晴らしいです。完璧です。高校演劇というものをきちんと、美しく描ききっていました。青春部活モノの作品としては、完璧です。これ以上ない。 けど、だからこそ、一部の人にはお勧めできません。美しすぎる毒になるから。
  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 00:22:53
    あれを、青春ものとしてだけ見れるなら良いのです。高校演劇など知らぬまま、青春の香りだけ、あるいはももクロの可愛さだけ楽しみに来たのなら完璧な映画です。 もしくは、かつて舞台に立ったことがあり、それを過去として受け止められる人なら、良いのです。 問題は、それを過去にできない人たち。
  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 00:26:27
    また舞台に立ちたい。あるいは、私も舞台に立ちたい。そんな人には、この映画は劇薬です。 なぜなら、かつて味わった、あるいはその片鱗をかすかに知った、「舞台に立つことの素晴らしさ」を綺麗に、美しく描ききっているからです。これを見てしまったら、もうその欲求は加速するばかりでしょう。
  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 00:30:33
    そうして、舞台を夢見て、その先に待ち構えている現実とは何か。 それも作品の中できちんと語られています。登場人物である吉岡先生です。ネタバレになるので明言は避けますが、彼女も「かつて舞台にいた」側の人間です。
  • 注1:吉岡先生
    吉岡先生を演じるのは「黒木華」さん。
    肖像画のエチュードからして引き込まれる演技を見せますが、この方は野田秀樹さんの舞台がデビューという舞台出身の女優さん。主人公たちを導く先生として、これ以上ない配役でした。

  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 00:35:53
    吉岡先生は、終盤で教職者としては考えられないことを起こします。 けれども、確かに正しいのです。彼女の選択は。物語の流れを無視しても、役者としては正しい選択なのです。そして、逆に言えば、あの選択ができなかったものは役者にはなれないのです。
  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 00:38:16
    役者にとって、何がゴールなのか。それを定めることはできませんが、役者だけで食っていくことを目指すなら、それは、一握りにもならない数だけです。役者だけじゃない。音楽家、画家、すべての表現者はそうでしょう。そうして一握りから漏れた人は、どこへ行くのか。
  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 00:41:37
    それは、「次の世代を育てる側になる」しかなくなっているのです。 歌手を志望していた人は、ボイストレーナーになり、ダンサー志望はダンストレーナーに…と。 そういう、自分では叶わなかった場所へ向かう人々を送り出すための、最も夢に近く最も夢から遠い場所に身を置くことになる。
  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 00:46:49
    海外へ行って学べるなら、また話は違うけど、それだって一握り。 ほとんどの表現者志望の人は、前述のような、残酷なループの中にはまり込んでしまうのです。音大や芸大の就職率とプロ輩出の人数を調べていただければそれは明確です。コンセルヴァトワールに行ける音楽大生がどれだけいるのか。
  • 注2:コンセルヴァトワール
    コンセルヴァトワール、とはツイート中ではのだめでのイメージが強く、最高峰の音楽大学、のイメージで発言してますが、正確には、「フランスにおける自然遺産、文化遺産の保護を目的とした機関」を総称したものです。
    文化遺産の保護機関として、のだめカンタービレに登場する「フランス国立高等音楽院」があるほか、「フランス国立高等演劇学校」などもあります。
    余談ですが、フランスではこうした舞台文化への保護が日本よりも大きく、劇場と劇団が一体となって劇を作れる環境が出来ているそうです。(平田オリザさんのセミナーにて拝聴しました)
    その環境を日本に持ち込もうとして出来たのが後述の「こまばアゴラ劇場」です。

  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 00:50:04
    けれどもね、そんな現実があったって、一度舞台に出てしまえばそんなことはどうでもよくなってしまう。だって、その一瞬の舞台が本当にきらめいていて、どんな苦労にだって代えてもいいから、舞台に立ちたいと思ってしまう。その美しさを知ったら、もう、逃げられない。
  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 00:56:41
    この、幕が上がる、の原作者の平田オリザさんはそういった演劇界の事情によく精通なさっている方です。劇中に出てきた東京の小劇場。あの「駒場アゴラ劇場」の総支配人を務めるのも、日本の演劇の在り方を変えようとしてのことです。
  • 注3:こまばアゴラ劇場
    幕が上がる、の原作者、平田オリザ氏が総支配人を務める劇場のことです。
    映画の作中に、東京の小劇場で部員たちが観劇するシーンが有りましたが、そのロケ地でもあります。
    劇場はただステージを貸すだけでなく、劇団と一体となって舞台を作り上げる。そんなシステムを採用したユニークな劇場です。
    http://www.komaba-agora.com/
    余談ですが、あのシーンで一瞬写ったおじさんのような大きめのパペット、妙に目を引きましたよね。たぶんきっと、平田オリザ氏をモチーフにしてるのだと思います。似てますよ。

