【詩小説レッズ・エララ神話体系】時雨とエヴィル「雪中行軍」2

少女剣士と変態黒魔術師が雪の広野を行く! そしてそれを付けねらうは……!? 詩小説アカウント「レッズ・エララ神話体系」の中世編、「時雨とエヴィル」シリーズです。 http://togetter.com/li/754523の続きです
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8TR戦線行進曲/レッズ・エララ神話体系 @RedsElrla

――詩小説、レッズ・エララ神話体系、時雨とエヴィルシリーズ、「雪中行軍」更新四回目――

2014-12-22 17:16:10
8TR戦線行進曲/レッズ・エララ神話体系 @RedsElrla

「レッド・ムーン・ライジング」。その赤い小型の月は、三日月であった。追跡者のボロ布めいたマントから、右腕がにょっきり出たと思ったら、そこには機械があった。あったのだ。いかなる隠しの術かわからねど、彼はその武器を隠し持っていた。超大型のボーガン状の機械、そして先端には赤三日月。32

2014-12-22 17:19:49
8TR戦線行進曲/レッズ・エララ神話体系 @RedsElrla

弓と同等の射出力を誇り、訓練を経れば弓よりも広範囲をネコソギできる兵器である。あたかも研ぎ澄まされた鎌を回転させて首を刈るかの如く……。遠目からその追跡者を見た者は、雪の中に赤々としたたり落ちるかのような真紅の三日月鎌を見て、畏怖するものだ。夜の黒と雪の白に異物……。33

2014-12-22 17:25:14
8TR戦線行進曲/レッズ・エララ神話体系 @RedsElrla

今まではその畏怖の力でもって、追跡に恐怖というものをプラスしてきた……だが今回は、先手を打つ必要がある。相手は手慣でイカレている。だったら、この攻撃をよりトリッキーにし、相手の考える間もなく、殲滅することこそがクールである。が、しかし、この追跡者は、一つのことを失念していた。34

2014-12-22 17:28:25
8TR戦線行進曲/レッズ・エララ神話体系 @RedsElrla

それは、要するに、このような先制攻撃を仕掛けるということは、いずれは真っ向勝負になるということだ。奴らとの全面戦争は避けられない。だが追跡者は、それをこそ望んでいた……ロジックの隘路がここにある。要するに、追跡者は、時雨とエヴィルに、何らかの鉄槌を下したくなっているのだ。35

2014-12-22 17:35:25
8TR戦線行進曲/レッズ・エララ神話体系 @RedsElrla

鉄槌。それは、追跡者自身が持つ、極めて不快な思いである。あのような連中がこの世に存在していていいのか――いいのだ、力さえあれば。俺がこのような思いをしていていいのか――いいのだ、俺には力がないから。俺がこのようなシガラミだらけの状態で――仕方がないのだ、自由を捨てたから 36

2014-12-22 17:38:58
8TR戦線行進曲/レッズ・エララ神話体系 @RedsElrla

全部、全部、傍から見たら、仕方がない、といわざるを得ないものだ。だが、彼の脳内には、これら全部は「いいのだ」という言葉に、無言のNO!を突きつけていた。それは、彼がこれまで生きてきた中で、初めて思った「自由への意志、渇望」であった。37

2014-12-22 17:42:43
8TR戦線行進曲/レッズ・エララ神話体系 @RedsElrla

その意志と渇望は、本当は、眼前の二人を倒すことでは、真に得られることではない、と、読者の皆様はお気づきだろう。彼がこれまで選択してきた人生の分岐点。それらが全て彼の「いま」を形づくっているのだ、と。だが、彼はそのような冷静なことを考えられない――ここは雪原である! 38

2014-12-22 17:43:04
8TR戦線行進曲/レッズ・エララ神話体系 @RedsElrla

かくて彼は、奇妙に湯だった頭で、冷静を努める……あの洞穴の二人に、このレッド・ムーン・ライジングを食らわせようと…… 39

2014-12-22 17:43:21