塩野七生『ローマ人の物語4』を読んで。

この本には絶賛の声が多いので読んでみたが、ちょっと古代ローマ史を知っている人には向いていないのでは。
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Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

塩野七生『ローマ人の物語』はかなり荒い。カティリナ陰謀の時のカエサルの演説はサルスティウスのものらしいが誰の翻訳を使ったのかと思うようなものだし、そもそも言葉遣いも生硬で、議場を出たカエサルは「なぐり殺しにされていたところだった」と書いていたりする。

2015-03-03 00:49:12
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

塩野七生は『ローマ人の物語4』でクローディアが元恋人のカエリウスを毒殺と横領で訴えた裁判を『チェリウス裁判』と書いていることから、この人がここで使った資料がイタリア語の本であることが分かる。

2015-03-03 01:42:45
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

カエリウスをチェリウスと書くなら、カエサルはチェーザレと書かないといけないわけで、塩野七生はもし英語の資料にも目を通していれば、こういう表記の不統一は避けられたはず。つまりこの人はこの本を書くときにかなり片寄った資料の使い方をしたことが想像される。

2015-03-03 09:49:25
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

「女の心理も知らないチェリウスなどとは、カエサルは違った」と書いた塩野七生はチェリウス裁判でのキケロの弁論を読んだと書いている。その和訳『カエリウス弁護』がネットにあるので、女の心理が問題だったかを自分で確かめられるかも。geocities.jp/hgonzaemon/Pro…

2015-03-03 10:44:21
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

塩野七生『ローマ人の物語4』のカエサルが借金王だったことを書いているところに、『内乱記』1巻39末の和訳がある。そこに「直訳すると」と書いているが、もちろん実に上手な意訳である。

2015-03-03 12:07:09
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

塩野七生『ローマ人の物語4』は『ガリア戦記』のところになるとカティリナの陰謀のあたりとは違って、荒らさが消えて実に丁寧で文章にも抜かりがない。ただしカエサルの書いた『ガリア戦記』を忠実に追っているのでその分だけ退屈ではある。

2015-03-03 12:59:24
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

塩野七生『ローマ人の物語4』でガリア人の民族名「ヘドゥイ族」とあるのは「ハエドゥイ族」のことだな。イタリア語の本では「エドゥイ Edui 」だからどこでどうなったのかな。

2015-03-03 20:29:04
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『ローマ人の物語4』で塩野七生はカエサルが色好みであったという伝承がいたくお気に入りでかなり膨らませて書いている。それはスエトニウスの皇帝伝『カエサル』50節で扱われているが全くの醜聞扱いで、彼の注目すべき資質としてスエトニウスの読者の記憶には残りにくい書き方になっている。

2015-03-03 22:08:57
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『ローマ人の物語4』カティリナの陰謀のところで、元老院で事件の審議中にカエサルが女から恋文を受け取ったという逸話はプルタークが『小カトー』24と『ブルータス』5で二度も使っている。ただし、それがカエサルが元老院から書いた手紙の返信だったという話はプルタークにはない。

2015-03-03 23:12:01
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『ローマ人の物語4』は『ガリア戦記』の間にローマの情勢とそれに対するカエサルの取った対抗策が書かれているが、全てがカエサルの視点、カエサルを正義とした書き方になっている。面白いのはキケロが書いた物から見た情景が反対側から見る全く違って見えること。まさに裏返しの情景になっている。

2015-03-04 13:33:46
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『ローマ人の物語4』カエサルの執政官(前59年)の功績としてエジプト王プトレマイオス12世の復位も書かれているが、カエサルが1人で決めたとか、ポンペイウスがカエサルのお陰でエジプトを保護下にしたとか、復位したお礼に三千タラントもらったとかはwiki(en)と比べると大分違う。

2015-03-04 21:58:40
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『ローマ人の物語』でガビアヌスとあるのはガビニウスのことらしい。彼は護民官の時にポンペイウスに海賊征伐の権限を与える法案を作って、カエサルの翌年58年に執政官。ここはガビニウスとなっている。ちなみに海賊退治を終えたポンペイウスに東方遠征の権限を与える法案を作ったのはマニリウス。

2015-03-05 12:43:39
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『ローマ人の物語』でガビ二ウスがガビアヌスとなっているのは、外国語の資料にそうなっているものがあるらしいことがネットから分かるので、あながち間違いではないかも。

2015-03-05 20:54:38
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『ローマ人の物語4』前59年のポンペイウス暗殺の陰謀者の名簿をこの本ではカエサルが握り潰したことになっているが、キケロの演説『ウァティニウス尋問』(ネットに和訳あり)では護民官ウァティニウスが市民集会でこの名簿を読み上げたことになっている。塩野七生はキケロを直接読んでないかな。

2015-03-05 21:56:47
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『ローマ人の物語4』でハエドゥイ族をヘドゥイ族としているのは、ラテン語のAEの発音は二通りあって、古代ローマでは「アエ」だが現代のヨーロッパでは「エ」と読むところから来ているらしい。だからベルガエ族もベルゲ族としたのだろう。lingua-latina.org/LL_1B.php

2015-03-05 22:23:01
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『ローマ人の物語4』の『ガリア戦記2』でベロヴァチ族とあるのはBellovaci(ベッロヴァキ)族で、ここで筆者はci を「チ」と読む現代ラテン語(教会)の発音を採用していることが分かる。だからCaeliusは「チェリウス」なのだ。しかし、Ciceroはキケロでいくらしい。

2015-03-05 23:14:02
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『ローマ人の物語』は第1巻でもリビウスを直接読まずに書いているという印象があってイラつかされた覚えがあるが、4巻ではキケロを読んでないことがわかってがっかり。『ガリア戦記』のところも最近は訳書が色々出ているので、知ってる人には筆者の勝手な解釈にイラつかされるのではないかな。

2015-03-06 13:21:36
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

塩野七生の『ローマ人の物語』は歴史物としては何も知らない中高生向けの偉人伝としてはいいかも知れないが、浮気は男の甲斐性とか、借金はやったもん勝ちとかいう道徳観が未成年向きじゃないのが難点。

2015-03-06 20:58:56
Tomokazu Hanafusa/花房友一 @tomokazutomokaz

『ローマ人の物語4』でポンペイウス暗殺計画の名簿をカエサルが握り潰したしたというのは、スエトニウス『カエサル伝』20の記述とも矛盾する。筆者はこれを読んでいることは明らかなので、意図的に事実を変えたということになるのでは。

2015-03-08 13:26:17