  • 補足
    演劇人材育成に非常に協力的な劇場といえば、「こまばアゴラ劇場」のほかに、有名所だと「世田谷パブリックシアター」なども挙げられます。ワークショップ(体験教室)などを開いたりしてるので是非チェックしてみてください!
    http://setagaya-pt.jp/

  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 01:00:16
    この映画で、もしかすると演劇部ブームが来るかもしれない。それは、喜ばしいことなのでしょう。それは本当に人数の少ない演劇界の母数を増やしてくれるから。けれどもそれは、表現者の無間地獄へと足を踏み入れることを決意する人を増やすことにもなる。
  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 01:03:25
    きっと、オリザさんは、この作品は「高校演劇入門」として出したのだろうと思います。原書はもっと高校演劇のシステムの説明が多いから。その一方で、商業性や現実から最も離れていて、最も自由に舞台を作ることのできる「高校演劇」というものに、多くの思いを託したのでしょう。だからこそ、美しい。
  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 01:05:46
    それに演劇界の母数が増えれば、界隈は活発になり、また大きなムーブメントが起こり何か変革が起きるかもしれない。あるいは、改革を起こすも人が現れるかもしれない。そんな期待を込めて、自身の思い描く「演劇」というものの理想像を形にしたんじゃないかな。なんて、そう思います。
  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 01:09:57
    だからこそ、この話は、平田オリザさんからの演劇へのお誘いであり、麻薬への手招きでもあるように思います。巧妙に美しく描かれた、舞台という麻薬への手引き とはいえ実際、高校演劇は、収益や進路を考えずに表現できる、本当に作中のような素晴らしい場所であることは確かなのですけども。
  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 01:13:07
    大学演劇や商用演劇は、舞台の使用料とかもあるのでどうしても気楽にはできないしどうしても収益のために思うようにはできない。 その点、高校演劇って本当に自由なんですよ。 確かに、「舞台の上でなら私たちはどこまでも行ける」んです。 問題は、高校演劇のじゃなければ舞台に上がれないこと。
  • 補足。
    劇場の中では、収益の取れる劇団にしか貸さない、学生には貸さない、といったところもあり、なかなか難しいところも…。
    小劇場でも一日5~90000円ほどでしょうか。
    公演を打つごとに赤字になるのがほとんどだそうです。

  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 01:19:19
    さっきも言った通りただ理想だけじゃなく現実の厳しさも優しく描いている点でフェアです。タバコに肺がんの危険性を書き加えるかのごとく、吉岡先生を通してきちんと主人公たちに、そして観客の私たちに問いかけている。 「あなたの人生を狂わせることになるかもしれない。それでも立ちたい?」と。
  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 01:22:35
    私は、過去に、その質問に、答えられずに逃げた者です。 私は一握りになれないと思っていた。だから、目に見える無間地獄にただ夢もなく飛び込むなって真似はできなくて私は逃げ出しました。 けど、この映画を見て、思ってしまったのです。ああ、私も舞台に立ちたい。また、あそこに行きたい、と。
  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 01:27:53
    身をもって体感してるからこそ、恐ろしいのです。現実を見てもなお、舞台に立ちたいという思いを止められなくなる。そんな映画だったんです。これは。 どんなに辛い現実があろうとも、どんなに人生が狂おうとも、それでもいいって、そんな風に思えてしまう、とてつもないパワーを秘めた、そんな映画。
  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 01:33:11
    願わくば、この映画を見てまた演劇界が活発になって、現状のシステムが壊れることを、そして何よりも演劇というものを楽しんでくれる人が増えてくれることを祈ります。たくさんの人が、自分を表現することを楽しめる、そんな時代が来たら、いいんですけどね。 長文失礼しました。
  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 01:42:56
    他の感想を述べるなら、まさかこんなところで「もしイタ ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら」がみれるとは思わなかった。高校演劇の事件と呼ばれた作品です。畑澤聖悟さんの名前なんて高校時代ぶりに聞いたわ…。 festival-tokyo.jp/14/program/mos…

コメント

  • アニバニア @anivenir 2015-03-01 12:45:41
    まとめを更新しました。
  • Shiro Kawai @anohana 2015-03-01 18:01:50
    日本の高校演劇出身者。部活OBの間でもじわじわ評判の本作、とても興味をそそられてる。けど予告編に垣間見られる(そしてこのまとめにもちょっと感じられるような)ある種の悲壮感を伴った「熱さ」が、USの片田舎で芝居に片足突っ込んでる今となってはピンとこない。かつての自分のいた環境を思い起こせば確かに身に覚えはあるのだけれど。
  • Shiro Kawai @anohana 2015-03-01 18:07:29
    別にUSの演劇界が熱くないというわけじゃないんだけれど、NYに行ってブロードウェイ、とかLAにいってハリウッド、だけがゴールじゃないというか、まあ芝居専業で食ってくのは荊の道だけれど、故郷に戻ってコミュニティカレッジや大学で演劇教えつつ地域劇場で活動する、みたいなコースも別に「夢破れた」というわけではない。
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