松尾匡「ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼」を読み始める。ウェブマガジン・シノドスの連載を、書籍化したもの。松尾氏の連載は、以前ツイッターですすめられたものの、読まずにほうっていた。しかしこれは、大変いい本である。
2015-03-09 11:03:04理論的分析は後で読むとして、人間の生存と生活を最低限保障する左翼的立場から、新自由主義の自己責任論の間違いだけでなく、ブレア政権とか、日本の民主党とか、「第三の道」という中途半端なリベラルに潜む、自己責任の虚妄も暴いている。
2015-03-09 11:03:29ブレア政権は、教育や就労支援、職業訓練を重視した。「第一に教育、第二第三に教育だ」というスローガンは、日本でもある程度紹介され引き合いに出された。しかし、失業保険などで働かなくてもある程度食っていけた、サッチャー以前の労働党時代の反省から、
2015-03-09 11:06:54数ヶ月前に、紙屋研究所で読んだ鈴木大介「最貧困女子」の話を、弟達にした。暴力的な親達のいる家庭を逃れた少女達だが、学童保育なども杓子定規で細かい生活への干渉が、少女達にとって「うざい」。そして少女達は街の路上にたむろするようになり、風俗で働き生活する・・・。
2015-03-09 11:17:08というルポルタージュだ。弟Aは「学童がうざいというなら仕方ない」と、「自己責任である」という言い方だった。そしてそういった女性達も、年を取って風俗で働けなくなると、路頭に迷っている、という問題を指摘すると、弟Aは「将来の生活設計をしなかったのが悪い」と
2015-03-09 11:17:24いうことをいった。弟Aは「嫌われ松子の一生」を持ち出し(私は未読)、風俗で働いていた松子の同僚は、年を取ったら働けなくなるので、稼ぎを元手に風俗店経営などをはじめていたこと、
2015-03-09 11:17:41松子はその場しのぎで働いて、先を全く考えていなかったことをあげ、何も考えてなく、人生を転落していった松子にたいそうイライラした様子だった。
2015-03-09 11:18:02しかし松子は労働意欲がなくなった、怠けているわけではないだろう。ただ年を取ったから自然に逆らえず、自分の体に性的魅力がなくなっただけである。それを「将来設計すべきだったから、自己責任」というのなら、確かにそうなるだろう。
2015-03-09 11:23:34しかしそれなら、年金制度なども自分が老後に備えて蓄えておけばいいわけだから、全て不要である。国民医療保険なども、全て自分で備えて溜めておけばいい。実際オバマケアなどを批判するアメリカ国民は、「医療保険は自己責任だ」といっている。
2015-03-09 11:23:52年金制度や国民医療保険の理念は、支えあいであるが、それ以外にも、「人間は完璧に自己管理できない」という考えに基づいている。老後のことを考えずお金を使ってしまうから・・・、年金を強制的に徴収したほうがいい、というやり方だ。
2015-03-09 11:25:44私は人間は、ちゃんと将来設計や自己管理できる人ばかりではないし、そういう人がいるのは当たり前のことだと思っている。こればっかりは教育や就労支援だけではどうにもならない。「バカなやつ」の最低限度の生活を、保障すべきである。
2015-03-09 11:31:18追加
「社会の余裕」というのが、精神的なものなのか、物質的なものか分からない。精神的な余裕という事なら、これは社会の文化にもよるので難しい。物質にしぼる。こういった再分配政策にすぐさま寄せられる反応は、「財源はどこにある」ということだ。
2015-03-09 17:25:57しかしたとえば、貧乏人に現金を配るというだけなら、現行の福祉制度を手直しするだけで実現できる。いわゆるベーシック・インカムだが、小沢修司氏によると、大雑把に月8万の現金をみんなに配ることは、5割の税率で出来る。
2015-03-09 17:26:31経済右派の中には、「その分無駄な福祉を削ればいい」と、緊縮財政の観点から支持するものもいる。橋下徹氏とか。経済左派は、それを見て「福祉の削減に利用される」と反対するものもいるが、利用されないベーシック・インカム、
2015-03-09 17:28:33生活保護について、「本当に必要な人にだけ支給すべき」という決まり文句は多い。しかしこの考え方は、功利主義的に考えれば非効率で、損害もある。
2015-03-09 17:35:47誰が必要な人で、必要な人ではないのか判断するのは、役所の窓口、ケースワーカーだが、きめ細かく必要性を判断しようとするほど、役所の業務は増えて、人件費などが膨れ上がる。
2015-03-09 17:36:02結局費用を抑えるためには、甘い手続きで多少「必要でない人にも支給される」のを許容しなければいけないし、許容できなければ、費用は無限に増える。
2015-03-09 17:37:31「不必要な人に支給されるのが許せない」というのは、コスト論よりも、公平とか正義の問題である。アリストテレスは、人に応じて分配するのが正義だといった。昔なら家柄とかだが、今なら能力とか努力だろう。つまり精神的なこと・・・。物質ではない。
2015-03-09 17:40:15追加